第3四半期の決算発表シーズンが近づき、投資家が警戒すべきリスクも高まっている。多くの投資家は、企業が決算を公表し、今後の業績見通しを更新する正式な決算発表に注目する。しかし、正式発表より前に企業が業績情報を開示する「決算事前発表」も、株価を大きく動かす要因になる。市場は予定された決算発表日を待たず、新たな情報が出た時点で企業への期待を修正するためだ。
カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクールと資産運用会社RSインベストメンツの研究者・運用担当者4人による研究では、株価急落の68%で決算発表が原因となり、決算事前発表も10%を占め、2番目に多い原因だった。両者を合わせると、決算に関係する要因が株価急落のほぼ80%を占める。正式な決算発表シーズンが始まる前から、投資家は決算リスクに備える必要がある。
株価への影響の8割超は正式な決算発表前に生じる
決算事前発表が重要なのは、企業価値に関わる重要な決算情報の多くが、予定された正式発表より前に市場へ届くためだ。特に、市場から高い業績を期待されている銘柄では、悪材料が事前に出る影響が大きい。会計学研究者のダグラス・J・スキナーとリチャード・G・スローンによる研究によると、株価への影響の80%超が事前発表の期間に生じ、正式な決算発表を挟む3日間で生じる影響は20%未満だった。
AI関連株では利益成長への期待が高いため、業績が予想を下回った場合の株価反応が従来以上に厳しくなっているようにみえる。多くのAI関連大型株が急速に成長し、技術の変化も速い。決算事前発表と正式な決算発表の双方に備える重要性は、かつてないほど高まっている。
決算事前発表を見れば、需要の向かう先がどう変化しているかも把握できる。私は最高投資責任者として顧客の大規模な投資ポートフォリオを運用し、キャリアの大半を決算発表シーズンの分析に費やしてきた。企業の決算が、長期的な株価動向を左右する中心的な要素だからだ。
決算事前発表は悪材料ほど多くの情報が先に開示される
学術研究に沿って分類すると、決算事前発表は次のように分けられる。
ネガティブな業績警告または見通し引き下げ
ポジティブな事前発表または見通し引き上げ
従来予想の確認またはおおむね市場予想に沿った更新
悪材料は事前発表で平均93.4%が開示される
決算事前発表の多くはネガティブな内容だ。実際の利益が市場のコンセンサス予想と大きく異なる場合、企業には悪材料を事前に公表する動機がある。会計・財務分野の研究者であるレナード・C・ソファー、S・ラム・ティアガラジャン、ビバリー・R・ウォルターによる研究によると、悪材料を抱える企業は、ネガティブな情報全体の平均93.4%を事前発表で開示していた。
悪材料の全部を事前発表で開示しなかった企業は27%だった。30%は後の正式発表と同じ数値を事前に示し、43%は最終的な実績より悪い数値を公表していた。最後のケースでは、正式発表時の実績が事前発表を上回るため、ポジティブなサプライズが生じる余地ができる。
好材料は事前発表で平均49%にとどまる
好材料を抱える企業は、事前発表の段階では好材料全体の平均49%しか公表していなかった。同研究では、約67%の企業で、事前発表で示した業績の上振れ幅が、正式発表で最終的に明らかになった上振れ幅より小さかった。つまり、企業は好材料の一部を定例の決算発表まで残す傾向があった。
市場予想通りでも見通しの細部にリスクが残る
市場予想に沿った事前発表は、実績が市場のコンセンサス予想付近か、企業が従来示していた予想範囲内に収まる見込みだと確認するものだ。通常、業績警告や見通し引き上げほど大きな株価反応は起こらない。それでも、不確実性を減らし、アナリスト間の予想のばらつきを小さくする意味がある。
ただし、予想範囲の中間値が市場予想と一致していても、見通しの細部に悪材料が含まれる場合がある。予想レンジが広くないか、利益率に不利な売上構成になっていないか、正式発表まで大きな不確実性を残す前提が置かれていないかを確認する必要がある。



