宇宙では人の遺伝子の働き(発現)が変化して、免疫系の乱れや筋肉量の低下など、老化に似た変化を体に引き起こすことが知られている。現在は栄養管理と運動による対策が中心で、遺伝子の発現変化を元に戻す根本的な治療法の研究はまだ道半ばだ。しかしそこに大きな進展があった。宇宙生活で変化した遺伝子発現を戻す働きがある8つの物質の特定に成功したのだ。
2040年までに人が宇宙で暮らすときに必要となる技術をそろえるというミッションのもと、中核技術の研究開発や投資育成などを行うスペースシードホールディングスは、岐阜大学と共同で、3つの公開データベースを用いて、宇宙飛行にともなう血液中の遺伝子発現の変化を逆方向に変化させる可能性のある海藻由来成分の探索を行った。

使用したのは、海藻に含まれる代謝物の情報を集めた「SWMD」(海藻代謝産物データベース)、化学物質が遺伝子発現に与える影響をまとめた巨大なデータベース「CIGS」、そして、スペースシャトルで10〜13日間宇宙に滞在した男女6人の、打ち上げ前と帰還後の血液をもとに個々の遺伝子発現データを集めた「NASA OSD-53 / GEO GSE47126」。
SWMDでは1191件のレコードを対象とした。CIGSでは1万3221種の化合物について、3407遺伝子の発現データを使用。それらのデータを、NASA OSD-53 / GEO GSE47126で打ち上げ前と帰還後で有意な変化が見られた11の遺伝子と照合した。

この膨大なデータの組み合わせは天文学的な数になる。人力で照合を行うとしたら、どれだけ時間がかかるかわからない。それをAIが短時間にやってのけたというわけだ。その結果、アピゲニン、コレステロール、フコステロール、フコキサンチン、フィトール、プロトカテクアルデヒド、スチグマステロール、バニリンの8つの物質が候補として抽出された。

これですぐに薬やサプリが作れるわけではない。これから、実際の人の細胞での検証など、さまざまな実験や研究を慎重に重ねる必要がある。しかし、実験を始める前にわずか8つの候補に絞られたことは、研究の「有用な出発点になる」とスペースシードホールディングスの代表取締役、鈴木健吾氏は話している。
出典:スペースシードホールディングス スペースシードホールディングスと岐阜大学、宇宙飛行に伴う遺伝子発現の変化を逆転させる可能性のある海藻由来成分8物質を探索



