過去10年のほとんどの期間、企業の指導部における女性の割合は緩やかな上昇軌道をたどってきた。劇的な伸びこそ稀だったが、方向性は正しかった。ところが今、その前提を守り抜くのは難しくなっている。
グラントソントンの「2026年ビジネスにおける女性(Women in Business)」調査によると、過去1年間で上級管理職に占める女性の割合は1.1ポイント減少し、32.9%に低下した。同時に、世界経済フォーラム(WEF)のデータは、経営幹部(Cクラス)の新規採用者に占める女性の割合が、2015年の20.2%から2022年には26.6%まで着実に上昇したものの、それ以降はほとんど動いていないことを示している。現在、経営幹部の新規採用者に占める女性の割合は約27%にとどまる。取締役への起用にも陰りが見えており、主要3000社における女性取締役の割合は、2025年第1四半期に30.4%のピークに達した後、29.9%に低下した。
これらの数字のいずれか1つだけであれば、一時的な後退として片づけることもできる。だが、全体として見れば、より重大な事態を示している。企業上層部における女性の前進は、もはや単に進みが遅いだけではない。複数の領域で、まったく前に進まなくなっている。
いま問われているのは、これが短期的な足踏みなのか、それとも10年にわたる進展が反転し始めた初期兆候なのかということだ。
過去10年の進展が逆行し始めている
グラントソントンが2004年に上級管理職における女性の調査を開始した当時、女性が占める割合はわずか19.4%だった。2023年までにこの数字は32.4%に達し、2024年には33.5%、2025年には34%へと上昇した。その歩みは緩やかであったが、方向性はほぼ一貫していた。
それが2026年に一変した。上級管理職における女性の割合は32.9%に低下し、わずか1年で約2年分の進展が帳消しになった。
この低下は広範囲に及んでいる。グラントソントンによると、欧州を除くすべての地域で減少が記録され、北米とアフリカはともに2ポイント以上低下した。欧州は減少を免れたものの、わずか0.1ポイントの微増にとどまり、辛うじて横ばいを維持した形だ。
組織の階層を上がるにつれ、この減速は看過できないものになる。世界経済フォーラムの調査によると、経営幹部の新規採用者に占める女性の割合は、2022年以降約27%で低迷している。同様に、新規CEO採用者に占める女性の割合も2022年から2025年の間にわずか1ポイントしか動いておらず、それまでの10年間の年平均進捗率から半減以下に落ち込んでいる。
単年での数字の悪化だけで、長期的な逆行トレンドが生じていると断定することはできない。しかし、女性の活躍推進を示す複数の指標が同時に悪化している場合、女性の割合が今後も自然に向上し続けるという前提を維持することは極めて困難になる。
経営幹部未満のリーダー候補「パイプライン」が先細りしている
経営幹部に到達する前の段階で何が起きているかを見ると、課題はより鮮明になる。ペイスケールの「2026年ジェンダー賃金格差報告書」によると、男性は女性よりも昇進のペースが速く、最終的により高い役職に就いている。45歳以上の労働者のうち、役員クラスに達した割合は男性の12%に対し、女性はわずか6%にとどまる。
この格差は、女性が最高位に近づくほど広がっている。役員クラスにおいて、男性の報酬1ドル(約1万未満円)に対して女性はわずか69セントしか得ておらず、前年の72セントから低下した。
学歴もこの格差を埋める役には立っていないようだ。MBA(経営学修士)を保有する女性は、同じくMBAを持つ男性の1ドル(約1万未満円)に対して78セントしか稼げておらず、これはペイスケールが追跡しているあらゆる学歴レベルの中で最大の格差である。修士号を持つ女性の場合、男性の1ドル(約1万未満円)に対して80セントである。高収入の役職やリーダーシップ職への昇進に最も直結するとされる資格や学位であっても、この不均衡を解消できていないのだ。
このパターンは、働く母親においてさらに顕著になる。ペイスケールの調査によると、母親の賃金は、父親の1ドル(約1万未満円)に対して74セントにとどまる。この格差がリーダーシップの観点から特に重要である理由は、育児や介護といった家族への責任が大きくなる時期が、キャリアが上級管理職へと向かい始める時期としばしば重なるからである。
ジェンダー平等を取り巻く企業環境の変化
リーダー候補のパイプラインの先細りは、企業が多様性と包摂(ダイバーシティ&インクルージョン)への取り組み方を見直す動きと並行して起きている。
カタリストとニューヨーク大学ロースクールのメルツァー・センターによる2026年の調査によると、対象となった組織の77%が、過去3年間に包摂(インクルージョン)への取り組みを変更していた。
調査対象となった従業員の半数以上が、会社がDEI(多様性・公平性・包摂)からの撤退を公に示唆したと回答した。もっとも、実際に取り組みを縮小したと回答したのは34%にとどまる。また、規制上の圧力が特に強い政府調達契約企業では、51%が包摂への取り組みを縮小したと回答した。
法規制の環境も変化している。6月、雇用機会均等委員会(EEOC)は、約40年間にわたり維持されてきた2つのアファーマティブ・アクション(積極的格差是正措置)に関する政策指針文書を廃止することを決議した。これらの文書は、女性やマイノリティの機会を向上させることを目的とした雇用慣行に関するガイダンスを提供していた。EEOCは、このガイダンスが市民権法第7編(Title VII)の条文や、その後の最高裁判所の判例と矛盾しているとし、法はすべての人に平等な保護を提供するものであると強調した。
