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2026.09.28 08:52

氷河の融解が定めたテンジン・セルドンの進路。彼女は今、6300万ドル(約99億3000万円)の気候ファンドを率いる

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気候変動に対処するための技術はすでに存在する。より難しい問題は、それに資金を投じ、社会に展開することだ。そして、その解決を人生の使命としてきた女性がいる。

ベンチャーキャピタル(VC)のPulse Fundは本日、初号ファンドを6300万ドル(約99億3000万円)でクローズしたと発表した。創業者兼マネージング・パートナーのテンジン・セルドンが率いるこの初号ファンドは、エネルギー転換のほか、インフラ、食料・農業、モビリティ分野にまたがるアーリーステージの気候関連企業を支援する。

セルドンは、Pulseの資金調達の成功について、単なる意図ではなく、財務リターンを示す同社の能力によるものだと語る。そのリターンの背景にあるのが、業界の縦割りを超えて「分野横断的な相互依存関係」、すなわち「ある市場のイノベーションが別の市場で桁違いの価値を生み出す収束点」を狙う独自の投資アプローチだ。

「気候投資の多くは今もなおバーティカルごとに行われている。エネルギーはここ、農業はあそこ、インフラは別のところ、といった具合だ。まるでこれらのシステムが互いに接点を持たないかのように。だが、実際は接点だらけだ」とセルドンはインタビューで語った。「エネルギー、食料、インフラ、モビリティは1つのシステムであり、最大のリターンと最大のリスク低減は、それらがいかに互いを増幅させ合うかを理解することから生まれる」。気候ソリューションへのこのシステムレベルの投資アプローチは、機関投資家、事業会社、マルチファミリーオフィス、その他の戦略的パートナーなど多様な投資家を惹きつけている。

失われたヒマラヤの畑から、気候技術への資金供給へ

セルドンは20年間にわたって気候技術ベンチャーの構築と拡大に携わってきた。この仕事への情熱の源は、ヒマラヤ山麓での幼少期にさかのぼる。彼女は自宅近くの畑で毎日遊んで過ごしていた。5歳のとき、町の上にある氷河が「誰の記憶よりも速く融け始め、その水が下ってきて畑を奪っていった」という。また、その変化が何を意味するのか、なぜ起きているのかを理解できないまま、「毎年、山が目の前で変わっていくのを見ていた」とも振り返る。

セルドンは答えを求めたが、本人いわく「誰も納得のいく答えを持っていなかった」し、自分が目にしているものを表現する「言葉や語彙も持たなかった」。それが変わったのは高校2年生のとき。米国に渡ってから初めて「気候変動」という言葉に出会った。セルドンはこれを自身の「アハ体験」と呼ぶ。気候変動こそが「ヒマラヤで、私の家族や、私が育ったコミュニティに起きていたこと」だと悟ったのだ。

16歳で気候問題への取り組みを決意したセルドンは、その道から離れることがなかった。スタンフォード大学を首席で卒業した後、ローズ奨学金を得てオックスフォード大学に進学し、「純粋数学・応用数学から気候政策に至るまであらゆることを学んだ」。

その後、セルドンはタイの国連環境計画(UNEP)に加わり、同地域の災害リスク削減政策を統括した。「そこでフラストレーションが芽生えた」とセルドンは明かす。「部屋にいた誰もが、ヒマラヤの水に依存する20億人のリスクを理解していた。それでも資金は動かなかった」。そして「欠けているのは科学ではない。ファイナンスだ」と結論づけた。政策の世界を離れて気候関連企業のスケールを手がけ、その後ベンチャーキャピタルに移った理由は「資本こそがギャップを本当に埋める場所だからだ」という。

先住民族女性が極端に少ないVC業界──統計データすら存在しない

セルドンの初号ファンドは、米国ベンチャーキャピタルにおける先住民族女性を取り巻く現在の状況を考えると、極めて大きな突破口である。PitchBookの2024年レポート「US All In: Female Founders in the VC Ecosystem」によると、運用資産(AUM)が5000万ドル(約78億8000万円)以上の企業の89.2%は、意思決定者の過半が男性であるチームによって率いられている。また、AUMが5000万ドル(約78億8000万円)以上のVC企業で、意思決定に関わる役職に就く女性はわずか17%にとどまる。これには、パートナー、プリンシパル、マネージング・ディレクターといった役職が含まれる。

その中で先住民族女性が占める割合はごくわずかで、報告もされておらず、VCにおける先住民族女性に関する統計データは残念ながら存在しない。実際、非営利の先住民メディア企業IndiJ Public Mediaの部門であるICT Newsは、315のベンチャーキャピタル企業の従業員属性を対象としたデロイトの2022年「VC Human Capital Survey」について、先住民グループの統計を報告せず、より広い「有色人種」および「有色人種の女性」というカテゴリーに含めていたと報じている。

Pulse Fundの投資ポートフォリオには、Endera、Floodbase、InventWood、it's electricといった気候関連企業が含まれ、Beneficient、C6 Partners、Pivotal Foundation、プリツカー・ファミリー、ヴェロニカ・チョウなどの投資家を集めている。

AI主導の市場で気候関連資本を調達する

これほど多くの注目と資金がAIに集中する時代に気候関連企業向けの資金を調達するのは、特筆すべき偉業だ。Crunchbaseのデータによれば、2026年上半期のスタートアップ資金調達全体の43%をOpenAIとAnthropicの2社が占めた。

セルドンは、AIブームと競う必要はなかったと語る。彼女のファンドは、AIブームを可能にするものに投資しているからだ。「気候、フロンティア・クリーンエネルギー、AIは、同じ資金を奪い合う別々のカテゴリーでは決してないと投資家に示した。なぜなら、AIの稼働に必要なもの、すなわち発電、送電網の容量、冷却、素材は、何よりもまずエネルギーの問題だからだ。いま建設されているあらゆるハイパースケール・データセンターは、その背後にいる投資家がそう呼ぶかどうかにかかわらず、エネルギー転換への賭けである」とセルドンは語った。6月30日時点で発表されたベンチャーキャピタルとグロースエクイティの案件を分析したCurrenceの「H1 2026 Climate Tech Investment Trends」レポートによると、低炭素データセンターは気候テック投資の34%を占め、前年の3%から上昇した。

気候テックで「可能なこと」と「資金を得られること」のギャップを埋める

セルドンにとって、この初号ファンドは、気候問題の緊急性と規律ある投資が両立しうることを示している。「1つのファンドがそれを実証したいま」「次のファンド、その次のファンドも同じ前提で資金調達ができる」と彼女は語る。

そして彼女が強調するように、その緊急性は収益性や事業成果の枠を超える。生存にかかわる問題なのだ。「モニタリングシステム、早期警戒インフラ、再生型技術をどう構築すべきかは、すでにわかっている。私たちがやってこなかったのは、それらに資金を投じ、最も必要とされる場所に展開することだ。そのギャップの中で人が死んでいく」。

そのギャップを埋めるには、意図ではなくリターンで説得することだとセルドンは主張する。「投資家は良い意図に大規模な資金を投じたりしない」と彼女は言う。「投資家が資金を投じるのは、機能するビジネスだ。そして気候の厳格さと財務の厳格さが同じ規律だと示せば、機関投資家や事業会社の資本がついてくる」。

それは、セルドンが5歳のとき、かつて畑だった場所に立ち、自分が目にしているものを表現する言葉を持たずに初めて気づいたのと同じギャップだ。彼女はいま、その言葉だけでなく、それに基づいて行動するための資本も手にしている。

(forbes.com 原文)

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