経営・戦略

2026.09.23 21:07

業務を再設計する前に、本当にスピードを低下させている原因を特定せよ

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業務を再設計する前に、本当にスピードを低下させている原因を特定せよ

ある経営チームが大規模な業務再設計を完了した。役割はより明確になり、報告ラインは変更され、意思決定権限も更新された。新しいプラットフォームが稼働し、業務を迅速化するためにAIが導入されたケースもある。

それにもかかわらず、業務の進みは依然として遅く感じられる。

意思決定は滞り、従業員は複数のシステム間を行き来する。会議は増え、チームはすでに他の場所に存在する情報を一から作り直す。ある場所では業務がスピードアップしている一方で、別の場所には業務が山積みになる。

このような事態が発生したとき、リーダーは「再設計が不十分だったのではないか」と考えがちである。

だが、それは誤った結論かもしれない。

組織は、業務のスピードを本当に低下させていた原因を変えることなく、別の重要な何かを変更してしまった可能性がある。

ビジネスの誤った部分を再設計することは、真の問題を未解決のまま放置し、時間や資金、リーダーの集中力を浪費することにつながる。

目に見える問題が、真の問題とは限らない

経営陣は、観察可能な事象に基づいて意思決定を下さなければならない。

意思決定が遅ければ、権限に問題があるように見えるかもしれない。従業員が過度の負担を抱えていれば、リソース(処理能力)に問題があるように見えるかもしれない。カレンダーが会議で埋まっていれば、コミュニケーションに問題があるように見えるかもしれない。AIがレビューの未処理案件(バックログ)を生み出していれば、レビューを担当するチームに問題があるように見えるかもしれない。

しかし、目に見える摩擦(フリクション)は、その原因が何であるかまでは教えてくれない。

フレデリック・モージェソンとスティーブン・ハンフリーによるワークデザインに関する研究は、その理由を説明するのに役立つ。彼らの「ワークデザイン質問票(WDQ:Work Design Questionnaire)」は、243の異なる職種に就く540人を対象に検証されたもので、仕事をタスク、知識、社会的特徴、文脈的特徴に分類している。仕事そのものには複数の次元が存在するのだ(Work Design)。

このことは、次のシンプルな指摘が極めて重要であることを示している。

実行段階における摩擦は、組織の「どこが痛むのか」を教えてくれるが、必ずしも「なぜ痛むのか」を教えてくれるとは限らない。

リーダーは「何を修正すべきか」とすぐに問いかけるのではなく、まず「何がこの原因になっている可能性があるか」を自問すべきである。

「脳内」の負担が大きすぎるために困難になる業務

摩擦が生じる要因の1つとして、認知を伴う業務の設計方法が挙げられる。

エヴァン・リスコとサム・ギルバートは、タスクの情報処理要求を変化させ、認知的な負担を軽減するために物理的な行動を取ることを「認知のオフローディング(外部化)」と呼んでいる。彼らのレビューでは、リマインダーから、思考を補助するために周囲の環境を活用するその他の方法まで、さまざまな事例が紹介されている(Discovery)。

経営陣にとっての教訓は、「難しい思考を仕事から排除すべきだ」ということではない。複雑な業務は、今後も複雑なままである。

より適切な問いは、次のようなものである。

「業務システムが確実に肩代わりできるはずの記憶、検索、再構築、あるいは頭の中での情報の結びつけ作業を、どれだけ従業員に強いてしまっているだろうか」

従業員が、ある決定が下された理由、次のステップの担当者、どのドキュメントが最新版か、前回の会議から何が変更されたか、顧客の問題がどの段階にあるか、あるいはどの依存関係がプロジェクトを遅らせる可能性があるかを、どれほど頻繁に思い出し、つなぎ合わせなければならないかを考えてみてほしい。

従業員がこうした背景情報を繰り返し構築し直さなければならないとき、問題は「集中力の欠如」や「過負荷」のように見えるかもしれない。しかし、その負担の一部は、コンテキストを要する仕事やワークフローの設計方法に起因している可能性がある。

だからといって、別のダッシュボードやAIアシスタント、コラボレーションツールを導入すれば解決するというわけではない。新たなツールは、検索すべき新たな場所をまた1つ増やすだけになりかねない。

