複数の州にまたがる他の大規模組織と同じように、2020年、新型コロナウイルス感染症の出現とリモートワークへの急激な移行により、Inperiumは2棟の大きなオフィスビルを持て余し、資本をそこに縛られることになった。コロナ禍に入る前、当社は急成長の軌道にあり、多数の新たな関連組織を加えていた。オフィススペースは常に不足していた。ところが突然、私たちは未知の状況に直面し、Zoom会議の方法を理解し、安全なリモートワーク環境を整備する必要に迫られた。もちろん、世界中の経営幹部が同じ境遇にあった。仕事が自宅の中で行われるようになり、テクノロジーによって仕事から本当に離れることができなくなった従業員のワークライフバランスをどう支援するかなど、私たちは皆、新たで予期せぬ課題に直面した。多くの人が孤立感と闘った。経営幹部である私たちは、別の種類の孤立、すなわちチームからの孤立を感じていた。
他社と同様、Inperiumでもパンデミックによる困難から、一部の従業員が別の道を模索するようになった。パンデミックの急激な変化のなかで、私はリモートワークへの移行によって、あらゆる場所から人材を探せるようになり、無限のプールから代替となる優秀な人材を募ることができるとすぐに気づいた。物理的な拠点に伴う制約がなくなったことで、これまで以上に選択眼を持って人材を選べるようになった。
現在利用できるリモートプラットフォームは依然として理想的とは言えないが、大きく進歩してきたし、それを効率的に使う私たちの能力も向上してきた。パンデミックが落ち着き、ワクチン接種が可能になり、世界は対面の職場環境に戻っても安全だと徐々に認識するようになった。Inperiumでは、組織をさらに分散化させる案件がいっそう増えていたため、分散型を維持し続けることは理にかなっていた。3万平方フィートのビルを2棟所有するには、維持管理、害虫駆除、芝生管理、除雪、清掃スタッフ、税金など、実際にコストがかかる。人々が自宅に自分のオフィスを持つことを前提にし、全員を集める場合にも、もちろん相応のコストは発生する。しかし、それはビルを所有するコストの一部にすぎない。
迅速に動くという当社の考え方に従い、私たちは保有していた2つの不動産を売却した。現在も当社は100%リモートで運営しており、32州で400人を超える極めて優秀な幹部が活動している。これはパンデミック前には不可能だったことだ。トレードオフはあるのか。もちろんある。私たちはすぐに、分散化には多くの利点がある一方で、創造的思考を制限し、提携関係をより不安定にし、文化を変化させることを学んだ。リーダー同士の断絶を経験し始め、一貫したコミュニケーションに苦労し、縄張り争いにも悩まされた。距離と不慣れさは、そうした問題を生みやすい。離れていると、私たちは振る舞い方を忘れてしまう。平面的な画面では感情を読み取れない。場の空気を感じることもできない。相手の姿を自分のデスクに映し出すハードウェアやソフトウェアと同じように、その人物を扱い始めてしまうことすらある。
こうした懸念に対処するため、私たちは2023年にリーダーシップシリーズを開始し、90日ごとに上級リーダーを集めることを目指した。四半期に一度、40人をフィラデルフィアに飛ばし、丸1日の会議を行い、その後に夕食を共にした。それは約1年間、(「おおむね」と「苦労しながら」の両方の意味で)機能した。その12カ月の間に、当社の規模は3倍になった。チームの断絶はさらに進んだ。今や私たちは複数のタイムゾーンにまたがって事業を運営していた。そこで会合を60日ごとに変更し、一緒に過ごす時間も延ばし始めた。正式な会議が重要である一方で、食事や社交の場で生まれる議論や自発的な協働も、同じくらい重要であることを私たちはすぐに学んだ。綿密な分析と広範なフィードバックを経て、私たちは、離れている期間が32日を超えなければ、チームは最適なパフォーマンスを維持できると判断した。それに応じてスケジュールを調整し、現在はリーダーシップチームとして28日ごとに会合を開いている。6カ月ごとには、すべての関連組織のリーダーとそのナンバー2も参加させている。年末には、より大きなグループを、その配偶者やパートナーとともに集め、取締役会メンバーも加えて、年次会議と表彰式を開き、前年の成功を祝っている。
意味のある協働
Inperiumのタグラインは「協働によるイノベーション」である。リモート環境でも、協働を促し支える形で組織を設計しているため、極めて実質的な協働は日々行われている。しかし、それは互いに物理的に同じ場にいるとき、活性化され、加速する。円卓での開かれた対話では、対面の学びが指数関数的な速度で進む。そうした場の外にいるとき、私たちはイノベーションを小さくしてしまう。
だが、協働するチームという真の概念を支えるものは、ほかにもある。雑談の中で生まれる個人的で人間的なつながり、家族の成功や危うい出来事の報告、困難な課題についての共感、同僚やその大切な人々の個人的または職業上の成功を共に喜ぶことだ。私たちは、仲間の1人が何を経験しているのかを理解したときにつながりを見いだす。そして突然、リモートでの短い返答、遅れたメール、深夜の電話、留守番電話ににじむストレスに対して、新たな文脈を持つようになる。私たちが個人的に何を経験しているのかを認識することは、私たちを地に足の着いた状態にしてくれる。食事を共にし、人間らしい会話を交わすとき、効果的に協働する能力にとって不可欠な家族意識と一体感が生まれる。
説明責任の文化を促すのは、家族のような感覚、互いを思いやる感覚である。それは透明性のあるコミュニケーションの経路を開く。煩雑な階層構造を取り除く。あなたのオフィスが廊下の先にあろうと、国の反対側にあろうと、断絶は依然として存在する。そして、協働の文化を維持するために努力する必要がないと言えば、それは嘘になる。だが血縁の家族と同じように、私たちは互いに直接会う時間を楽しみにし、その限られた時間を貴重なものと捉え、最大限に生かしたいと考える。そして血縁の家族と同じように、長居しすぎるべきではないこともわきまえている。リモートワークと対面での協働の間にあるこの「ハイブリッド」を見いだすことは繊細なバランスを要するが、うまく管理すれば、大きな効率性を生み出す。



