私たちの選択は、「エコーチェンバー(共鳴室)」によって著しく損なわれることがある。さらに厄介なのは、その状況に自分自身で気づくのが容易ではない点だ。自分の既存の信念と見事に一致する意見ばかりに触れるようになり、異論はフィルターにかけられたり、退けられたりしがちだからだ。
より的確な意思決定を行うためには、こうした思考の罠から抜け出す手段や方法を見つけなければならない。しかし、必要な「隠された選択肢」を引き出せる人材やシステムは整っているだろうか。単一の支配的な見解に頼るのではなく、多様な視点や解決策に誰もがアクセスしやすくなるよう、「選択肢のある職場」を築いてみるのはいかがだろうか。
正解は決して一つではない
「選択肢のある職場」というアイデアは、いたってシンプルだ。上司が望む答えばかりを返すのではなく、すべての従業員が自分の考えを自由かつ率直に発言できる環境を指す。彼らはあらかじめ用意された回答に縛られることなく、そうでなければ考慮されなかったかもしれない解決策を提案できるのだ。その目的は、複数の視点を引き出し、それを比較検討した上で、より良い成果を得るための選択肢を増やすことにある。
私の組織では、「オキシジェン(酸素)セッション」と呼ぶ取り組みを行っている。誰もが批判されることなく、新鮮な考えやアイデアを持ち寄り、お互いに一息つける自由な空間だ。こうした意見交換が時に議論に発展することもあるが、それで構わない。少なくとも、あるテーマについて自分の考えを共有し、解放感を味わえる場が生まれるからだ。
このセッションを行う背景には、エコーチェンバーの誘惑に対抗するための前向きな手段を提供するという狙いがある。私たちは、同調圧力やグループ・アイデンティティ、都合の良い事実の選択、あるいは特定の意図に基づいた情報のループがもたらす弊害を認識するよう努めている。これらは、事実と感情を区別するのを難しくしてしまうからだ。
結局のところ、こうしたセッションは、一つの視点が支配し、それが組織的に強化されるという同調の罠から抜け出す助けになる。これは単に選択肢の「数」を増やすための試みではない。従来の考え方に疑問を投げかけるような、「意味のある選択肢」を増やすためのものだ。息を吹き返すための酸素さえあれば、人はのびのびと呼吸ができるようになる。
数々のメリット
組織の目的が利益の追求であれ、社会的使命(パーパス)の達成であれ、あるいはその両方であれ、「選択肢のある職場」はミッションを強化し、成果を向上させることにつながる。
民間セクターの優れた投資家は、機会費用や「自分の知らないリスク」に対して健全な危機感を抱いている。投資を行う前に複数の選択肢を徹底的に調べ、一つのアイデアやアプローチだけに固執するのを避ける。彼らが投資先企業に求めるのは、株主価値を高める方法を貪欲に模索することであり、それは通常、不完全な前提に基づく意思決定を避けることを意味する。一流の企業は状況に適応し、答えを求める過程で選択肢を広げることを厭わない。そしてその姿勢は、最終的な業績に直結するのだ。
ミッション主導の組織にとっても、選択肢を増やすことは有益だ。そのためには、従来の慣習や特定のプログラム、プロセスよりも、社会的インパクトの追求を優先しなければならない。手段とミッションを混同してはならない。なぜなら、私たちは時として「これはいまも進むべき最善の道なのか?」と自問する必要があるからだ。そして、この問いにどう答えるかによって、その組織のカルチャーのすべてが浮き彫りになる。他の選択肢に対して開かれているか、それとも閉じているか。選択肢を広げることで得られるメリットを、ぜひ受け入れてほしい。
視野を広げる
組織を率いたことのある人なら誰でも、メンバーに「リーダーが聞きたがっていると思われる答え」以外の意見を出してもらうことが、いかに難しいかを知っているはずだ。耳に心地よい賛同は安心感を与えるかもしれないが、それはあなたをエコーチェンバーに閉じ込め、あなた自身と組織が必要とする「酸素」を奪うことになりかねない。
視野を広げよう。率直に意見を述べることを恐れない人たちと対話するのだ。異なる視点を取り入れてみよう。そうすれば、他人が「選ぶべきだ」と考える決断ではなく、自分自身が下すべき「正しい決断」に必要なものが見えてくるはずだ。



