起業家

2026.09.25 21:32

AI時代に「人的資本」の価値を再評価する起業家たち

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AIは長年、経営会議での不安の中心にあり続けてきたが、その議論は変化しつつある。仮定の話としての失業について議論する代わりに、起業家たちは今、組織内でAIが実際にどのように導入されているか、そしてそれが組織を支える人々、すなわち「人的資本」について何を浮き彫りにしているかに焦点を当てている。雇用主の86%が2030年までにAIと情報処理技術が自社のビジネスを変革すると予想し、世界中の仕事の約40%が影響を受けると見込まれるなか、そのプレッシャーは現実のものとなっている。

しかし、新たな起業家グループは、AIが人間の価値を低下させるという考え方に異を唱えている。彼らは、インテリジェント・エッジ・ハードウェアやライブネス認証(実在証明)から、AIを搭載した勤務表作成、組織全体の意思決定システムに至るまで、労働者の生産性を高め、安全性を確保し、その存在をより不可欠なものにするテクノロジーを構築している。彼らの戦略は明確だ。仕事の未来は、機械が主導するのではなく、機械によって拡張されるのだ。

より公平な勤務パターン

医療ほど、この課題の重要性を明確に示す分野はほかにない。英国のNHS(国民保健サービス)では、人員計画は長年、もぐら叩きのような状態だった。マネージャーはスタッフを効果的に配置するツールもないままシフトの穴埋めに奔走し、臨床医は融通の利かない、往々にして不公平な勤務表に縛られ、慢性的な人手不足によって患者の安全が脅かされてきた。その結果、派遣スタッフに数十億ポンドもの費用が費やされ、何千人もの臨床医が燃え尽き症候群に陥ってきた。

Patchwork Healthは、この流れを反転させる一助となっている。同社のAI搭載型人員管理プラットフォームは、過去10年間でNHSの人件費を2億5000万ポンド削減した。現在、NHSトラスト(地方保健信託)の約60%に導入されており、12万人以上の臨床医の労働環境を改善している。

共同創業者兼CEOで、元救急救命医のアナス・ネーダー医師は次のように語る。「このテクノロジーは、マネージャーが終わりなきシフト変更を調整したり、穴埋めのために高額な派遣スタッフを雇ったりすることなく、病棟に安全な人員が配置される人員計画を作成する。臨床医にとっては、個人の希望を考慮した、より公平で柔軟な勤務表システムを利用できるようになることで、労働環境が目に見えて改善し、燃え尽き症候群のリスクが軽減され、質の高い医療を提供する余裕が生まれる」

人間的な要素の維持

しかしネーダーは、AIが人員管理における人間的な要素を代替するのではなく、むしろ強化するのだと確信している。「事前にどれほど計画を立てても、勤務当日の朝に医師の子供が急病になったり、看護師の高齢の親族が夜間に救急搬送されたりすることを防ぐことはできない」と彼は言う。「当社のテクノロジーは、チームがこうした課題に対処できるよう設計されているが、実際にこうした事態が起きたときにサービスを支え続けるのは、NHSスタッフの共感、柔軟性、そして献身的な姿勢なのだ」

従業員の貢献を無視できないものにする

同様のパターンは、あらゆる業界で現れている。インテリジェントな労働力・セキュリティ技術を提供するNewmark Securityは、雇用主による人的資本の理解と保護のあり方を再定義している企業のひとつだ。歴史的には人員管理に焦点を当てていた同社は、製造、物流、小売、重要インフラなどで使用されるインテリジェント・エッジ・デバイスとAI対応ソフトウェアを組み合わせることで、仕事の未来を守る専門企業へと進化を遂げた。

ニューマークの最大のイノベーション領域のひとつが「エッジAI」だ。これはクラウドだけに依存するのではなく、職場のデバイスに直接処理能力を持たせるものだ。「接続が途切れた場合でもバイオメトリック認証を継続でき、システムがオンラインに復旧した時点でデータが照合される」と、CEOのマリー=クレール・ドゥウェックは説明する。「私たちはまた、実在する人物と、AIが生成した画像やディープフェイクなどのデジタルなりすましとを区別するための、より高度なライブネス検出技術の開発も進めている」