認知的な要求は可能性のある原因の1つだが、それを安易にデフォルトの診断結果とすべきではない。

組織が業務を十分に速く処理できないケース

別の説明もある。

業務の不確実性が高まり、チームをまたぐ連携が増えるにつれ、組織は業務を継続させるために、情報を処理し、意思決定を調整するスピードを十分に高めなければならなくなる。

ジェイ・ガルブレイスは何年も前にこの関連性を指摘していた。彼の「組織設計における情報処理アプローチ」は、なぜタスクの不確実性が組織の形態に影響を与えるのか、そして異なる設計アプローチが組織の対応をどのように支援できるのかを検証したものである(Informs)。

経営陣が整理しておくべき3つの条件がある。

  • 不確実性(Uncertainty):十分な情報が得られていない。
  • 曖昧さ(Ambiguity):情報は持っているが、人によって解釈が異なる。
  • 相互依存性(Interdependence):他者の業務が進まない限り、自分の業務を進めることができない。

これらの条件は、経営陣の視点からは似たように見えるかもしれない。しかし、求められる対応は大きく異なる場合がある。

情報が不足しているときは、より多くのデータが役に立つだろう。だが、その情報が意味するものについて人々の意見が一致していない場合、データを増やしてもほとんど意味がない。会議を削減すれば無駄な時間を減らせるかもしれないが、密接に連携した業務が必要とする調整の機会まで失われてしまう恐れもある。

目指すべきは、単にコミュニケーションの量を増やすことではない。その業務が実際に必要としている情報と調整の形を実現することである。

ボトルネックは実在しても、それが独立した問題とは限らない

ここから、原因特定(診断)はより困難になる。

例えば、役員による承認手続きが、ある事業部門の業務を遅らせているとする。

承認待ちの列(キュー)は現実に存在し、業務は滞っている。明白な解決策は、より多くの権限を委譲することに見える。

だが、なぜ従業員はこれほど多くの意思決定を上申(エスカレーション)しているのだろうか。

もしかすると、意思決定に必要な情報が不足しているのかもしれない。専門知識に偏りがあるのかもしれない。ミスを厳しく罰するインセンティブ制度のせいかもしれない。リーダーは権限委譲を望むと口では言いながら、日常的に決定を覆しているのかもしれない。あるいは、主体的に関わる(オーナーシップを持つ)よりも、上申する方が安全だと感じさせる非公式な暗黙のルールが存在するのかもしれない。

その場合、権限は問題の一部にすぎず、問題の全体像ではない。

診断の精度が、再設計の成否を決める

この区別を理解することで、リーダーの再設計に対する考え方は変わる。

最も目立つ制約に手を付ける前に、次のように問いかけてみてほしい。

「この問題だけを変更し、それ以外のすべての環境がそのままだった場合、ワークフロー全体は実質的に改善されるだろうか」

もし1つの問題が支配的であり、比較的独立して変更可能であるならば、ピンポイントの介入を行うことが合理的な第一歩となる。

もし、目に見える問題が情報、スキル、インセンティブ、テクノロジー、あるいはその他の条件に深く依存している場合、それらの関連する要素もあわせて変更すべきだという根拠が強くなる。

これこそが、再設計の規模よりも原因の特定が重要である理由である。

AIの導入がこの問題を浮き彫りにする

局所的な改善とシステム全体の改善が同じではない理由を示す上で、AIは有用な事例となる。

人間とAIが協働した際のパフォーマンスに関する2024年の系統的レビューとメタ分析では、106の実験研究と370の効果量が検証された。平均すると、人間とAIを組み合わせたパフォーマンスは、優秀な側が単独で作業した場合を下回った。また、結果はタスクによっても異なり、意思決定タスクでは相乗効果(シナジー)の低下が見られた一方で、コンテンツ制作タスクではより大きな向上が確認された(Nature Human Behavior)。

これは、人間とAIの協働が失敗に終わることを意味するわけではない。構成(コンフィギュレーション)が重要であることを意味している。

AIによって、分析結果を作成するのに必要な時間が削減されたと仮定する。

これにより、組織ははるかに多くの分析レポートを作成できるようになる。しかし、依然として誰かがそれをレビューし、ファクトチェックを行い、推奨事項を判断し、例外に対応し、結果を伴う決定について説明しなければならない。

