決算事前発表後の株価反応を利用する戦略
決算事前発表を巡っては、業績警告後の押し目買い、好材料の事前発表後に続く株価上昇を狙う手法、オプションなどを使った損失管理が考えられる。
業績警告後の押し目買いは長期的な収益力を見極める
ネガティブな事前発表をした企業の株価は、同研究によると発表前後に平均9.4%下落したが、後日の正式な決算発表前後では下落幅はわずかだった。株価調整の大半が業績警告の時点で起きていたことが重要だ。
業績警告後の押し目買いは、最初の売りによって悪材料の大半が株価に織り込まれ、企業の長期的な収益力は損なわれていないとの判断に基づく。悪材料を抱える企業が歴史的に警告の段階でほぼすべての情報を開示してきたことは、この考えの前半をある程度裏付ける。
ただし、株価が下がったこと自体は買いの根拠にならない。高い業績を期待されている銘柄では、小幅な予想未達でも大幅な株価下落が起こり、その低い評価が長期間続く場合がある。この手法は、一時的な業績不振と、その銘柄を保有する前提そのものが崩れた状態を見分け、さらに株価が変動しても耐えられる投資家に適している。
好材料後の上昇を追う戦略は確実な法則ではない
ポジティブな事前発表では、好材料がその時点ですべて出尽くしていない場合が多い。このため歴史的には、ネガティブな警告よりも、その後も株価上昇が続く可能性が高かった。強い好材料を事前発表した銘柄が、正式発表まで市場平均を上回る値動きを続ける場合があるとの証拠もある。経営陣が定例の決算発表まで好材料の一部を残しているという見方と整合する。
ただし、決算発表前の株価上昇を追う戦略は、確実に機能する法則ではない。決算発表など特定のイベントで株価が急変するリスクに耐え、投資額を厳格に管理する必要がある。株価上昇が企業の業績や財務実態とかけ離れた場合には、その銘柄を保有する前提を改めて検討しなければならない。
オプションと保有比率の調整で発表前に損失を管理する
オプションは、決算事前発表などを巡る株価下落リスクの管理に役立つが、ヘッジには費用がかかる。費用に加え、どのような値動きでどれだけの損益が発生するかを十分に理解している場合に限って利用すべきだ。
より重要なのは、ネガティブな事前発表が出る前からリスクを管理しておくことだ。オプションを使わず、保有比率を下げる、特定銘柄への集中を減らす、あらかじめ売却価格の水準を決めるといった方法もある。前述の株価急落研究では、空売り残高の増加、割高な株価評価、強気すぎる成長予想、通常と異なる売買動向、会計情報の不透明さなどが警戒材料として挙げられている。保有銘柄が複数の警戒材料を併せ持つ場合は、特に注意が必要になる。
決算事前発表で避けたい4つの誤判断
決算事前発表を受けた株価の動きを判断する際には、予想未達の大きさ、急落の意味、正式発表の位置づけ、一時的な変動と事業悪化の違いを取り違えないことが重要になる。
(1)小幅な予想未達でも株価下落が小さいとは限らない
第1の落とし穴は、予想未達が小さければ株価下落も小さいと考えることだ。スキナーとスローンの研究では、成長株では予想を下回った幅より、予想を下回ったという事実そのものが大きな意味を持つ場合があるとされた。ネガティブな業績サプライズがあった高成長株の平均異常収益率はマイナス7.3%で、低成長株ではマイナス3.6%だった。
(2)急落しただけでは買い場とは判断できない
第2の落とし穴は、急落した銘柄をすべて買いの機会と考えることだ。ネガティブな事前発表の原因が1四半期だけの問題なら、大きな買いの機会になる可能性がある。しかし、長期的な業績予想そのものが非現実的だったことや、会計の質の低さ、事業の収益力低下が表面化した可能性もある。下落幅だけを見るのではなく、株価評価と企業の業績・財務に照らして判断する必要がある。
(3)事前警告後の正式発表は新たな株価材料にならない場合がある
第3の落とし穴は、正式な決算発表を常に新たな株価材料だと考えることだ。企業がすでに業績警告を出していれば、正式発表は株価に反映済みの内容をおおむね確認するだけの場合がある。ネガティブな事前発表の後、正式な決算発表でさらに悪いサプライズが出た例は少なかった。
(4)一時的な値動きと事業・財務の悪化を区別する
第4の落とし穴は、一時的な株価変動と、事業や財務の持続的な悪化を混同することだ。両者を機械的かつ正確に区別できる方法はない。追加の分析では、次の枠組みが役立つ。
一時的である可能性:市場予想が修正され、改定後の見通しに必要な情報が十分含まれ、財務の健全性も保たれている
構造的である可能性:見通し修正が繰り返され、情報開示への信頼性が低く、会計情報も不透明で、空売り残高が多いか、売上高と利益率の悪化が続いている


