ビジネス

2014.12.03

長谷川閑史 「女性力」を活用しなければ 会社も社会も滅びる




豊富な海外経験を有し、陣頭指揮を取って自社のグローバル化を進めつつ、「経済界きっての論客」として経済同友会代表幹事も務める。そんな国際派が危機感を持って推進しているのが「女性の活用」である。 そして、それは企業だけの問題ではなく、日本全体に関わる問題でもある。

 (中略)私は2003年に社長になったときから、武田薬品で女性管理職を増やすことを意識してきました。ただ当初は、女性社員たちに「もっと後押ししたい」と呼びかけても、「ロールモデルがいないので、どうしたらいいかわからない」という声が返ってくるばかりでした。これは散発的にやっていてはだめだと思い、 ポテンシャルの高い女性たちに、管理職に必要な心構えや知識を学んでもらう「WILL」というプログラムを2010年に始め、2013年からは実践的なリーダーシップのノウハウを学んでもらう「WILL+」というプログラムも開始しました。これまで74人が修了し、うち10人が管理職に昇進しています。

 (中略)私は38歳から52歳までドイツとアメリカで暮らし、女性と男性が対等に働くのが当たり前という環境に身を置いていました。例えばアメリカでは、MR(医薬情報担当者)は採用段階では女性が約6割を占めるし、能力的にも男性とまったく差がないことを実感しました。ところが1988年に日本に戻ると、相変わらず女性は限られた分野でしか活躍できていない。これは何としても変えなきゃだめだと意識し始めたのです。

男女それぞれの特徴を生かす

 私は、男性と女性で能力に「違い」はあっても「差」はないと思っています。(中略)
大切なのは、男性と女性がそれぞれの特徴を生かしていくことです。例えば、女性は男性には見えない微妙な色あいの違いを感じとることができますから、製品デザインの判 断や評価でそれを活かすとよい。そもそも、大多数の日用品は女性が購入していますから、女性がより納得するものを提供していかないと企業は生き残れません。一方、毎日同じ仕事に集中して改善しながら効率を上げ るといったことは、おそらく男性のほうが得意だと思います。そうした違いをうまく組み合わせていくことが大事なのです。日本の多くの会社に見られる男性支配は、大量生産・高度成長の時代に優位性を発揮してきた男性が、自分たちに都合のいいカルチャーをつくってきた結果であって、そこに合理性はありません。女性はもっと企業で活躍すべきですし、男性にはそのぶん家事と育児などに励むことが求められます。そして会社はそれを後押しする必要があります。問題は、会社のカルチャーやルールを決める場には男性が多く、彼らの多くは変わりたくないと思っていることです。でも、女性の力を活用しなければ、会社も社会も生き延びていけない。その現実と危機感を浸透させることが、経営者の仕事だと思っています。

フォーブス ジャパン

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