たとえばアデルの場合。彼女は、今どきのポップスターの定義からかけ離れた存在である。体型はスリムとは言い難く、ソーシャルメディアでの発信が比較的少なく、ライブにおける派手なステージ演出もない。アデルは昔ながらの方法で、つまり素晴らしい楽曲とパフォーマンスだけを武器にヒットを連発してきた。
このことは彼女のファン層を考えると当然かもしれない。ニールセンがソニーミュージックのために行ったリサーチではアデルのファンの62%が女性で、その大多数を25~44歳の母親が占める。多くがヘルスケア業界で働いており、アルコール度数とカロリーが低いライトビールを飲み、ボトルウォーターのブランドでは「アクアフィーナ」を好む。育児専門誌「Parents」読む率が平均よりも80%高い。また調査会社Music Watchの消費者調査では、ファンの28%が50歳以上であるという結果が出ている。
ティーンの少女がアリアナ・グランデやマイリー・サイラスの外見や歌に共感するように、ある年齢以上の仕事と家庭を持つ女性がアデルのルックスや音楽、歌詞、世界観に共感している。アデルのファンとより若いポップスターのファンの違いは、前者がお金を持っている点だ。アルバムが出たら買う意思がある。アデルの前作と最新作の売上がそのことを証明している。
実はテイラー・スウィフトのファンもほぼ同じカテゴリーに属する。59%が女性で、約3分の1が50歳以上である。スウィフトがティーン少女の“親友になりたいカントリーシンガーの女の子”から世界的なポップスターに飛躍できたのは、幅広い年代からの支持を得た結果だ。
また、エド・シーランとサム・スミスも、Music Watchとニールセンの両社の調査結果でファンの約3分の2が女性であることが判明している。
シナトラやエルヴィス、ビートルズの時代から、ジャスティン・ビーバーやブリトニー・スピアーズに至るまで変わらない事実。女性ファンが多いポップスターほど売れるのだ。