ファンドの運用者(GP)、出資者(LP)、起業家への示唆
ファンドを運用するゼネラル・パートナー(GP)にとって、ガネサンが挙げた2つの問いは、ほとんどのファンドの収益モデルに組み込まれていないストレステスト(厳しい事態を想定した耐性の点検)に等しい。前回のラウンドを根拠に値付けされた資産への投資額に上限を設け、ダウンラウンド(前回より低い評価額での資金調達)が相次ぐ局面に備えた計画を文書にしておく。そうすれば、問いへの答えは具体的なものになる。
出資者(LP)は出口を問え、勝ちのうちどれだけを手にするか
LPにとっては、投資の入口と同じくらい出口が重要になる。ベンチャー投資家のトレース・コーエンは、ガネサンの投稿への返信で、ベンチャー投資で最も難しいのは、自分がすでに勝ったと見極めることだと書いた。
たとえば、投資家が評価額5000万ドル(約78億5000万円)のときに出資した会社の評価額が、今では100億ドル(約1兆5700億円)近くに達しているとする。その場合、100億ドルが割安かどうかを判断する必要はない。判断すべきなのは、その勝ち分のうち、どれだけを実際に手にしたいかだというのがコーエンの主張である。
ガネサンはこれに同意し、ベンチャー投資の世界は、投資先の株式をどう手放すかに割く時間が少なすぎると付け加えた。帳簿上の評価額だけでなく、実際に手元に戻ってくる分配金を重視するLPは、今のうちに、その規律について運用者を問いただすべきだ。
起業家にとって、前回ラウンドで決まった評価額は負債にもなる
起業家にとっては、同じ教訓が裏返しの形で当てはまる。前回のラウンドで決まった評価額は、資産であるのと同じくらい負債でもある。次のラウンドで越えるべきハードルを引き上げ、失敗が許される余地を狭めるからだ。
音楽が鳴っている間に売上高を積み上げ、長く使われる製品を作った起業家は、音楽が止まっても踏みとどまることができる。
好況は必ず終わる──椅子取りゲームで座れるのは先に備えた投資家
ガネサンは、助言とも警告とも読める一文で投稿を締めくくっている。音楽はいずれ止まる。いつだってそうだ。だから踊っている投資家は、椅子取りゲームの椅子がどこにあるかを知っておくべきだというのである。
シティグループ元CEOのプリンスも、音楽が永遠に続くと言ったことは1度もない。認めたのは、音楽が鳴っている間は座ってはいられないということだった。プリンスと同じ運命をたどらずに済むのは、曲のテンポが変わる前に、自分には椅子がいくつ必要かを決めておいた投資家だ。


