ビジネスの世界は常に、次に何が来るかに焦点を当ててきた。数年おきに新たなテクノロジーやビジネスモデルが登場し、私たちの働き方を変えることを約束する。現在、取締役会の議論や投資資金、ニュースの見出しを独占しているのは人工知能(AI)だ。
その一方で、何百万人もの人々が毎日、明らかに地味で刺激の少ないビジネスの現場へと仕事に向かっている。私はたまたま、そうしたビジネスの1つを率いている。
商業用清掃業が華やかな仕事と見なされることは、おそらく今後もないだろう。しかし、不可欠なサービス業(エッセンシャル・サービス)に長年携わってきたことで、私は企業のレジリエンス(回復力・強靭さ)を支える要素について、異なる視点を持つようになった。不確実な市場は、人々が「面白い」と感じるビジネスと、人々が「必要とする」ビジネスを峻別するものだ。
現在の経済環境は、この区別の重要性を浮き彫りにしている。全米独立企業連盟(NFIB)の報告によると、6月の「不確実性指数」は89に達し、過去平均の68を大きく上回った。また、2026年6月のマッキンゼーの調査でも、経営幹部の意見は自国の景気が今後6カ月間で改善するか悪化するかについて、ほぼ真っ二つに分かれている。
次に何が起こるかを正確に見通せる者は誰もいない。そして、まさにそのような時期にこそ、地味なビジネスががぜん魅力的なものになるのだ。
必要性には異なる価値がある
私は2020年、このダイナミクスが劇的に展開するのを目の当たりにした。商業用清掃は伝統的に、誰も気に留めないときにこそ最も機能していると言えるサービスの一つだった。翌朝、従業員が出社すると、ゴミ箱は空になり、トイレは消毒され、床はピカピカになっている。その作業の大半は、クライアントの目に見えないところで行われていた。
新型コロナウイルスは、それをほぼ一夜にして変えた。突然、顧客は空間がどのように清掃されているのか、何が消毒されているのか、チームが高接触エリアをどの頻度で対応しているのか、どのような手順に従っているのかを知りたがるようになった。清掃業務が突然華やかになったわけではない。その重要性が、決して無視できないものになったのだ。
この時期は、私が不可欠なサービスビジネスについてどう考えるかを方向付ける契機となった。その強みは、景気後退に強い(リセッションプルーフである)という点ではない。そのようなビジネスは存在しないからだ。クライアントは清掃面積を縮小し、契約を再交渉し、コストを精査することができる。サービスが必要不可欠だからといって、深刻な労働力不足や賃金上昇の圧力が消えてなくなるわけではない。強みはもっとシンプルだ。「根本的な課題は依然として解決される必要がある」という点にある。
米労働統計局は、清掃員およびビル清掃員について、2034年まで毎年30万件超の求人が生じると予測しており、清潔で健康的な空間への継続的なニーズが、この仕事への需要を支えると明記している。
継続的な需要が長期的な思考の余地を生む
不可欠なサービスは、不確実な時期に価値を持つもう一つの特徴、すなわち「継続的な顧客関係」の恩恵を受けることが多い。
継続的な需要があるからといって、継続的な収益が保証されるわけではない。依然として顧客を維持し、従業員が職務を全うし、競合他社が常に隙をうかがっている状況に変わりはない。しかし、繰り返し発生するニーズを中心に構築されたビジネスは、消費者の裁量的な購入に依存するビジネスとは異なる戦略的ポジションからスタートすることができる。
これにより、リーダーは目先の取引にとどまらない思考の余地を持つことができる。
私は、優秀な経営者がその安定性を活かして、困難な時期にあってもトレーニングやテクノロジー、顧客関係への投資を維持する姿を見てきた。彼らの直感は、単に手元にあるものを守ることだけではなかった。彼らはこの混乱を利用して、状況が改善したときに必要となる体制を強化したのだ。
私が学んだのは、レジリエンスとは危機が始まってから生み出されるものではめったにないということだ。そのほとんどは、平時にこそ構築されている。
競争優位性は通常、実行力にある
地味なビジネスには、もう一つの教訓が隠されている。「新奇さ」の賞味期限は、「実行力」よりも短いということだ。
クライアントは最初、価格やテクノロジー、あるいは魅力的な売り込みを理由にサービスプロバイダーを選ぶかもしれない。しかし、彼らがその後も契約を続けるのは、約束されたことを確実に実行してくれるからだ。これは当たり前すぎるほど当たり前のことに聞こえる。だが、何百、何千もの顧客関係においてそれを徹底して実行することは、決して容易なことではない。
不可欠なサービスを提供する企業は、日々その現実の中で生きている。サービスの不履行や人員の配置ミス、あるいはコミュニケーションの行き違いは、クライアントにすぐに見破られてしまう。業務規律(オペレーショナル・ディシプリン)は、単なる社内管理の概念ではなく、それ自体が提供される「商品」なのだ。
AIを含むテクノロジーは、この区別をさらに興味深いものにしている。サービス業界のリーダーにとって、「AIでいかに人間を置き換えるか」という問いは有用ではない。より良い問いは、「代替不可能な人間の仕事を、テクノロジーによっていかに一貫性、効率性、説明責任を備えたものにできるか」である。
テクノロジーは、スケジューリング、品質保証、クライアントとのコミュニケーション、そして要員計画を向上させることができる。しかし、実際の現場での作業と人間の説明責任が重要であることに変わりはない。
「地味さ」は欠点ではなく特徴である
ビジネスリーダーは、イノベーションの追求をやめるべきではない。不可欠なサービスを提供する企業も、決して立ち止まるわけにはいかない。誤りは、イノベーションそのものが永続性を生み出すと決めつけてしまうことだ。
不確実な市場は、その違いを白日の下にさらす。真の「必要性」に基づいて構築されたビジネスも、競争し、適応し、実行しなければならないことに変わりはないが、彼らには非常に価値のある強みがある。それは、「決してなくならないクライアントの課題」が目の前にあることだ。
サービス業界に長年身を置いてきたことで、私はこの強みを実感するようになった。「信頼性」がニュースの見出しを飾ることはめったにない。「一貫性」がカンファレンスの基調講演のテーマになることもほとんどない。「業務規律」をエキサイティングに見せることは極めて難しい。しかし、これら3つが失われたとき、クライアントは即座にその存在に気づくのだ。
次に訪れる大きなビジネスチャンスは、世界がこれまでに見たこともないような斬新なものではないかもしれない。それは、それなしでは世界が機能しなくなるような、不可欠なものかもしれないのだ。



