1つの扉が閉まれば、別の扉が開く――。欧州市場への扉を閉ざされたロシアにとって、かつてソビエト連邦を構成していた同盟国や、同じく国際社会から疎外された国の扉が開かれる。今回は北朝鮮だ。
共産主義国家である北朝鮮は、ソビエト占領下の1948年に建国された、ソ連の指導者ヨシフ・スターリンの「作品」とも言える国だ。その2年後、中国建国の父とされる毛沢東の朝鮮戦争への介入により、北朝鮮は崩壊の危機から救われたが、スターリンと毛沢東はいずれも20世紀最悪の独裁者と言われる。北朝鮮の事実上の「祖父」に当たるのは、現指導者である金正恩朝鮮労働党総書記の祖父で、独裁的な支配体制の創始者でもある金日成だ。
式典用のトラックの隊列が7日、ロシアと北朝鮮を結ぶ初の道路橋である「ヤコフ・ノビチェンコ橋」を渡った。1946年に金日成を暗殺の危機から救ったとされるソ連の将校にちなんで名付けられたこの2車線の道路橋は、ロシア極東ハサンと北朝鮮北東部の経済特区、羅先(ラソン)を結ぶ。ロシア政府によると、将来的には1日当たり約300台の車両と約2300人の通行が可能になると見込まれている。橋自体の規模は小さく、各方向1車線の道路では、両国を経済的苦境から救うことはできないだろう。この橋の重要性は、むしろ政治的メッセージにある。
数十年にわたり、国際社会から「のけ者」にされ、「隠者の王国」と呼ばれる北朝鮮は、中国とソ連、そして後のロシアにとって、いら立たしい存在とまではいかずとも、厄介な悩みの種だった。核開発への執念や、支配層である金一族の残虐かつ奇怪な振る舞いにより、北朝鮮は国際的な嘲笑の的となってきた。ソ連が崩壊すると、中国は隣国の北朝鮮を支援し、安全保障を担う主要な後ろ盾となった。しかし現在、ウクライナ侵攻でロシアが窮地に立たされ、中国が距離を置く中、北朝鮮は再びロシア大統領府(クレムリン)の寵愛(ちょうあい)を取り戻しつつある。それも、中国の利益を犠牲にした形で、ロシアが接近しているのだ。
ウクライナ侵攻で深まるロシアと北朝鮮の関係
ノビチェンコ橋が協議段階から現実のものとなるまでには数年を要した。建設は2025年3月に正式に開始され、開通したのは約18カ月後のことだった。これは、ロシアが当初目標としていた6月中旬から数カ月遅れの開通だった。ロシア側の国境施設の建設事業は、予算超過の典型例と言えるだろう。ハサン検問所の建設予算は、2025年初頭時点では約1億ドル(約160億円)と見積もられていた。だが、北朝鮮を専門とする米ニュースサイト「NKニュース」が1日に報じた新たな調達記録によると、総工費は1億8300万ドル(約290億円)に達し、当初の予算の2倍近くに膨れ上がっていた。巨額の資金が一体どこへ消えたのか、それを知るのは、不透明なロシアの予算策定を司る神々だけだろう。



