アンソロピックのIPOは11月へ延期、米国の新規上場日程にも影響
アンソロピックは2026年6月1日に非公開で目論見書草案を提出して以降、IPO準備を進めてきた。上場目標は当初9月だったが、まず10月中旬へずれた。ウォール・ストリート・ジャーナルは9月18日、現在の目標は11月で、早くても10月下旬になると報じた。OpenAIがAIモデルGPT-6 Astraを公開した後に、アンソロピックが第3四半期の業績を示せるようにするためだ。
アンソロピックはナスダックを上場先に選び、報道では約2兆ドル(約316兆円)の企業価値を目指し、最大1000億ドル(約15兆8000億円)を調達する案が浮上している。実現すれば、2026年6月に860億ドル(約13兆5810億円)を調達した宇宙開発企業スペースXを上回り、史上最大のIPOとなる。
アンソロピックの事業自体に疑問があるわけではない。ニューヨーク・タイムズは9月18日、アンソロピックの年換算売上高が2026年中に1000億ドル(約15兆8000億円)を超えると報じた。
アンソロピックの大型IPOを待つ状況は、米国の新規上場市場にも表れ始めている。ブルームバーグは9月22日、米国の原子力関連企業Holtec Nuclearと、住宅保険を扱うBamboo Insuranceが、市況を理由に数日違いでIPOを延期したと報じた。米国の祝日レーバーデーだった9月7日以降に上場した企業は3社だけだ。引受金融機関はアンソロピックのIPOに備えて上場日程を空けており、新規上場市場全体がアンソロピックのIPOを待っている。
アンソロピック上場前ファンドの手数料と価格の上乗せリスク
米国の個人投資家がアンソロピックの上場前に投資する手段として、ブルームバーグは3本のファンドを取り上げた。
・未公開の高成長技術企業などへ投資するFundrise Innovation Fundは、年1.85%の手数料を取り、資産の20%超をアンソロピック、10~20%をOpenAIへ投資している。
・未公開株と上場株の両方へ投資するARK Venture Fundは、2.9%の手数料を取り、資産の約4%をアンソロピック、約5%をOpenAIへ投資している。
・未公開企業を中心に投資し、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場するRobinhood Ventures Fund I(RVI)の手数料は、ブルームバーグの計算で3.13%に上る。2026年6月30日時点の運用ページにアンソロピックは載っていない。最新の保有内訳では、資産の3分の1近くを現金が占める。
RVIではスペースX上場後に約90%の価格上乗せが消えた
RVIは、未公開株への投資機会に付いた価格の上乗せが消える例を示した。RVIは2026年3月に1口25ドルで上場し、上場商品を通じてスペースXに投資できる唯一の手段だった5月下旬には約57ドルまで上昇した。1口約57ドルだった時点の市場価格は、RVIが保有する資産の1口当たり価値を約90%上回っていた。
スペースXが上場した後、RVIは27ドル近辺で取引されている。5月にRVIを買った投資家は、ファンドが保有する資産1ドル分に対して2ドル近い価格を支払っていたことになる。上場商品としてスペースXに投資できる手段がRVIしかないという希少性が消えると、資産価値に対する上乗せ分も消えた。
つまり、投資家が高く評価していたのは、上場前の未公開株へ投資できるファンドという仕組みそのものだった。投資先企業が上場すれば、未公開株へ投資できるというファンドの希少性は消え、ファンドという仕組みには手数料負担だけが残る。


