量子技術がサイバーセキュリティに役立つ5つの道
脅威にはただちに目を向けなければならないが、量子技術は同時に、防御の側にも機会をもたらす。量子センシング、量子通信、量子コンピューターによる最適化、ハイブリッドシステムの進歩を踏まえ、量子のアプローチがサイバーセキュリティの向上に役立つ道を5つ挙げる。
1. 量子鍵配送で、傍受を検知できる信頼性の高い通信を実現する
量子鍵配送(QKD)は、量子力学の原理を利用して暗号鍵を受け渡す技術である。鍵の情報を傍受しようとすれば量子状態が乱れるため、あらゆる傍受の試みを検知できる。政府、重要インフラ、金融システムといった失敗の許されない領域では、QKDを耐量子計算機暗号と組み合わせたハイブリッド構成にすることで、より安全な鍵交換への道が開ける。インフラ、既存システムとの統合、通信距離の面で実務上の課題は残るものの、価値の高い特定の通信回線については大きな可能性がある。
2. 量子センシングで、状況把握と脅威の検知を強化する
量子技術で強化したセンサーは、従来型のセンサーに比べて感度も精度も高い。この特性は、サプライチェーンの可視化、航法(ナビゲーション)の信頼性、物理環境とデジタル環境の監視、異常の検知を高めうる。重要インフラや国家安全保障の場面では、量子センシングによって、脅威をより速く、より正確に検知できるようになる。
3. 量子最適化とシミュレーションで、防御側の分析を高度にする
量子システムや、量子と従来型を組み合わせたハイブリッドシステムは、従来型のコンピューターが苦手とする複雑な最適化やシミュレーションの問題に向いている。セキュリティチームがこの強みを活かせる領域は4つある。
脅威のモデル化。セキュリティオペレーションセンター(SOC。システムを常時監視し、攻撃の検知と対応にあたる部門)での人員や設備の配分。量子時代の攻撃を模したレッドチーム演習(攻撃者役を立ててシステムの弱点を洗い出す訓練)とパープルチーム演習(攻撃者役と防御側が連携して防御を改善する訓練)。そして、大規模なデータセットに潜む振る舞いの異常の、より速い分析である。最適化の精度が上がれば、脅威の状況が刻々と変わる中でも、より堅牢なシステム設計を支えられる。
4. ゼロトラストの中で、耐量子性とクリプトアジリティを備えた枠組みを推進する
量子という課題そのものが、耐量子計算機暗号の組み込みを急がせている。組み込む先は、通信の各層、エンドポイント(PCやスマートフォンなどの端末)のセキュリティ、ID・アクセス管理、保存データの暗号化である。
PQCを採り入れ、クリプトアジリティを前提に設計することで、ゼロトラストはより強くなる。量子技術が進歩しても揺るがない原理の上で、絶え間ない検証を続けられるようになるからだ。体系的な棚卸しと、システムが使っている暗号アルゴリズムや鍵、証明書を一覧にした「暗号部品表」(cryptographic bill of materials)が、運用に欠かせないものになる。


