それでは、どのように優先順位をつけたらよいのだろうか。新たに定番となった場所か、新たに明らかになった場所か。ひっそりした僻地か、開発されすぎた場所か。その場所が永遠に変わってしまう前に見ておかなければならないものとはなんだろう。
そこで私は、超ハイエンドな体験型旅行企画会社の専門家に聞いてみた。このスーパーエージェント集団は、顧客の関心を把握しているだけでなく、彼ら自身で世界の隅々まで冒険して得た知識を有している。上質なリネン、豪華なバスローブ、そしてブルゴーニュワインの大ボトルを正しく評価することも忘れない。
彼らが来年注目するのはここだ。
ブータン
ブータンは、ここしばらく魅力的な国リストに名を連ねているが、アブソルート・トラベル社は、同国が本当に変わってしまう前に訪れるよう勧めている。同国を走る質素でほとんど未舗装の道路は、ツアーバスも走行可能な舗装された大通りに変わりつつある。以前にはなかった(よりしゃれた5つ星のような)3つ星及び4つ星のリゾートホテルも計画中だ。ブータンは依然として特別な存在だが、伝統的な衣装はすでに中国からの機械製シルクにとってかわられ、伝統的な染色職人を見つけることはほぼ不可能になっている。アブソルート社は、ダラ・アーティザンズと協力し、顧客を最後の機織り及び染色職人のもとへ案内する。その中には王室に品物を納める染色職人もいる。
コロンビア
数週間前、ジオグラフィック・エクスペディション(GeoEx)社のアメリカ担当責任者ジェニン・コーエンは、現地を詳しく調べた。「エネルギーがはっきりと感じられ、着実に経済成長している。旅行者は、常に嬉しい驚きをコロンビアから感じている」GeoEx社が活動する地域は長年にわたり安定し、安全である。また、政府は現在インフラを改善しているところで、平和協定のためコロンビア革命軍(FARC)との最終交渉を行っている。主要な高級ブランドホテルが無数の最先端のアートギャラリーやレストランと共にオープンしているが、植民地時代の小さな町や村は時間が止まったかのようだ。コロンビアは今も十分な価値を持ち、「僻地を冒険している感覚が味わえる。観光産業はまだ比較的新しいので、人々は非常に親切で、自分たちの国を紹介することに興奮している」。
インド・ラダック
レッド・サバンナ社が求める主な傾向の一つに、現代文明から切り離されることがある。ラダックは「楽しく非文明的で、人々のライフスタイルや意識がやみつきになるほど切り離されている」とレッド・サバンナの創設者ジョージ・モーガン・グレンヴィルは言う。同社のラダック村体験は、復元された村の家でのホームステイや地域社会との本当の関わり(王に謁見する可能性も)を体験しながら、徒歩でインダス谷の僻村を探検する。Wi-Fiもテレビもなく、電話は受信できない。「ラダック人の整ったライフスタイルは、重度に接続された環境で生活することのつまらなさと不適切さを浮き彫りにする」。
ザンビア・ザンベジ
最近のビクトリアフォールズ空港の改善と特別席のオープンは、同地域をこれまで以上に熱くしたとブラック・トマト社の創設者トム・マーチャントは言う。「しかし、同地を訪れる観光客はまだ比較的少ない。ということは、野生生物をより多く目撃できるということだ」加えて、冒険の大きな可能性も秘めている。「ザンベジ地域は、典型的な車や馬、又は徒歩でのサファリを超える経験を数多く提供している」ブラック・トマト社は、ザンベジ川にある離島でのキャンプ、カヤック・サファリ、滝の上空を飛ぶマイクロライト(超軽量動力機)やヘリコプターのツアーを手配することができる。
スリランカ南岸
この地域は常に最高のビーチを有していたが、宿泊施設は洗練された旅行者というよりもバックパッカー向けで、コロンボからはでこぼこ道を4時間も要したとレッド・サバンナ社は指摘する。現在、改善された道路が所要時間を半分以上に短縮しており、わずかにある新しく興味深い宿泊場所は、文化三角地帯と中央高地の茶畑を有するヤラでの野生動物の観察を実現している。「5つ星の快適空間でリラックスしながらスリランカの休暇を締めくくるのは今です」とモーガン・グレンヴィルは言う。
ブリティッシュコロンビア
遠くのものに夢中になり、身近にある宝物を見逃すのは簡単だ。アブソルート社のケイティ・ロージーは、それは間違いだという。「そこに太平洋岸北西部がインスタグラムにもてはやされる理由がある」しかし、この野生生物の中心地は、伐採と破滅的なプロジェクトによる変化により、気候変動の最前線にある。クレイオコットのような荒野の楽園はまだ手付かずだが、同州の鮭の遡上、ホッキョクグマの移動、シャチの大群、繊細な熱帯雨林の生態系及び氷河が危険にさらされている。グリズリー狩りは、アフリカにおける猛獣狩りのように、ここでは深刻な問題となっている。動物は死んだときよりも生きているときに価値があると示すことが行動を変えるのに役立つ。ニモ・ベイ・ホテルは、ハンターたちにおもてなしつきの滞在とライセンスを交換させることさえしている。
イラン
