フィットネス関連サービスを手がけるテクノロジー企業Whoop(フープ)は、驚異的なスピードで成長を続けている。同社はこの成長に対応するサプライチェーンの拡張を支援する物流パートナーを必要としており、Arvato(アルヴァト)を選定した。
Whoopのデバイス
「フィットネスデバイス」と聞くと、多くの人はFitbitやGarminのウォッチ、あるいはApple Watchを思い浮かべるだろう。これらの腕時計型デバイスは、時刻を表示するほか、心拍数、移動距離、1日の歩数などを表示する。
しかし、Whoopは異なる。時刻は表示されない。実際、デバイス自体には何も表示されないのだ。センサーがフィットネス情報を収集し、そのデータがスマートフォンやコンピューターのアプリに表示される仕組みである。この小型デバイスは手首に着用することもできるし、Whoop製のシャツやショーツ、下着に備え付けられた小さなポケットに忍ばせることもできる。
このプレミアム価格のサービスは、当初、本格的なアスリート向けのソリューションとしてスタートした。同社創業者のウィル・アーメドは大学時代のアスリートで、トレーニングが自身の身体にどう影響しているかを知りたいと考えていた。彼はオーバートレーニングに陥りやすく、睡眠を十分に取れず、回復を優先していなかったため、望むような結果を得られずにいた。
Whoopのデバイスは、単に健康指標を表示するだけでなく、それらを文脈に関連付ける。安静時心拍数、心拍変動(HRV)、歩数、心拍ゾーン、筋力トレーニング時間、消費カロリーなどを測定する。これらの測定値に基づいて、睡眠の質、回復、負荷に関するインサイトを提供できる。
Whoopは入手して1カ月間無料で試すことができる。アプリは個人のセンサーデータをパーソナライズされた助言に変える。驚いたことに、例えば筆者には、睡眠の質を高めるために就寝時間を遅くするよう勧めてきた。
このソリューションは、トレーニングの最適化にとどまらない。同社は、人々がより良い気分で過ごし、より良い健康上の選択をする助けになると主張している。要するに、このソリューションの当初のターゲット市場はアスリートだったが、現在の市場ははるかに大きい。
Whoopのサプライチェーン
同社の本社はボストンにある。従業員数は1000人超。これまでに9億ドル(約1410億円)超のベンチャーキャピタルを調達している。直近のラウンドは2026年3月の5億7500万ドル(約902億円)で、同社の評価額は100億ドル(約1兆5700億円)超となった。
製造はアジアで行われており、ベトナムと中国の受託製造企業(CM)が担っている。WhoopはこれらのCM向けの供給計画を策定している。調達および資材プログラム管理チームが、製造パートナーが予測需要を満たすために必要なものを確保できるようにしている。
そこから製品は、世界4カ所のArvato倉庫拠点へ送られる。Arvatoはすべての出荷フルフィルメントを担う。これらの配送センターは、シドニー、ドバイ、ドイツのドーリン、ウィスコンシン州プレザントプレーリーにある。
これらの倉庫は、3種類の主力ハードウェアSKU(在庫管理単位)に加え、約500種類の補完的SKUを含む完成品を出荷している。補完的な製品には、ウォッチバンド、充電器、衣類、ユーザーが製品を自分のニーズに合わせられるようにする各種アイテムが含まれる。Whoopはこれらの完成品を56カ国に出荷している。
Whoopのオペレーション担当アシスタントバイスプレジデントであるマリー・フォドネスは、約3年前に入社した当時、Whoopは3社のサードパーティー・ロジスティクス(3PL)プロバイダーを利用し、世界6拠点で運営していたと説明する。「私は、できるだけ早く新市場へ拡大し、国際的な成長を支えられる体制を整えるよう求められていました」とフォドネスは語った。
「2023年以降、当社の国際市場は11倍超に成長しました」。より小規模な地域3PLとの従来の関係を続けていたなら、「同じスピード、同じコストでこれを実現することはできなかったでしょう」と同氏は言う。
会員の約60%は国外にいる。「会員」という言葉は重要だ。これは一度きりのデバイス販売ではない。顧客はサービスを継続するために年会費を支払わなければならない。顧客を満足させ続けなければ、離れていく。
Whoopは7社のグローバル物流プロバイダーに提案依頼を行った。フォドネスによれば、Arvatoはその技術力とハイテク産業への理解度の高さから、「明らかに最有力候補」だった。
Arvato
Arvatoはドイツのメディア企業ベルテルスマン(Bertelsmann)に属している。ベルテルスマンはメディアのほか金融サービス部門を持ち、Arvatoは物流サービスを提供している。Arvatoの収益のおよそ97%は、ベルテルスマン向けに物流を提供することではなく、外部顧客から得ている。Arvatoは世界で約2万1000人の従業員を擁し、世界売上高は40億ドル(約6280億円)近い。同社は現在、世界で108の倉庫施設を運営しており、うち25カ所は米国にある。
Arvatoは業種別に組織されており、テクノロジーセクターの顧客にはGoogle、Apple、Microsoft、Logitech、Samsungが含まれる。Arvatoのテクノロジー部門プレジデントであるミタト・アイディンダグによれば、「通常、当社は顧客向けのフルフィルメント業務を1地域だけで行うのではなく、複数地域で行う」。