分析自体はスピードアップした。

だが、意思決定はスピードアップしていないかもしれない。

だからこそ、生産性が大幅に向上した後に、リーダーは別の問いを投げかけるべきだと私は考えている。

「業務、待ち行列、リスク、判断、そして説明責任は、一体どこへ移動したのだろうか」

AIは1つの問題を解決する一方で、他の場所に負荷をシフトさせている可能性がある。AIが加速させたタスクだけを測定していては、ワークフローの他の部分で何が起きているかを見落としてしまう。

原因が不明なときは、診断結果を「仮説」として扱う

経営陣が完璧な情報を手に入れていることは極めて稀である。

遅い意思決定プロセスは、権限、情報、専門知識、インセンティブ、調整、あるいはこれらの組み合わせに起因している可能性がある。

最初に思い浮かんだ説明を「事実」として扱ってしまうと、多大なコストのかかる業務再設計へと突き進むことになりかねない。

より規律あるアプローチは、その診断結果を「仮説」として扱うことである。

例えば、集権的な承認プロセスが製品に関する意思決定を遅らせていると考えているとする。組織全体を再設計する代わりに、定義された特定の意思決定領域でその仮説を検証してみるのだ。

限定されたカテゴリーの意思決定権限をある1つのチームに委譲し、それによってどのような変化が起こるか、あらかじめ予測を立てておく。

もし権限が主な制限要因であれば、意思決定にかかる時間は短縮されるはずである。

もし情報不足がより深刻な問題であれば、権限委譲だけではほとんど改善が見られないか、あるいはミスや手戻り(やり直し)が増える可能性がある。

複数の条件が相互に作用している場合、得られる恩恵は小さく、あるいは一時的なものにとどまるかもしれない。

このテストによって、2つの価値が得られる。すなわち、「パフォーマンスとしての結果」と「学習としての結果」である。

パフォーマンスの改善に至らなかったテストであっても、当初の診断が不完全であった可能性を示してくれるという点で非常に有用である。

しかし、このアプローチには限界もある。組織のあらゆる決定を実験にしてよいわけではない。人員削減、報酬の変更、安全性に関わる極めて重要な業務、規制プロセス、および大きな影響を及ぼすAIの意思決定などは、取り返しのつかない、あるいは差し戻しが極めて困難な結果をもたらす可能性がある。

結果が大きく、意思決定を差し戻すことが難しいほど、リーダーが行動を起こす前に求められる証拠と安全策は強固なものであるべきだ。

変革の規模を決めるための2つの問い

研究報告を読み解く中で、私はこの判断の質を向上させる2つの問いを提案したい。

第1に:

「その問題は、ワークフロー全体のパフォーマンスをどれほど強く制限しているように見えるか」

第2に:

「その問題を修正することは、他の事象も合わせて変更することにどれほど依存しているか」

もし1つの問題が支配的であり、比較的独立して変更可能であると思われる場合は、対象を絞ったピンポイントの介入を行うことが最も合理的な最初の検証となる。

もし、ある問題が重要に見える一方で、他のいくつかの条件に依存している場合、リーダーはその制約と、それを支える条件の双方に対処する必要があるかもしれない。

いくつかの小さな問題が存在し、どれかが明らかに支配的というわけではない場合、リーダーが大規模な変革に踏み切る前に、小規模なテストを実施することでより優れた情報を得られるだろう。

明確に支配的な問題が1つも存在せず、問題同士が密接に関連し合っている場合は、より広範なシステム全体の再設計を検討すべき根拠が強くなる。

この視点は自動的に答えを出してくれるわけではない。手元にある証拠が、実際のところどれほどの規模の変革を正当化できるのかをリーダーに自問させるものである。

また、経営陣が決して無視できないもう1つの問いもある。

「失敗したときのコストは、状況を静観し、待機するコストと比べてどうだろうか」

原因の特定(診断)にもコストがかかる。リーダーは不確実性を「分析マヒ(過剰分析による停滞)」に陥らせてはならない。差し戻し可能なワークフローの変更であれば、少ない証拠でも実行に踏み切る価値はある。一方で、大規模な再編成や高リスクを伴う意思決定の自動化には、はるかに多くの証拠が必要とされるだろう。

