いま世界の宇宙業界で混乱が生じている。世界のペイロード(積載物)の約80%を軌道上に打ち上げているファルコン9ロケットと、米国において唯一の人員輸送手段であるクルードラゴン宇宙船が、スペースX首脳陣の意向によって、その運用が停止されようとしているのだ。
スペースXによるこの方針は、グウィン・ショットウェルCEOによって、すでに2024年11月には語られていた。超大型宇宙輸送機「スターシップ」の6回目の飛行テストが実施される直前に彼女は、「スペースXは今後数年の間に、ファルコン9とファルコンヘビーの打ち上げを、スターシップのミッションに徐々に置き換えていく」と述べ、「クルードラゴンによる有人ミッションも、人々が想像するよりも早く終了するだろう」と語った。ただし、「今後6年から8年は運用を続ける予定だ」と付け加えた。
しかし9月14日、パリで開催された「ワールド・スペース・ビジネス・ウィーク(WSBW)」の壇上で、宇宙業界の幹部たちは、「スペースXが2028年後半以降の相乗りミッションの予約受付を停止した」ことを明らかにし、現時点ではその打ち上げ枠を購入することが実質的に不可能であると述べた。その余波を受けて衛星運用会社では現在、その代替ロケットの予約をおさえる必要性に迫られている。一方でロケット運用業者に対しては、打ち上げ枠を探す衛星運用会社からの問い合わせが殺到している。
また現在、米国には人員輸送に使用できる有人宇宙船はクルードラゴンしかない。そのため、NASAをはじめとした西側諸国においては、クルードラゴンとそれを打ち上げるファルコン9が早期に退役すれば、ISS(国際宇宙ステーション)への人員輸送手段は、ボーイングの「スターライナー」だけが頼りとなる。ただし、2010年にNASAから選定を受けた同機は、いまだ運用できる状態になく、2024年の初の有人テスト飛行で重大インシデント(大事故につながる事案)を起こすなど、その運用開始時期は不透明な状態にある。
ただしスペースXは、ファルコン9とドラゴンの退役を、現時点では正式には発表していない。
ISSの運用延長が不可能になる可能性
9月18日、NASAはスペースXと新たな契約を結び、ISSへ乗員を輸送するためのクルードラゴン3機の運用を、総額9億4600万ドル(約1485億円・固定価格)で調達した。これはNASAの事業であるCCtCap(商業乗員輸送能力)の一環であり、Crew-15・16・17の3ミッションを対象としたものだ。
この契約に関するNASAのリリースには、「ミッション準備完了日は2027年と2028年であり、履行期間は2030年まで」とある。つまりスペースXは、2027~28年の間に、各ミッションの打ち上げ準備を整えると同時に、すべてを2030年までに実行する必要がある。



