ここにはロシアに対する暗黙の脅威も存在する。ロシア軍がウクライナの電力網を主な攻撃目標としてきた一方で、ウクライナ側はこれまで、ロシアの広大な電力網にはおおむね手を出さず、戦争の資金源を標的とすることに注力してきた。しかし今、ゼレンスキー大統領は、ロシアの電力と暖房の主な供給源が天然ガスであることを踏まえ、状況が変わろうとしていることをほのめかしているようだ。一般のロシア国民も間もなく、ウクライナの人々と同じ苦難を味わうことになるかもしれない。
自律型AIを実戦で活用するリスク
こうした能力が人工知能(AI)の自律制御下に置かれることを想像してみてほしい。あるいは、別の言い方をすれば、標的の発見から攻撃に至る一連の過程と、それに伴う全ての意思決定を自律型AIの手に委ねるのがどういうことかを考えてみてほしい。これはつまり、人間の役割はシステムを起動するだけで、無人機が実際の標的を識別、追跡、優先順位付け、選定、そして攻撃することを意味する。
現時点では、信頼に足る形でこれを実現することはまだ不可能だ。だが、米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)による最近の報告書は、ロシアの無人機の残骸から回収された証拠に基づき、これがクレムリンにとって現実的な目標になりつつあると結論付けた。ウクライナも同様のシステムの開発に取り組んでいるが、特に最終的な標的の選定に関しては、人間の監視や意思決定への依存度が高いことが特徴だ。
現状では、このようなシステムは誤動作の確率がかなり高い。例えば、軍用車両を識別することはできるが、それがロシア軍のものかウクライナ軍のものかを判別することはできない。画像認識技術は泥や煙、天候、損傷した物体などの影響を受けやすい。さらに、標的への攻撃を人間が承認する際、本来なら数分を要する判断をわずか数秒で行わなければならないことも多く、誤りが生じやすい。
しかし、戦争はこうしたシステムを改良し、実戦で試験し、何が有効かを見極め、それを発展させるための特別な機会をもたらす。CSISの報告によれば、ロシアの場合、AIに精通した非軍事的な団体や企業が革新的な開発に取り組んでおり、その成果物がクレムリンに採用され、標準化・量産化されることで、多大な時間と費用の節約が図られている。
ウクライナも分散型モデルを採用しているが、ロシアの工業生産規模には及ばず、もう1つの側面、すなわち「人間の意思決定の排除」という点でも「後れを取っている」ように見受けられる。CSISによると、ロシア軍は実際の攻撃で完全自律型システムに最も近いものを投入した可能性が高い。これを「革新的な進歩」と見なすべきかどうかについては、その影響が戦争だけでなく、大規模な群衆が集まる催しなど、平時の都市の安全にも及ぶことを踏まえると、疑問の余地があるだろう。


