顧客にリーチするために小売業者を活用すること自体に問題はない。誤りだったのは、卸売を資産ではなく障害物として扱ったことだ。その誤りを正すためには、ナイキはかつて維持できると期待していた利益率とコントロールの一部を手放さなければならなくなるだろう。
このことは、筆者が以前懸念を示した問題を、財務的な観点から裏付けるものとなる。ナイキは、小売業者にとって魅力的な製品と取引条件を提示することで、棚スペースを奪い返すことはできる。だが、競合ブランドがひしめく同じ棚の中から、顧客にナイキ製品を選ばせることの方がはるかに困難である。
ナイキ再建にかかるコスト
小売業者が現在交渉している相手は、かつて卸売流通の削減に乗り出した当時のナイキとは異なる。OnやHOKAが台頭し、アディダスも勢いを取り戻している。また、ランニング専門店はかつてはるかに規模の小さかったブランドを中心に、収益性の高いビジネスを確立した。現在のナイキは、適切な在庫を提供し、新製品の立ち上げをサポートし、小売業者が店舗で目立つ場所に自社のシューズを陳列したくなるような十分なマージンを残さなければならない。これは通常のビジネスプロセスだが、回復期にナイキが得られる利益率に影響を与えることになる。
在庫はすでに懸念材料となっている。ナイキは2026年度を約75億ドル(約1兆1800億円)の在庫を抱えて終えており、これは前年とほぼ変わらない水準だ。在庫の数量は増加したが、製品構成がその影響を相殺した。同社は、古い製品を処分しつつ、小売業者や顧客に対して新製品への期待感を抱かせなければならない。これら2つのタスクは矛盾することがある。値引き販売は過去の在庫を一掃するのに役立つが、同時に顧客に対し、将来発売される新製品を定価で買うのを待つ理由を与えてしまうことにもなる。
ナイキは、知名度が高く商業的に安定している復刻モデルのスニーカーに過度に依存してきた。これは売上を生むものの、それだけを製品戦略のすべてにするわけにはいかない。スポーツブランドの本質は、最終的にアスリートや若い消費者が求めるような、まだ見ぬ革新的な新製品を生み出し続けなければならない。
中国はより差し迫った問題だ。中国における前四半期の為替影響を除く売上高は17%減となり、その前の期の10%減に続いてさらに落ち込んだ。現地の競合他社が力をつけており、在庫水準は高止まりしたままで、ナイキはかつてのようにすべての中国の消費者にステータスシンボルとして受け入れられているわけではない。
経営陣は中国市場へさらに製品を送り込むことで売上高の減少を一時的に和らげることはできるかもしれない。しかし、小売店がすでに抱えている在庫を消化できていない状態であれば、それは誤った判断となる。在庫を一掃し、流通チャネルをリセットするためであれば、中国市場での決算が再び振るわないものになったとしても受け入れるべきだ。人工的に売上高を維持することは、健全化を遅らせるだけにすぎない。


