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バイオ

2026.10.21 14:00

がんを狙い撃つ「ADC薬剤」の開発成功、量産化への道を開く最先端技術

stock.adobe.com

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がん細胞を死滅させる薬剤を、抗体の特定の位置に結合させる新たな手法が開発された。これは複雑な工程をわずか2ステップに簡略化するプロセスを用いており、がん細胞を標的とする製剤の開発や製造を容易にする可能性があると期待されている。

抗体薬物複合体(Antibody-drug conjugates:ADC)製剤は、抗がん剤の新たなカテゴリーとして重要な存在になりつつある。このタイプの薬は、がん細胞を見つける役割を担う抗体を、がん細胞を殺す強力な薬と組み合わせたものだ。これによって、抗体が薬を腫瘍のある場所に届けるため、治療を必要とする部位に集中して投与することが可能になる。

ただし、こうした製剤の製造は、複雑なものになりやすい。ADC製剤の場合、同一の生産バッチであっても、異なった場所に薬が結合した分子が含まれたり、結合する薬の量にばらつきが生まれたりする可能性がある。こうした性質を持つため、ADC製剤の薬効の特定や製造、制御は難しくなる。

しかし、今回発表された新たな研究では、こうした薬剤をより意図したとおりの組成で、よりシンプルな手法で製造する方法が確立された。これを使用すると抗がん剤は各抗体の同じ位置に結合するようになり、より均一性の高い薬品の製造が可能になる。さらに新たな手法では、これまでのADC製剤の製造では最も難しかった工程の一つを大幅に単純化した。それは、薬を抗体に結合させる際に必要な化学物質(リンカー)を作成する部分だ。

この新たな手法で作成されたADC製剤は、ラボ研究の段階ではがん細胞の破壊に成功し、マウスでの実験では腫瘍の成長を遅らせる効果が確認された。一方、標的となる性質を持たない細胞に対しては、ほとんど影響を示さないこともわかった。

ADC製剤製造のネックは「抗体の均質化」

ADC製剤は、2つの部分から構成されている。一つは、がん細胞のタンパク質を認識する抗体であり、もう一つはがん細胞を殺す薬だ。抗体ががん細胞を見つけると、結合されていた薬ががん細胞を殺す、という仕組みだ。ここで課題となるのは、薬の分子を、抗体のどこに、どのくらい配置するか、という点にある。従来の手法では、生成される製剤の状態にばらつきがあった。つまり、抗体によっては他の抗体よりも多くの薬剤を結合させたり、薬剤が結合する場所が定まらなかったりした。

より均質な薬剤であれば、研究や製造が容易になる上に、体内での挙動も予想しやすくなる。今回開発された新たな手法は、抗体に自然に存在する糖鎖構造を利用する。この糖鎖構造は、同じタイプの抗体であれば基本的にすべて同じ場所に存在している。

研究チームは、この場所を操作することで、薬を抗体の一定の場所に結合させることに成功した。その結果、薬が結合する場所にばらつきがなく、統制の取れた形での結合を可能にする、より均質なADC製剤が生まれた。

複雑な工程を2ステップに縮める「ショートカット」

従来の抗体工学の手法では、抗体の改変に必要な材料を用意する際に多くのステップを必要としていた。また、複数の異なる酵素を使わなければならないアプローチもあった。

新しい手法では、自然に存在する糖に改変を加える方法を採用しており、市販されている材料から、最小ではわずか2ステップで使用可能な形にできる。この工程数の違いは、実験室での成果を超えて大きな意味を持つ。必要ステップが少ないプロセスであれば、再現や規模の拡大も容易で、将来的には薬の製造工程に組み込む道も開けてくるからだ。

改変された糖は、単一の酵素を用いるだけで、抗体と結合させることができる。適切な場所に結合した糖が、化学的な「ハンドル」の役割を果たすことで、がん細胞を殺す薬を結合させることが可能になる。そのためこのアプローチは、ADC製剤にまつわる2つの課題を一度に解決する。最終的につくられるADC製剤を均質にし、同時に製造プロセスも簡略化してくれるからだ。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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