これは、新し物好きのための選択だ。レッド・サバンナ社の旅行は開発中で、カタログにはないが、国際関係の雪解け、制裁解除及びビザ規制緩和の見通しは、すでにイランをより魅力的な国にしている。同国は、観光産業への投資を誘致するために1,000以上のプロジェクト立ち上げを計画している。本当の雪解けまでには数年かかるかもしれないが、アリカプ宮殿、ペルシアの首都ペルセポリス、アブヤーネのような泥レンガでできた農村、素晴らしいイスラム建築といった古代の遺跡がそこにはすでにある。
ネパール
先月ネパールを旅したばかりのアブソルート社トラベルマネージャー、オーウェン・ガディスは、今こそ、この国の栄光の復活を目撃する瞬間だという。ネパールを観光することが、震災後の復興を助ける最良の手段の一つとなる。観光産業が主な収入源であることから、同じく、同国を今訪問するよう人々に強く働きかけているアドベンチャートラベル貿易協会は、訪問するのが遅れるほど、同国の社会構造は破壊されると警告する。だが、ガディスは残念ながら人道的使命をほとんど果たしていない。彼は、「ネパールの人々はこれまで以上に生きがいを持っている。そして、その精神と気概は人から人へと広がるものなのだ」という印象を持って現地を後にしたという。
自然のままのパタゴニア
GeoEx社は、尊敬される自然保護活動家ダグラス・トンプキンスの新しい公園(ビジターセンターが今シーズンオープン予定)と、アルゼンチンとフィッツロイへ向かう山々を巡るハイキングを組み合わせた先駆者的旅行をコンセルバシオン・パタゴニカと協力して立ち上げたばかりだ。この公園は、年間わずか数百人の観光客しか訪れないが、今後数年間でトーレス・デル・パイネ国立公園(20万人)と同程度の旅行者を受け入れることになると予測している。コーエンは、「景色が同じくらい壮観だ。そして先駆者である旅行者たちは、公園全域で他の誰も見つけることがないだろう!」と言う。
ケニア
テロリストによる(単発的)攻撃や(遠くの)エボラ熱の恐怖を経験した後、ケニアは復活のための態勢を整えている。アブソルート社によれば、魅力的な低木地帯やアンガマ・マラなどの豪華で新しいロッジもある。そして、もちろんいまだに尻込みする観光客がいるため、訪れる者には、映画「愛と哀しみの果て(原題Out of Africa)」のような本物の体験という報酬が与えられる。それは、ほとんど車両のない野生生物の世界だ。旅行者の存在(及びドル)が密猟者の活動を防ぐ。アブソルート社が、最後の野生のクロサイ8頭のボディーガードと一緒にトレッキングする手配をしてくれる。さらに、2016年は、旅行者がマサイオリンピックに参加することができる最初の年でもある。
ブラジルで食の旅
アブソルート社トラベルマネージャー、サシャ・リーマンは、アマゾン川からの採れたて食材を使ったメニューを食べに行くよう勧める。サンパウロの有名なレストランDOMのシェフ、アレックス・アタラのブラジル食材への献身は、大都市からベレン、ミナス・ジェライス州及びアマゾン川そのものを動かしたが、それはスタートに過ぎない。アブソルート社の新しい旅は、ただそれだけを祝福するものだ。観光客は、収穫直後にその生命力を失う本物のアサイーを味わったり、DOMの元シェフ、フェリペ・シュエドラーのマナウス郊外にあるレストラン・バンゼイロでの宴のため、シェフと食糧探しをしたりする。リーマンは、自然だけでも旅をする価値があると付け加えた。「アマゾン川は、あなたの考えるものとは違う。嫌悪と不安の感情を捨て、海のように大きな川や、蚊を撃退する栄養豊富な川、泳げる川、青い川、黒い川、赤い川でできた万華鏡に焦点を当ててみてください。そういえば、オリンピックもありますね」
クロアチア・ダルマチア海岸
アドベンチャースミス社販売・業務部長クリス・ハーターは、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の人気は、このアドリア海の商業地を観光客のレーダーによりしっかりと結び付けた。ドゥブロヴニクは物語の架空の首都「キングスランディング」のロケ地として使われ、スプリットも登場する。アドベンチャースミス社は、38人乗りの真新しいインフィニティ号に乗船してのダルマチア海岸クルーズを新たに一つ追加したばかりだ。また、プライベートチャーターも思う存分楽しめる。
バリ・バトゥール山
3月9日に珍しい日食が起きると予測されており、ブラック・トマト社はそれを生で観測するよう、また、宿泊施設が満員になる恐れがあるため、すぐに予約をするよう勧めている。メインイベントの前に、バリの水田や寺院を見るために火山をハイキングしたり、オーストラリア国立海洋博物館の研究員ジェフリー・メレフォントとクルーズしながら観測できるコースもある。
キューバ
キューバについてはたくさんのことを聞いてきたことでしょう。しかし、今春は、米国からの大型クルーズ船が5月に到着する前に訪れる最後のチャンス。 GeoEx社は、キューバ発の小グループ旅行の一つに多種スポーツが体験できる旅行を追加する予定だ。同社は個人旅行を手配することのできる数少ない旅行会社の一つである。