中国の習近平国家主席が23日から3日間の日程で米国を国賓訪問した。米中双方の公式報道や発言を比べてみれば、「習氏になめられたトランプ米大統領」という構図がはっきりと浮かび上がる。
トランプ氏は「2016年の私の最初の選挙以来、習主席と私は友情を築いてきた。実際には、相互の尊重と国民の重要な利益の上に築かれた真に素晴らしい友情だ」と語った。東京大学大学院の李昊(りこう)准教授は「これこそ、中国が長年、米国に求めてきた発言だ。中国にしてみれば、『ようやくわかったか』という心境だろう」と指摘する。
李氏が指摘するように、米政権は従来、中国との関係を「競争」で表現し、「協力」を唱える中国の主張を退けてきた。ところが、米ホワイトハウスが25日に発表した米中首脳会談についてのファクトシートには、「競争」という言葉がどこにもない。それどころか、5月の米中会談を踏襲して、「両国は、尊重、公正、相互性を基盤とした戦略的安定の建設的な関係構築に合意した」と改めて確認した。
米陸軍戦略大学のゼネル・ガルシア准教授によれば、現在の状況は、毛沢東が唱えた「戦略的防御」「戦略的膠着状態」「戦略的反攻」のうち、第2段階の「戦略的膠着状態」にあたる。習氏は第2段階を「戦略的安定関係」という言葉に置き換えているに過ぎない。ガルシア氏は「中国が第3段階で武力を行使するとは必ずしも考えないが、今は国力を蓄積するため、米国との無駄な争いを避けている」と語る。
トランプ氏は中国の戦略に全面的に寄り添った。李氏は「トランプ政権のもとで、米国は下り坂を転がり落ちるように国際的影響力を失っている。独裁者を好むトランプ氏らしい行動だが、同時に、米国は身動きが取れず、これしか方法がなかったとも言える」と説明する。
当然、米国世論を納得させるような合意はほとんどなかった。ホワイトハウスのファクトシートは、米中貿易紛争の先送りや、中国によるレアアース輸出規制の緩和、米農産物の中国輸入増などに触れたが、いずれも「目指す」「焦点を当てた検討」などにとどまり、明確な成果はなかった。
逆に、中国外交部は25日に発表した米中首脳会談の説明で、「米側が『台湾独立』に反対する正しい立場を守り、台湾問題を慎重に扱い、中米関係の確固たる基盤を築くことを期待する」と明記した。米国の外交方針は「台湾独立を支持しない」であって、「反対する」ではない。李氏は「自分たちのレトリックに勝手にすり替える中国側の常とう手段」と指摘する一方、「トランプ氏が強く出ないので、前のめりになっている」と語る。習氏は中国の最高指導者であり、主張を米側に否定されれば、権威に大きな傷がつく。トランプ氏が保留している台湾への武器売却についても、中国は攻勢に出ており、トランプ氏をなめた動きが目につく。
一方、ホワイトハウスはファクトシートで、「(米中の)両指導者は、米国と中国が第二次世界大戦で同盟国であり、戦争に勝利するために共に戦ったことを想起した」と明記した。トランプ氏が発言した際、日本のメディア・世論は一斉に反発しており、日本側も何らかの懸念は伝えていたとみられる。(伝えていなければ、いないで無能のそしりはまぬかれない)。それでもなお、ファクトシートに盛り込んだところにトランプ政権の「ジャパンパッシング」の姿勢が色濃く見て取れる。
高市早苗首相は米中首脳会談前に、トランプ氏と会談した。日本政府当局者は会談前、「トランプ氏に対し、どれだけ日本の中国に対する懸念を打ち込めるのかが重要だ」と語っていた。会談で、高市氏があれほど「サナエと呼んで」と言っていたのに、トランプ氏は「ジャパニーズ・プライムミニスター」と呼んでいた。
トランプ氏は第1次政権時代、毛嫌いしていたメルケル独首相(当時)に対しても、ファーストネームの「アンゲラ」と呼びかけていた。むしろ、高市氏は会談しない方がマシだったとすら言えるだろう。