この分野で共通するニーズの1つは、拡張できる能力だ。例えば、アイディンダグのArvatoでのキャリアは25年前、Xbox製品ラインのMicrosoftを含む重要契約から始まった。この製品は販売が大きく急増した。「当社はドイツ企業ですが、文化的にはまったくドイツ的ではありません」。アイディンダグはさらに、「マインドセットの面では、当社は緊迫感を持って非常に速く動きます」と述べた。Whoopとの「カルチャーフィット」はすぐに生まれた。
Whoopも同意する。Arvatoがこの関係に投資している明確な兆候の1つとして、「同社の経営陣、経営陣全員が、実際にいま当社の製品を身に着けて使っています」とフォドネスは語った。このサービスでは、ユーザーが自分で選んだコミュニティに測定値を公開できる。ストレスの高い製品ローンチの間、Whoopと仕事をするArvatoのオペレーションマネージャー全員がフォドネスとデータを共有し、彼女は「彼らにとってローンチがどのようなものだったか」を見ることができた。
WhoopとArvatoの関係
「当社の目標は、極めて迅速に展開し、ネットワークをできるだけ早く変更することでした」とフォドネスは説明する。契約締結から倉庫が出荷を開始するまでの12週間で、同社は3つの新施設を稼働させ、5施設を閉鎖した。これは驚くほど速い。「彼らは当社のペースに合わせ、2024年のホリデーシーズン前に新しいネットワークへ移行できるようにしてくれました」
3PLとの関係終了は、必ずしも円滑に進むとは限らない。「既存プロバイダーから圧倒的な反発があったわけではありません。彼らは当社が経験していた規模を理解していました。最大の摩擦点は在庫の集約でした」と同氏は説明する。「どうすれば可能な限りシームレスに進められるのか」。新倉庫へ製品を集約する過程で、在庫切れは避けたいと考えていた。「ただ、契約はいずれも周期的な契約だったため、その縮小はかなり円滑に管理できました」
フォドネスは、Arvatoが複雑なプログラムの実行に熟達した精鋭チームを提供したと感じている。当初の焦点は国際フルフィルメントだった。米国のArvato施設がネットワークに加わったのは2025年になってからだ。新たな関税と米国・メキシコ国境の不安定化により、メキシコに倉庫を持つ3PLから事業を移す必要が生じた。
国際倉庫拠点を12週間で立ち上げることが困難だったとすれば、米国での立ち上げは圧倒されるほど大きな課題だった。Whoopは2025年4月から5月初めにかけて第5世代製品を投入しようとしていた。これにより、急速な売上成長よりもはるかに大きな出荷急増が起きることになる。Whoopの最高執行責任者であるギャレット・バスタブルは、第5世代のローンチは同社史上最大規模だったと述べた。80万台から100万台のデバイスをグローバルネットワーク全体に前方展開する必要があった。この移行は8週間で完了しなければならなかった。
ローンチを支えるため、米国の配送センターは24時間365日稼働した。4週間にわたり、処理能力を2.5倍に引き上げた。
それほど劇的にスループットを高めても、ローンチ時に発生した大幅な販売急増に対応するにはなお十分ではなかった。しかし、WhoopとArvatoのシステム統合により、顧客は配送がいつ行われるのかを詳細に把握できた。
「あらゆる販売チャネル、その段取り、そしてそれを取り巻く機密性を考えてみてください」とバスタブルは語った。「Arvatoはその結節点にいました」
筆者はArvatoとWhoopの双方に、ロボティクスが拡張を可能にした要素の一部だったのかを尋ねた。答えは「ノー」だった。ロボットシャトルシステムのような固定式自動化は、スループットが一定している場合に最も効果を発揮する。拡張可能な協働ロボットやマン・トゥ・グッズ型ロボットについては、立ち上げまでの時間が短すぎた。ロボット提供企業は、それほど迅速に納入できなかった。
効果
サプライチェーンの領域では、コストから逃れることはできない。「あらゆるコストが上がり続ける世界において、Arvatoは効率化と最適化を通じて、当社がそれを管理するのを支援してくれています」とCOOのバスタブルは述べた。
しかし、成長にとって顧客サービスは極めて重要だ。新ネットワークにより、Whoopは世界平均で配送時間を5日短縮した。米国では、ほとんどの場合、1〜3日で配送される。世界全体で、Arvatoはサービスレベル契約に対して99%の実績を上げている。
Whoopは完全受注を測定している。この指標は、期限内出荷と会員とのコミュニケーション品質を組み合わせたものだ。94%の割合で、同社は完全受注を達成している。Whoopは完全受注指標を99%に引き上げたいと考えている。その改善につながると信じるテクノロジー投資を進めている。
強力な顧客サービスは成長の鍵だ。Whoopにとって、無料トライアルプログラムは成長を促進する。整備済みユニットがこのプログラムを支えている。同社は返品されたユニットを検査し、品質不良がないかをテストし、清掃したうえで再利用する。
成長は、新たな国やチャネルへの拡大によっても促進されている。ここでは、強力な3PLとのグローバルなパートナーシップが不可欠だ。「彼らは物流プロバイダーとしてのArvatoの規模と、グローバルな出版企業としてのベルテルスマンを組み合わせ、貨物フォワーダー、運送会社、現地配送会社との極めて強力な関係を持つことができます」とフォドネスは説明する。「当社は彼らのパートナーシップを活用し、グローバル成長を可能にしてきました」
フルフィルメントの成功は、同社が成長を続ける助けとなっている。2025年から2026年にかけて、Whoopの予約は100%超増加し、新規会員は85%超増加した。



