経営・戦略

2026.09.28 11:45

創業150年の老舗企業「開化堂」が大事にする「『ええもん作れよ』文化」の真意とは(前編)

中央が開化堂代表取締役社長の八木隆裕、カルチャーイン・カルチャーアウトを提唱する大森充(左)、花井優太(右)

中央が開化堂代表取締役社長の八木隆裕、カルチャーイン・カルチャーアウトを提唱する大森充(左)、花井優太(右)

これからのヒットするモノ、コト、サービス、さらには企業経営には、企業のカルチャーを起点とした「カルチャーイン・カルチャーアウト」のプロセスが必要である。日本総合研究所で経営コンサルタントの大森充、クリエイティブディレクター兼編集者の花井優太のふたりが提唱する仮説だ。市場との固定密着が必要ななか、市場や消費者の声を起点とするマーケットイン、つくり手目線のプロダクトアウトとも異なる、新たなアプローチが重要になるという。彼らの仮説について、その象徴的な企業へ取材を行う企画の第二弾は、手作り茶筒の老舗、京都「開化堂」代表取締役社長の八木隆裕へのインタビューだ。

同社は明治8年(1875年)創業で、創業150周年を迎えた、日本で一番古い歴史をもつ手作り茶筒の老舗である。八木社長は6代目当主として、創業当時よりつくり続けてきた茶筒の技術習得にはげむかたわら、BtoBからBtoCへと客層を変化させ、海外市場にも積極的に進出。2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の若手後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成し、国内外で伝統工芸を広める活動を行ってきた。16年にはカフェ「Kaikado Café」をオープン。さらに、サカナクション・山口一郎とのコラボレーションで、職人技で緑青の色彩を表現した特別な「青刻」缶「冥刻」缶や、底面にコラボロゴが刻印された美しい真鍮製のジュエリーケースを展開するなど、数々の新たな革新的な取り組みを続けている。開化堂のこれまでと現在について、「カルチャーイン・カルチャーアウト」の視点から紐解いていく。


大森充(以下、大森):なぜ、今、「カルチャーイン・カルチャーアウト」という仮説を提唱しているのか、から少しお話をさせていただきます。私は、以前スタートアップ経営をしていた経験があるのですが、当時は10年後の当たり前を未来からもってきて企業価値を最大化しているモデルで経営をしてきました。一方、そのようなビジネスの多くは潮流に終わり、長く続かないおそれがあります。10年後の未来をもってきて、100年続くようなビジネスに興味があり、その秘訣をいわゆる老舗企業がもっているのではないか、と思っています。とりわけ日本には、老舗企業が多い。では、「なぜ、100年続いたのか」という観点でとらえなおすと、ヒット商品やヒットサービスを運よくつくれたとしても、なかなか100年は続かないわけです。であれば、何か違う概念があるのではないか、と。

経営学者のピーター・ドラッカーは、意訳をすると「経営はマーケティングとイノベーションである」と言っています。花井優太さんが以前、「市場との密着」という言葉を使っていましたが、「市場と固定的に密着するのがブランディング」だとすると、「今、目の前にある市場に対して変動的に密着するのがマーケティング」。そして、「未来の市場に密着するのがイノベーション」ではないか、と思っています。

そう考えると、100年続く企業は、市場に対する密着度を考慮しながらマーケティング、ブランディング、イノベーションを繰り返し、商品やサービスを創出した結果、100年続いているのではないか。市場との密着具合に100年続く秘訣があるのであれば、マーケットイン、プロダクトアウトとは言わずに、それはもう企業のカルチャーそのものを、アウトしたり、インしたりしている、と考えています。それが僕らが考える「カルチャーイン・カルチャーアウト」の仮説です。

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フォーブスジャパン編集部=文 井上陽子=写真

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