これが後継者育成と人材獲得の重大なリスクになる理由
企業にとってのリスクは、単に上級管理職における女性の数が減ることだけではない。重要な指導的ポジションに空きが生じた際に、選択肢となる優秀な人材が育つパイプライン自体が細ってしまうことにある。
後継者計画(サクセッションプランニング)を成功させるには、より大きな責任を担うために必要な経験、存在感、責任を積み重ねてきた人材層(ベンチ)を厚く構築することが不可欠である。従業員の一部が、管理職や役員ポジションへ昇進する可能性が一貫して低い状態にあると、その人材層は必然的に薄くなってしまう。
これは、企業が上級リーダーの交代を必要とする際に、特に深刻な問題となる。社内パイプラインが脆弱であれば、昇進の準備ができている信頼できる候補者が少なくなり、社外から人材を招聘せざるを得なくなる可能性が高まる。外部からの採用は、当面の欠員を埋めることはできても、なぜ社内の人材がそのポジションを競い合えるレベルまで育成されなかったのかという根本的な問題を解決することにはならない。
このリスクは時間の経過とともに蓄積していく。今日、ストレッチアサインメント(背伸びが必要な課題)や昇進の機会を見送られた従業員は、数年後の後継者リストから抜け落ちてしまう候補者かもしれない。経営幹部レベルでその人材の欠落が顕在化する頃には、それを引き起こした要因である意思決定は、何年も前に行われていたということになる。
だからこそ、近年の女性リーダー比率の低下は、報道される見出しの数字以上に注目に値する。女性のキャリア進展が遅れ、役員クラスに到達する割合が低下しているとすれば、企業が直面しているのは単なる比率の問題ではない。将来のリーダー候補となるはずの貴重な人材層を、自ら先細りさせている可能性があるのだ。
ビジネスリーダーが今すぐ取り組むべきこと
この減少トレンドを逆転させるために、企業は特定のDEIモデルに立ち返る必要はない。必要なのは、組織内で誰がキャリアを進め、誰が次の指導者として育成されているかを決定づける、日々の意思決定をリーダー自身がより注意深く見つめ直すことである。
リーダー候補のパイプラインがどこで細くなっているかを特定する
企業は、問題が上級管理職の段階から始まっていると思い込むのではなく、自社の昇進率、離職率(定着率)、キャリア進展に関するデータを精査すべきである。
もし、入社時点の女性の比率は同等であるにもかかわらず、マネージャー、ディレクター、あるいはバイスプレジデントといった段階を進むにつれて女性の割合が徐々に減少しているなら、リーダーはその分岐点がどこにあり、何がその原因になっているのかを突き止めなければならない。
「経営幹部への登竜門」となるポストへのアクセスを点検する
すべての指導的ポジションが、経営幹部への等しい道を提供しているわけではない。取締役会や経営幹部が、より大きな職務を担う候補者を評価する際、P&L(損益)の管理や、事業再生の指揮、あるいはM&A(企業の合併・買収)の統括といった経験は極めて大きな意味を持つ。
IMD(国際経営開発研究所)は、こうしたポジションをエグゼクティブ・フィーダー・ロール(経営幹部候補ポスト)と呼び、そこでは女性の割合が依然として低いことを指摘している。したがって、ビジネスリーダーは単に昇進率だけを見るのではなく、次の昇進に必要な実績を積めるような重要案件や任務が誰に割り当てられているかを問い直す必要がある。
スポンサーシップと後継者育成をより意図的なものにする
スポンサーシップ(有力な上長などによる推薦・支援)は、昇進や上級ポストの公募が始まる前に、誰が周囲に認知され存在感を示せるかを左右する。しかし、若手・エントリーレベルの女性でスポンサーを持っている割合はわずか31%であり、同レベルの男性の45%と比較して大きな格差がある。
ビジネスリーダーは、スポンサーシップを非公式な人間関係に委ねるのではなく、より組織的かつ意図的な取り組みにすべきである。経営幹部は、ストレッチアサインメントや注目度の高いプロジェクト、昇進機会について議論される際、該当する社員がその場に同席していない場面であっても、資質のある女性を積極的に推薦・後押しすることができる。
同様に、企業は誰が重要ポストの次期候補として育成されているか、その候補者の中に女性が含まれているか、端的にそれらの候補者が有力な選択肢となるために必要な経験を実際に積めているかを定期的に検証する必要がある。
リーダーシップ育成を経営幹部の責任にする
人事部門は、昇進率を測定し、格差を特定し、人材育成に関するプロセスを構築することはできる。だが、誰が前進するかを決めるあらゆる判断を人事が下せるわけではない。
苦境にある事業部門を誰に任せるのか、誰が取締役会にプレゼンするのか、誰が大口顧客の責任を負うのか、より大きな役割が空いたときに誰の名前が挙がるのかを決めるのは、シニアエグゼクティブである。そうした個々の意思決定が、やがてリーダー人材のパイプラインになる。
近年の女性リーダー比率の低下は、このパイプラインをより綿密に検証するきっかけとされるべきである。なぜなら、入社から役員室に至るまでの過程のどこかで優秀な人材が失われているのだとすれば、問題はもはや、誰がトップに就いているかだけにとどまらないからだ。真の問題は、企業が次の時代に必要とするリーダー候補の層を十分に構築できているか、という点にある。女性がどこで後れを取っているかを突き止め、重要なリーダーシップ経験への道を開き、スポンサーシップと後継者育成をより意図的に行う企業こそが、将来に向けた、より強固なリーダーシップ・パイプラインを構築できるはずだ。



