ドキュメントの作成・公開プラットフォームを手がけるMintlify(ミントリファイ)では、同社がホスティングするドキュメントへのウェブトラフィックのうち、2026年7月には66%をAIエージェントが占めた。8月には、エージェントによるリクエストが2億5700万件に達した。人間によるページの表示は1億3100万件だった。
こうしたドキュメントを管理する人たちは、今やまず機械に向けて書いている。その仕事には、「ナレッジエンジニア」(knowledge engineer)という新しい肩書きもついた。Mintlifyの共同創業者ハンビー・リーは今月Xで、この分析を公開した。
AIが読む文書と顧客に答えるAIに資金、知識の質には誰も責任を負わず
Mintlifyは2026年4月、米ベンチャーキャピタル(VC)のアンドリーセン・ホロウィッツと、セールスフォースの投資部門であるセールスフォース・ベンチャーズが主導したシリーズB(事業拡大期の資金調達ラウンド)で、4500万ドル(約71億円)を調達した。評価額は5億ドル(約785億円)で、調達総額は6700万ドル(約105億円)になった。同社は2022年、ベイン・キャピタル・ベンチャーズが主導したシード(創業まもない段階の資金調達ラウンド)で280万ドル(約4億4000万円)を調達して事業を始めた。
当時掲げていたのは、コードからドキュメントを自動生成するという事業だった。現在掲げているのは、AIエージェントが読んで使えるように企業の知識を整えて届ける基盤、つまり「ナレッジレイヤー」(knowledge layer)である。
Mintlifyのレポートには、顧客サポート用のAIエージェントを手がけるデカゴン(Decagon)から、製品の使い方を顧客に伝えるプロダクト教育の責任者も登場する。そのデカゴンは2026年1月に2億5000万ドル(約393億円)を調達した。評価額は45億ドル(約7065億円)で、7カ月足らずで3倍になった。未上場企業の調査会社Sacra(サクラ)は、デカゴンの年換算売上高(直近の売上高のペースが1年続いた場合の数字)が、2026年7月に1億ドル(約157億円)に達したと推計している。
資金は、知識が流れるパイプの両端に集まっている。一方の端はエージェントが知識を読み取る側、もう一方の端はエージェントが顧客に答える側である。ところが、その間にある知識の質そのものについては、ほとんどの企業で誰も責任を負っていない。
エア・カナダ敗訴、誤回答に賠償責任──機械が生成した言葉にも、企業は責任を負う
少額の民事紛争などを扱うカナダ・ブリティッシュコロンビア州の審判機関、民事紛争解決審判所(Civil Resolution Tribunal)は2024年2月14日、エア・カナダに責任があると判断した。同社のチャットボットが顧客に対し、忌引運賃(近親者の死去に伴う旅行向けの割引運賃)は旅行を終えたあとでも申請できると答えていた件である。
エア・カナダは、チャットボットは独立した法的主体であり、その発言の責任はチャットボット自身が負うと主張した。審判所はこれを「驚くべき主張」だとして退け、650.88カナダドル(約7万2000円)の損害賠償を命じた。
企業は、機械が生成したものも含め、自社のウェブサイトに載っているすべての言葉に責任を負う。審判所が示したこの判断が及ぶ範囲は、現在でははるかに広い。エージェントが1つの誤った回答を、その先に続く何千ものやり取りで繰り返すようになったからだ。



