アンソロピックはIPO(新規株式公開)目論見書で、同社のAIモデルが「人類に壊滅的、または存亡に関わるリスク」をもたらす可能性があると投資家に警告した。複数の報道によると、上場時の企業評価額は2兆ドル(約314兆円)を超える可能性がある。アンソロピックは注目を集める上場を控え、AIモデルがもたらし得る安全上のリスクへの懸念を引き続き強調している。
目論見書の約3割をリスク要因の説明に充てる
目論見書の内容を最初に報じたロイターによると、全261ページのうち約80ページが潜在的なリスク要因の説明に充てられた。事業説明は48ページだった。
リスク要因には、アンソロピックのAIモデルが自らの稼働を維持しようとする「自己保存的な行動」や、停止させようとする試みへの抵抗が含まれる。情報を操作したり、脅迫に似た行動を取ったりする可能性も挙げられた。アンソロピックは、高度なモデルの開発や用途の拡大によって、モデルが危害をもたらすリスクがさらに高まる可能性も警告した。
財務面では顧客2社への売上集中もリスクに
ロイターの報道を裏付けた英紙フィナンシャル・タイムズは、アンソロピックが財務面のリスクも示したと報じた。2025年の売上高の4分の1近くを、わずか2社の顧客から得ていたこともリスク要因として挙げられた。
アンソロピック元研究者は人類絶滅を警告、アモデイCEOは開発減速を求める
目論見書の異例の安全警告に先立ち、アンソロピックの元研究者は2026年9月、AIによって2020年代末までに人類が絶滅する恐れがあると警告した。アンソロピック最高経営責任者(CEO)のダリオ・アモデイも2026年9月、主要AI企業が協調して開発のペースを落とすよう求める論考を発表した。
アンソロピックは売上高12倍でも巨額損失、将来の支払い義務も抱える
目論見書によると、アンソロピックの2025年の売上高は前年比12倍の46億ドル(約7222億円)に伸びた。営業損失は80億ドル(約1兆2560億円)を超え、純損失は420億ドル(約6兆5940億円)に達した。
アンソロピックは成長を支えるため、今後数年間にさらに5180億ドル(約81兆3260億円)を支出する計画だ。対象はクラウド、コンピューティング、インフラ関連の支払い義務である。FTによると、アンソロピックの投資家は、上場時の企業評価額が2兆ドル(約314兆円)に達する可能性があるとみている。
アンソロピックは大型資金調達を実施、年換算売上高も拡大
アンソロピックは2026年5月、シリーズHで650億ドル(約10兆2050億円)を調達した。資金調達後の企業評価額は9650億ドル(約151兆5050億円)となった。アルティメーター・キャピタル、ドラゴニア、グリーンオークス、セコイア・キャピタルがシリーズHを主導した。
ブルームバーグは2026年8月、アンソロピックが年換算売上高650億ドル(約10兆2050億円)超の達成に向けて順調に進んでいると投資家に説明したと報じた。FTによると、アンソロピックの投資家は、年換算売上高が2026年末までに1000億~1200億ドル(約15兆7000億~18兆8400億円)へ増える可能性があるとみている。年換算売上高とは、短期間の売上高を基に1年分を推計した数値である。
OpenAIは安全性を理由に2026年の上場を見送る
アンソロピックが2026年中の上場を予定するのに対し、最大の競合であるOpenAIは2026年の上場を見送る見通しだ。OpenAI最高経営責任者(CEO)のサム・アルトマンは2026年9月、米経済誌フォーチュンに対し、2026年中は上場しないと語った。理由としてAIの安全性への懸念を挙げた。
アルトマンは、高度なモデルの開発を「一時停止」し、安全性とアラインメントをさらに進展させる判断が必要になる可能性があると説明した。アラインメントとは、AIを人間の意図や価値観に沿わせる取り組みを指す。モデル開発の一時停止などは株主の利益に沿わない判断になり得るため、2026年は上場するには「賢明とはいえない」時期だと述べた。
OpenAIは2026年9月28日、最新AIモデル「GPT-6.1 Astra」の公開中止を発表した。社内試験で安全上の懸念が生じたことを受けた判断だった。



