キャリアを前進させるための大胆な一歩は、「準備ができた」と感じることから始まるわけではないし、予定通りに訪れることもめったにない。私自身のキャリアチェンジも、間違いなく大胆な一歩だったが、実に偶然の巡り合わせから生まれた。当時、私は大学で働いており、次期学部長を探すために協力を依頼するエグゼクティブサーチ会社を選定する任務を任されていた。私たちは5社を検討し、そのうち3社とZoomで面談し、最終的に1社をキャンパスに招いて最終プレゼンテーションを行ってもらうことにした。
選ばれたサーチ会社がキャンパスに到着したとき、私はその会社のマネージングディレクターに歩み寄り、自己紹介をした。会話が始まってわずか5分後、彼は私の目を見て「あなたを採用します!」と言った。そしてすぐに言い直すように、「高等教育の仕事を終えたら、ですが」と付け加えた。
その宣言は私の前に分岐点をつくり、学術界を離れることを真剣に考えるきっかけとなった。テニュア(終身在職権)を持っていたことを考えれば、それは大きなキャリアチェンジだった。最初は、自分に準備ができているのかと考えた。だがその後、「準備ができている」という状態は幻想だと気づいた。私に必要だったのは、準備ができていることではない。一歩を踏み出す勇気だった。
恐れに基づくためらいと、知恵に基づくためらい:キャリアチェンジが教えてくれたこと
学術界を離れたとき、私はテニュア、6桁の年収、そして何十年にもわたって積み上げてきた実績を手放そうとしていた。必ずしも「準備ができている」と感じていたわけではない。だが、備えはできていると感じていた。私は、この転身について見解を聞かせてくれる複数の人に話を聞いた。履歴書を更新し、新しいプロ用のヘッドショットを撮影し、ファイナンシャルアドバイザーと会って、想定されるシナリオや資金的な余裕の計画について話し合い、推薦者を確保し、新しいビジネススーツを購入した。そして期限を決めた。この目標を達成したい期日を設定し、それを守った。
キャリアチェンジをして以来、私は多くのエグゼクティブがそれぞれの大胆な一歩を踏み出すのを支援してきた。その中で、恐れに基づくためらいと、知恵に基づくためらいを区別することが不可欠だとわかった。恐れに基づくためらいは、「失敗したらどうしよう」という言葉として表れる。それは恐怖に根差している。知恵に基づくためらいは、「この移行を経済的に可能にするには、もう少し貯蓄が必要だ」という言葉として表れる。それは現実的な事情に根差し、備えの必要性を重視している。恐れが知恵を装い、身動きできない状態にとどまる言い訳にならないようにすべきだ。
実務面、身体面、感情面で見た準備とは
備えには多くの側面がある。まず、自分が踏み出そうとしている具体的な一歩に何が必要かを考え、それを書き出すことから始める。調べる。似たような一歩を踏み出した人に話を聞く。そして、それを現実のものにするためのチェックリストを作る。実務的に言えば、何が必要なのか。新しいスキルか。人脈か。学歴や資格か。すべてを書き出し、それをどう手に入れるかを考え、期限を設定する。
同じくらい重要なのが、身体面と感情面の準備である。すでにぎりぎりの状態で踏みとどまっており、疲れ切って燃え尽き寸前なら、大胆な一歩に伴う追加の負担は、今は重すぎるかもしれない。酸素マスクの原則が当てはまる。これから先に向けたエネルギーが必要なのだ。先延ばしは失敗を意味しない。
最後に、感情面での準備について考えたい。大胆な一歩は孤独を伴うことがある。新しい場所に移る場合や、より高いリーダーシップの段階に進む場合はなおさらだ。それを孤独と捉えるのではなく、成長と一人の時間として受け止めるマインドセットを持つことが重要である。
準備と勇気が交わるとき
キャリアチェンジであれ、それ以外のことであれ、大胆な一歩に向けて時間をかけて準備することは、大胆な行動を思いとどまるためではない。長期的な成功につながる、計算された思慮深い一歩を踏み出しているかを確かめるためである。時には、適切に準備する時間を取ることこそが、最も大胆な行動になる。重要なのは、最初の一歩を踏み出すことだ。



