まずまずだった日の終わりに何も良いことがなかったように感じる――。そうした経験がどのようなものか、多くの人は知っている。特に何か悪いことがあったわけではない。だがその日を振り返ってみて真っ先に頭に浮かぶのは、イライラさせられたメールや完了できなかったタスクだったりする。
多くの場合、それはその日に良い瞬間が全くなかったからではない。実際には、そうした瞬間のほとんどは注意が他のことに向いている間に起こり、あまり印象を残さずに過ぎる。
心理学者たちはこの問題に対処するのに役立つシンプルな習慣を構成する2つの要素について研究してきた。その実践には数分しかかからない。朝はその日の中で楽しみにしていることを考える。夜にはその日うまくいったことと、うまくいった理由を振り返る。どちらのステップにも日記やアプリは必要ない。この2つを組み合わせることで、良い出来事をそれが起きている最中に心に刻み込み、その後も記憶に留めておくことができるようになる。
朝の習慣が喜びをもたらす理由
セイバリングとはポジティブな経験に気づき、それをじっくり味わうことだ。このスキルは練習によって身につけられる。学術誌『Applied Psychology: Health and Well-Being』に2026年に掲載された研究では、セイバリングの実践によって感情面でのウェルビーイングが確実に向上することがわかった。
セイバリングは物事が起こった瞬間に行うこともできるが、「期待」という形で事前に体験することも可能だ。研究によると、何かを楽しみに待つこと自体が真の幸福の源であり、だからこそある出来事を待ち望む時間はその出来事とほとんど同じくらい楽しいものになり得る。
多くの人は休暇を取る際にセイバリングを経験するが、些細なことでもいい。朝、スマートフォンを手に取る前に「今日、自分は何を楽しみにしているか」と自問するといい。その答えは友人と電話するといったささやかなものかもしれない。楽しみにしていることの大小よりも、それを具体的に言葉にすることの方が重要だ。
これが役立つのは部分的に人間の心が中立ではないからだ。人にはネガティビティ・バイアスというよく知られた傾向がある。これは楽しい瞬間よりも問題や苛立ちの方が簡単に注意を引きつけることを意味する。朝、何か楽しみにすべきことがあると決めておけば、それが実際に起きたときに他のことを考えている間に見逃してしまうのではなく、注意を向ける理由ができる。
このステップでわずかな意図を加えるのを好む人もいる。例えば、気が重い会議でもっと辛抱強く振る舞おうと決めることなど。意図は具体的かつ特定の状況と結びついていると定着しやすいため、「良い一日にしたい」という漠然とした願いよりも、1つの明確な意図を持つ方がたいていうまくいく。
夜の習慣が喜びを倍増させる理由
夜になると思考の方向を逆にする。先のことを考えるのではなくその日を振り返る。うまくいったことをいくつか思い出し、うまくいった理由についても考える。これは、「3つの良いこと」と呼ばれるよく知られているポジティブ心理学のエクササイズの基礎となっている。学術誌『Proceedings of the National Academy of Sciences』に2025年に掲載された、多くの国で行われた感謝に関する調査を統合した研究では、そのような振り返りはわずかではあるものの幸福感を確実に向上させることが明らかになった。



