マーケット

2026.09.26 11:00

日本のステーブルコイン「JPYC」、韓国上場直後に一時額面4倍超──法整備の遅れが浮き彫りに

(C)JPYC

マーケットメーカー不在と償還制限で、額面を大幅に上回る価格が発生

37.6ウォンへの急騰はJPYCだけの現象ではない。同じ2026年9月17日朝にアップビットへ上場した米決済大手ペイパルのステーブルコイン「PYUSD」は、1379ウォンから1760ウォンへ値上がりした。

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韓国の暗号資産交換所ビッサムでも似た動きが起きている。8月28日に上場した米サークルのユーロ建てステーブルコインは9月14日、1583ウォンから7860ウォンまで跳ね上がった。額面の約5倍に当たる。

JPYCはアップビットで売買できるが、1円での払い戻しは日本の発行会社が担う

調査会社DigitalXのキム・ミンスンは、マーケットメーカー不在と償還手続きの制約を価格急騰の原因に挙げた。マーケットメーカーは継続的に売買注文を出し、市場へ流動性を供給する役割を担う。

ここでいう「償還」とは、保有するJPYCを発行会社に戻し、1JPYCにつき1円を受け取ることを指す。韓国の購入者はアップビットでJPYCをウォン建ての市場価格で売買できるが、この償還手続きはアップビット内では完結しない。1JPYC=1円で受け取るには、日本の発行会社を通じて円で償還する必要がある。つまり、アップビットでのウォン建て売買と、発行会社による1円での償還は別の経路だ。

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米国には先例がある。2021年11月、円建てステーブルコイン「GYEN」はコインベースへの上場後、数日間にわたって大幅に値上がりした。買い手側は後の訴訟で、GYENが額面の7倍超で取引されたと主張している。価格が元の水準へ戻った後、高値で購入した利用者が提訴した。

裁定取引でJPYCの供給が急増し、上乗せ価格が縮小

JPYCの急騰は、韓国の個人投資家が、本来1円に連動する商品を価格が変動する通常の暗号資産銘柄のように買ったことで起きた。裁定取引業者は9月17日だけで、過去最高の12倍に当たる16億8700万円分のJPYCを新たに発行させ、韓国市場へ送っている。供給が急増した結果、上場初日に生じた額面超のプレミアムは縮小した。

累計発行額は9月18日に100億円を突破した。5月30日時点の30億円と比べると、約3カ月半で大幅に膨らんだことになる。JPYCの累計発行額の大半は、韓国上場を挟む数カ月間に生まれている。過去最大の1日発行額を記録したのも9月17日で、その大量発行分は韓国で額面を上回る価格で売るためにつくられた。

ステーブルコインの普及実績を示す統計では、上場直後の7時間に生じた取引額もステーブルコインの取引量として数えられるだろう。だが、この数字は日常的な決済利用によって積み上がったものではない。上場直後の売買で生じた取引額だ。

LINE経由の消費者利用が広がり、韓国当局は資金洗浄リスクを警戒

発行会社の資料からは、韓国で円建てJPYCに需要が生まれた経路が分かる。JPYCは2026年5月、LINEとカカオのブロックチェーンプロジェクトを統合して生まれた「Kaia(カイア)」に対応し、韓国を需要地域に挙げた。

1週間後には、自己管理型ウォレット「Unifi」との連携も発表。Unifiは、LINEヤフーのグループ会社でWeb3事業を手がけるLINE NEXTが開発したもので、LINE上のミニアプリとして動く。

LINE内で商品券を購入、美容医療では最大15%のキャッシュバック

韓国紙ソウル経済は9月21日、韓国の利用者がUnifiでモバイル商品券を購入し、提携する美容整形外科や皮膚科でキャッシュバックを受けていると報じた。残高には年率2%の利息が毎日付き、キャッシュバック率はクリニックや商品に応じて最大15%となる。

円建てJPYCをLINE内に保有しながら利息を受け取り、美容医療では高率のキャッシュバックも得られる。米国のステーブルコイン業界が主な用途として挙げる企業間の大口決済や企業の資金管理とは大きく異なる、消費者向けの商品設計だ。

商品券の購入・譲渡を巡り、韓国金融委員会が資金洗浄リスクを指摘

韓国金融委員会は、アップビット上場の4日前となる2026年9月13日、パク・サンヒョク議員へ提供した資料でJPYCとUnifiを名指しした。資料では「本人確認手続きを経ずに取得した暗号資産で、韓国内で現金化しやすい商品券を購入・譲渡できる仕組みは、資金洗浄に悪用される恐れがある」と指摘している。

資金洗浄対策を担う韓国金融情報分析院(KoFIU)は、資料提出要求、是正要求、他機関への通報を段階的に進める方針だ。JPYCは消費者利用を広げるのと同時に、韓国当局による監視の対象にもなっている。

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