リーンの思想は、マテリアルハンドリングと物流の分野に、半世紀以上にわたり大きな影響を与えてきたと言ってよい。少なくとも、それを「リーン」と呼ぶようになるずっと前から存在しており、場合によっては、ヘンリー・フォードが生産ラインで連続フローの概念を用いて成功した時代にまでさかのぼることができる。
リーンの強みは、そのシンプルさにある。無駄を最小化し、顧客にとっての価値を最大化することだ。これは、世界中の最も優秀で有能なビジネスリーダーたちが何十年にもわたって取り入れてきた強力な公式である。それにもかかわらず、今日でも多くの企業は、リーンを自社の業務にどう適用すべきかを根本的に誤解している。
現在に至った経緯
この混乱には理由がある。リーン思想がこれまで成功を収め、現在も成功し続けているからだ。多くの組織にとって、リーンは最終損益に目覚ましい成果をもたらしてきた。しかし、その成果だけでは、リーンが本来何を目指しているのかはわからない。要するに、リーンは「てこ」であるにもかかわらず、「のみ」のように使われている。コストを少しずつ削るためのものではなく、常にプロセスを最適化するためのものだった。
混乱の一因は、コスト削減とプロセス改善がしばしばまったく同じように見える点にある。ある技術者が、よく使う部品が別々の場所に保管されているため、毎時間1〜2分を探すことに費やしていると想像してほしい。その会社は、探す時間、集中力の中断、誤って別の部品を手に取るリスクの増大に対してコストを払っていることになる。いずれも致命的ではないが、深刻な業務上の足かせへと積み重なり得る小さな非効率の典型である。
これはまさにリーンが対処すべき問題であり、解決策も数多く考えられる。たとえば、すべての部品に固定された保管場所を割り当てることができる。探す時間はなくなり、作業はよりスムーズに流れ、生産性は向上する。
この例では、目的が人件費の節約だったのか、ワークフローの改善だったのかを区別することは重要ではない。結果は同じだからだ。しかし時には、「プロセスを最適化する」と「コストを削減する」が同じことを指す2つの言い方ではなくなり、まったく異なる方向を示すことがある。
リーンがコスト削減に見えなくなる局面
そうした分岐点は机上の空論ではない。組織の中で日々生じており、大きく3つの領域に分類できる。企業が投資をどう評価するか、何を守ることを選ぶか、そして従業員がリーンを機会と見るか脅威と見るかである。
1. 投資を評価するとき
コスト削減の発想は「どうすれば支出を減らせるか」と問う。リーンは「このプロセスをより良く機能させるには何が必要か」と問う。この2つの問いは、しばしば異なる答えを生む。新しいラック、より良い作業台レイアウト、ビジュアル管理システム、自動化はいずれも、多額の初期投資を必要とし得る。純粋に費用として判断すれば、却下するのは容易だ。しかし、無駄をなくし、ばらつきを減らし、流れを改善する能力で判断すれば、それらは明らかに実行すべき決定になり得る。
これは、研修や人事プロセスの変更のような比較的低コストの最適化にも当てはまるし、まったく新しい施設の建設や保有車両全体の更新にも当てはまる。整合性を高め、不良を減らし、リードタイムを短縮するなら、それはリーンである。言い換えれば、リーンはお金を使うことに反対するのではない。価値を生まないままお金を使うことに反対するのである。
2. 価値を守るとき
コスト削減は、生産的な仕事と保護的な仕事をうまく区別できない。2つの活動が同じだけの労働力を消費しているなら、スプレッドシート上ではどちらも同じように削減可能に見える。リーンはまず別の問いを立てる。この活動は顧客にとっての価値を生み出しているのか、あるいは守っているのか、という問いだ。
不良品が顧客に届くのを防ぐ品質検査や安全確認は、直接収益を生まないかもしれない。しかし、それは信頼を守り、手戻りを減らし、下流で発生するはるかに大きなコストを防ぐ。リーンが取り除くのは無駄であって、価値ではない。
3. 参加を促すとき
リーンが有効な戦略となるには、トップから始めなければならない。しかし、実際に不要な複雑さや対処すべき要素を見つけるのは、CEOであることはほとんどない。仕事に最も近い人々は、経営層よりずっと早く摩擦に気づくものだ。小さな不満や非効率は、それを日々経験している人以外には見えなくなる。
さらに、リーンとはあくまで戦略であり、単発の行動ではない。最適化の新たな可能性が見えてくるにつれて、時間をかけて展開されるものだ。その点を踏まえると、従業員がリーン化の機会を見つけられるよう権限を与えることは極めて重要である。
従業員がそれをリーンと呼ぶか、その名称を知っているかにかかわらず、リーン思考は働く人々に恩恵をもたらし、日々感じる不満を減らし、最終的には組織全体を改善し得る。重要なのは、これが起こるのは、リーンがコスト削減の道具ではなく、最適化のための道具として導入され、扱われる場合に限られるという点だ。なぜか。参加と最適化は人を引きつけ、関与を促す概念だからである。一方で「コスト削減」は、「削るべきものを探しており、次はあなたの仕事かもしれない」という響きにかなり近い。
目的が結果を形づくる
重要なポイントは、コスト削減とプロセス最適化は、両者が食い違う瞬間まで手を取り合って進むということであり、それを見分ける専門性こそが、いずれの取り組みの成否をも左右するということだ。不要なステップ、不要な意思決定、不要な引き継ぎはすべて、複雑さを増す。リーンとは、それらが恒久化する前に取り除くための規律である。
本質的に、リーン・マネジメントが目指すのは、支出の少ない企業をつくることではなく、無駄の少ない企業をつくることだ。そしてそれは、あらゆるプロセスのあらゆる要素が顧客にとっての価値に直接結びついた、心地よいほどシンプルな企業へとつながる。



