今月、私はノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院で教鞭を執って21年目を迎える。これまで、非常に聡明で野心的、起業家精神にあふれた何千人もの学生と関わってきた。特に「価値観に基づくリーダーシップ」の授業では、20年にわたり、キャリアで卓越した成果を上げたいと願う次世代のリーダーたちと接してきた。近年ではそのなかで、世の中に変化をもたらしたいと志す学生も増えている。ただ、大きく変わった点が一つある。それは、世界が以前よりもはるかに困難な場所になり、価値観に基づくリーダーに求められるものが一層大きくなっていることだ。
ケロッグのシカゴ、マイアミ、香港の各キャンパスで、フルタイム、イブニング、エグゼクティブMBAプログラムの臨床教授を務めるなかで、私は学生との議論の内容がどれほど変わったかに驚かされている。特に次の6つの分野が、今日のリーダーが直面する課題の高まりと、価値観をもって応えるべき姿勢を象徴している。
1. 変化の連続体に対処する
過去20年間で、変化のスピードは劇的に加速した。その顕著な例が、前例のないペースで進化を遂げるAIであり、アンソロピック(Anthropic)のダリオ・アモデイCEOをはじめとするテクノロジー業界の内部からも警告の声が上がっている。すべてのリーダー、特に現代の課題とその将来的な影響を引き継ぐ世代にとって、いまは洞察力が求められる局面だ。
リーダーとしての出発点は、筆者が「変化の連続体」と呼ぶものの中で、自分がどこに位置しているかを見極めることだ。その一端にあるのは、変化に対する「恐れ」である。ある者にとっては変化にただ反応することだけであり、またある者にとっては変化を完全に避けようとすることを意味する。その連続体のもう一端にあるのは、変化を受け入れ、自らそれを作り出す能力だ。現在、そして未来のリーダーが変化に対処するには、自らの価値観にしっかりと根ざし、それに導かれながら行動を起こす勇気が必要となる。
2. 「懸念を抱く」段階から脱却する
世界大戦、経済恐慌、社会的不公正など、どの世代も変化、課題、危機に直面してきた。今日の問題は数が多く深刻で、人生を変えかねない結果をもたらす可能性がある。食料不足から自然災害まであらゆるものに影響を及ぼしている気候変動を考えてみてほしい。加えて、激化する地政学的対立、グローバルな不確実性、健康問題、そしてテクノロジーから経済政策までさまざまな要因で拡大している富の格差もある。
知識とリソースを持つリーダーは、自らが集中すべき分野を特定し、影響力を発揮することで、解決策の一部にならなければならない。リーダーシップと専門性を必要とする領域には事欠かない。私がMBA学生に助言するように、単に「映画を観る」のではなく、「映画のなかにいる」ことが重要だ。懸念を抱くだけでは十分ではない。リーダーは目にする世界的課題や問題に主体的に取り組む必要がある。
3. 分極化に橋を架け、共通の足場を見出す
わずか10年、15年前までは、異なる意見や対立する見解を持つ2人が、礼節を保って議論することは比較的容易だったように思われる。討論(ディベート)は対話を可能にし、たとえ最終的な合意に至らなくても相互理解を促した。しかし今日、多くの人々は自身の見解が反響し合う「エコーチェンバー(共鳴室)」の中に引きこもっており、この現象はソーシャルメディアのアルゴリズムによってさらに強化されている。自らの信条と真っ向から対立する意見を突きつけられることに強い精神的苦痛を感じる人々にとって、エコーチェンバーの中は居心地が良い場所なのだ。
だからこそ、リーダーをはじめとする人々が、自身の意見の枠組みを超え、他者の立場の背景に対する理解を深めるには、勇気と明確な意思が必要となる。学生や企業の経営幹部たちにも伝えているが、重要なのはバランスの取れた視点を養うことだ。結局のところ、ほとんどの課題は他者の誤りを証明することによってではなく、共通の足場の上で何らかの妥協点を見出すことによって解決されるのである。
4. ソーシャルメディアを遮断し、自己省察に耳を傾ける
私たち全員に等しく与えられている動かしがたい事実がある。それは、1週間に使える時間は168時間(24時間×7日間)ということだ。そのため、仕事、家族や友人との時間、健康やレクリエーション、マインドフルネスや精神活動、その他の優先事項にどのように時間を使うかについて、私たちはもっと意識的にならなければならない。しかし、現代における課題は、注意を散漫にする誘惑の多さ、特にソーシャルメディアの影響力の強さだ。
一般的に、人々は1日に平均2時間半をソーシャルメディアに費やしており、若い世代ではその2倍に達することも少なくない。すべてのソーシャルメディアを避けるべきだと言っているのではなく、これらのプラットフォームに費やす時間を制限すべきだということだ。私たちは皆、デバイスの電源を切り、自己省察のための時間を確保する必要がある。それは、自分にとって何が最も重要なのか、なぜそれを重視するのか、および自分がどのように人生を歩んでいるのかを深く見つめ直すことだ。忙しく、プレッシャーが大きいほど、自己省察は不可欠なものとなる。価値観は、特に昨今増えつつある不安、恐れ、焦燥感、プレッシャー、ストレスに直面したとき、自らのリーダーシップをブレさせないための軸となる。
5. コミュニケーションを強化し、混乱を制御する
筆者がMBAの学生たちに伝えているように、「変化 + 効果的なコミュニケーション = 成功」である。効果的なコミュニケーションがなければ、「変化 + 不確実性 = 混乱」となってしまう。だからこそ、明確かつ頻繁なコミュニケーションの重要性が極めて高まっているのだ。
実際、ケロッグの学生を対象にするかリーダーのグループを対象にするかを問わず、講演を依頼される際に最も要望が多いテーマはコミュニケーションである。今日、変化の速さ、増大する不確実性、緊迫感にとらわれるのはあまりにも容易だ。リーダーは、適切な人材が配置されていれば、それほどコミュニケーションを取らなくても人々は「わかってくれる」と自分に言い聞かせがちである。そのようなときこそ、私たちは思い出す必要がある。価値観に基づくリーダーシップとは、他者に良い影響を与えることである、と。この認識により、組織のあらゆる階層の人々がメッセージを聞き、伝えられている内容を理解することの重要性が際立つ。
6. 価値観を受け入れ、信頼を築く
20年前と比較して、今日の世界は信頼関係が極めて希薄な場所になっている。各種調査によると、人々は他者、政府や制度、機関、そしてAIなどのテクノロジーに対して抱く信頼感を低下させている。こうした不信感をさらに助長しているのが、嘘、いじめ、誹謗中傷、そして一部の政治家や政治候補者などに見られるセクシャルハラスメントや不適切な行為といった、公平性の感覚に違反し、価値観に反する行動や振る舞いである。多くの犠牲のもとに成り立つ一部の者の強欲さは、「そもそも価値観を持って主導することなど必要なのか」という、価値観そのものの意義に対する人々の信頼を揺るがし続けている。一見そうではないように思える状況があろうとも、価値観は極めて重要だ。それは私たちが立脚する土台であり、決して妥協してはならないものである。
MBAの学生たちに教え始めて21年目を迎えるにあたり、世界は教え始めた当時とは大きく異なる場所になった。しかし、何があっても変わらないのは、自らの価値観を知り、それを抱き続けることの重要性だ。これこそが、最も重要であり続ける不変の教訓である。



