サウジ政府はまた、2030年までに鉱業の国内総生産(GDP)寄与額を年2400億サウジアラビア・リヤル(640億ドル、約10兆円)に引き上げることや、鉱業への新規投資を270億ドル(約4兆3000億円)呼び込むことも目標に掲げている。世界で最も低コストな部類に入る太陽光発電や風力発電を活用し、2030年までに製錬分野で世界の上位7カ国に入ることも目指している。
UAEも同様の戦略を、より目立たない形で進めている。ADQなどの政府系ファンドを通じて、国外で鉱山や製錬所などの権益を取得しているのだ。UAE国内には、自国が必要とするような鉱物の埋蔵はほとんどない。
既存の取引を見れば、この動きがどこまで進んでいるかがわかる。サウジアラビアの政府系ファンドであるパブリック・インベストメント・ファンド(PIF)と同国の鉱業大手マーデンの合弁会社であるマナラ・ミネラルズは2024年、ブラジル資源大手ヴァーレのベースメタル(卑金属)事業の株式10%を25億ドル(現在の為替レートで約4000億円)で取得した。さらに、ヴァーレが将来生産するニッケルと銅の一定量を優先的に購入できる長期契約も結んでいる。これはサウジアラビアにとって、ニッケルと銅を直接確保できるルートだ。これらの金属は米国も電気自動車(EV)のバッテリーや電力網向けに必要としているものであり、このルートは中国を通さない供給源になる。
アブダビの資源開発会社インターナショナル・リソーシズ・ホールディング(IRH)は2024年、アフリカ南部ザンビアの鉱山会社モパニ・カッパー・マインズの過半数株式を11億ドル(現在の為替レートで約1700億円)で取得した。これにより、アフリカ最大級の銅生産拠点が再生されることになった。ザンビアでは今年、カタールの政府系ファンドもイヴァンホー・マインズに5億ドル(約800億円)を投資している。いずれの取引も、やはり米国が必要とする金属に関して中国以外の供給源の候補になるものだ。
現実的なリスクも存在
西側の資本はこれまで、政治リスクを警戒して貧困国での鉱山開発プロジェクトから距離を置くことが多かった。湾岸諸国の資本は、より高いリスクを引き受ける用意のある政府の後押しを得て、その空白を埋めつつある。折しも、データセンターの建設や電力網の更新が相次ぐ時期にだ。
最先端の半導体チップも、銅やシリコン、レアアース磁石がなければ役に立たない。湾岸諸国の政府系ファンドは、鉱山や、鉱石から金属を取り出して有用なものにする製錬所などの加工施設に出資することで、地下資源と最終製品の中間の位置を占めている。米国にとっては、他国の資金で中国国外で精錬された鉱物が1トン増えるごとに、供給面の制約が軽減されることになる。