生成AIによってなりすましが容易になるなか、ニューマークは事実上、AIに対抗するためにAIを活用し、その人物が誰であるかだけでなく、実際にその場に存在しているかどうかを確認している。ドゥウェックにとって、アイデンティティ、セキュリティ、労働力テクノロジーのこの融合は、企業が人々をどう評価するかにおける、より深い変化を示している。彼女は次のように語る。「機械がより多くの知的労働を吸収する一方で、熟練した現場労働者の需要が高まるにつれ、AIは最終的に企業に対し、人的資本の評価方法を再考させ、ブルーカラー労働者の新たな価値を認識させることになるだろう」

AIによる人員削減と「高くつく再雇用」問題

AI導入競争のなかで、あまりにも早く人員を削減することのリスクは無視できなくなっている。クラーナは、コスト削減策がサービス品質に悪影響を及ぼしたことを認め、人間のカスタマーサービススタッフの採用を再開した。また、オーストラリアのコモンウェルス銀行は、AIに関連した45人の一時解雇を撤回した。ガートナーは現在、2029年までに、AIへの代替を理由に解雇された従業員の30%が再雇用される必要が生じ、そのコストは往々にして大幅に高くなると予測している。

ニューマークのテクノロジーは、企業に既存の労働力内の貢献と価値を高精度に把握できる仕組みを提供することで、この問題の解決を支援する。誰が、どこで、いつ働いているかを、生体認証による裏付けと、義務付けられた休憩など国や州レベルの雇用要件への準拠に関するデータで支えるのだ。

「このようにより豊かな労働力インテリジェンスを得ることで、意思決定者にとって従業員の貢献度がより可視化される」とドゥウェックは付け加える。「これにより、価値ある人材を維持するための説得力が増すとともに、取り除いた専門性が実は必要だったと後になって気づく多大なコストを、雇用主が回避する助けにもなる」

人間の専門知識をスケールさせる

Tredenceは、自社が「AIのラストワンマイル」と呼ぶもの、すなわち従業員が有意義に活用できるよう高度なモデルを日々の企業ワークフローに組み込むことに注力している。売上高3億5000万ドル(約556億円)のデータおよびAIサービス企業である同社は、2030年までに売上高10億ドル(約1590億円)に達することを目指している。

「私たちが対処している職場の課題は、規模に応じた生産性の向上だ」とCOOのジテンドラ・プチャは語る。「私たちはAIを、人を代替するものではなく、人々がより良く仕事を行えるよう支援するツールと捉えている。重要な知識が少数の専門家グループのなかに閉じ込められる代わりに、AIによって、インサイト、ベストプラクティス、そして組織の知識がより幅広い従業員に開放されるのだ」

プチャは、AIの能力が向上するにつれて、人間の判断力はさらに価値を高めると主張する。「AIは膨大なデータを分析し、コンテンツを生成し、推奨事項を提示できるが、とりわけ複雑または曖昧な状況で正しい意思決定に至る助けとなるのは、人間が持つ文脈理解と経験である。最大の価値は、AIのスピードと規模を人間の専門性と組み合わせることで生まれると私たちは考えている」

生産性と意思決定の向上

その一例が、売上高550億ドル(約8兆7400億円)の世界的消費財メーカーであるマーズとトレデンスの取り組みだ。トレーニングの実施と企業情報を保護するためのセーフガードの構築により、従業員が日々の業務で安全にAIを使用できるようにしたことで、マーズは1年未満で利用者を200人から2万8000人以上に拡大し、250万回以上のクエリを生成した。初期の用途には、コーポレート・コミュニケーション・チームが社内コンテンツを迅速に作成するための支援などが含まれていた。

「その影響は、仕事を代替することではなく、生産性と意思決定を向上させることだった。最終的なゴールは、従業員が反復的な作業に費やす時間を減らし、分析、問題解決、および戦略的な意思決定により多くの時間を割けるようにすることだった」とプチャは語る。

人間の労働の新たな価値

多くの分野において、起業家たちは同じ信念へと至りつつある。それは、AIは人間の能力に取って代わるものではなく、むしろその価値を再評価するための触媒であるということだ。自動化への不安が際立つこの時代において、彼らのメッセージは明確である。AI時代に繁栄する企業とは、アルゴリズムだけでなく人的資本にも投資する企業であり、人間の判断力、思いやり、創造性、そしてその場に存在することが、軽視されるどころか、より価値を高めていることを認識している企業なのだ。

(forbes.com 原文)

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