目的は、行動を起こす前に完璧な確証を得ることではない。意思決定の結果の大きさに比例した、妥当な証拠を揃えることである。

ワークフロー全体を測定せよ

ワークフローの一部を自動化または再設計した場合でも、その介入を行った箇所だけの測定にとどめてはならない。

業務の流れ全体を見渡すのだ。

状況に応じて、これにはサイクルタイム、意思決定時間、品質、手戻り、待ち行列(キュー)、エラー、調整に必要な労力、従業員の負担、レジリエンス、説明責任などが含まれる。

その上で、別の場所で何が変わったかを問いかけるべきである。

元々の制約がそのまま残ることもあれば、解消されることもある。すでに存在していた別の問題が浮き彫りになるかもしれない。負荷がワークフローの別の部分に移行するかもしれない。あるいは、今回の介入によって、以前には存在しなかった新たな需要(要求)が生み出されるかもしれない。

これらはそれぞれ異なる結果であり、それに応じた異なる対応が必要となる。

制約を抱えたワークフローにおいて特定のプロセスがスピードアップしたとしても、それが自動的にシステム全体の進歩を意味するわけではない。

脈々と受け継がれてきた思考法

組織設計の研究者たちは、不確実性、調整、情報処理、組織適合性について何十年も研究を重ねてきた。他の研究分野においても、相互補完性、システム、ボトルネック、実験、そして組織学習についての探求が続けられてきた。

私の貢献は、これらに比べればささやかなものだ。こうした伝統的な思考法を結集し、実務におけるエグゼクティブの意思決定に役立つ形に落とし込むことである。

摩擦が生じている原因を確信できていないとき、リーダーはシステムのどの程度の範囲を変更すべきなのだろうか。

私の回答は、3つの要素を精査することである。それは、目に見える問題がどれほど強くワークフローを制限しているか、周囲の条件にどれほど依存しているか、および診断にどれほどの自信を持っているか、である。

確信度が低く、状況がそれを許すのであれば、規模を拡大する前にまずはテストを行うことだ。

これは意思決定における規律であり、不変の組織法則ではない。既存の確立された組織設計アプローチと照らし合わせて検証していく必要がある。

業務に適した、最もシンプルな診断アプローチを採用せよ

すべての業務上の問題に、これほどのレベルの分析が必要なわけではない。

生産ラインに明確な物理的ボトルネックが1つ存在するだけであれば、確立されたプロセス改善手法を用いる方が迅速かつ有効だろう。業務が安定的で再現性が高く、十分に理解されているものであれば、シンプルな修正だけで十分なはずだ。

このアプローチが真価を発揮するのは、業務が知識集約型であり、部門横断的で、不確実性が高く、あるいは判断や調整に大きく依存している場合である。

また、実際のシステムの境界がどこにあるかを見極める判断も必要となる。制約条件が自社の外、すなわちサプライヤーや顧客、規制当局、テクノロジーパートナーなどの側にある場合もあるからだ。

さらに、規制の厳しい環境や安全性が最優先される環境では、リーダーが自由に変更をテストできる余地は極めて少ない。

複雑さを言い訳にして、シンプルな問題を過剰に難しく考えるべきではない。

業務の性質に適した、最もシンプルな診断アプローチを採用すべきである。

組織設計とは「学習能力」でもある

ここにある本質的な教訓は、「組織の再設計をやめるべきだ」ということではない。

再設計は、「最も目に見える問題こそが原因である」という前提から始めるべきではない、ということだ。

複雑な業務において、今日パフォーマンスを制限しているものが、明日の介入後にも同じように制限要因であり続けるとは限らない。AIはこの点をとりわけ重要にする。多くの組織が周辺のプロセスを再設計できる速度を超えて、AIは業務の速度、量、そして場所を変えてしまう可能性があるからだ。

目指すべきは、一度きりの完璧な構造を発見することではない。

パフォーマンスを制限しているように見える要因を特定し、必要に応じてその説明を検証し、適切なレベルでシステムを変更し、その上であらためて見直す──こうした一連のプロセスに、より熟達していくことである。

これにより、組織設計は「一回限りの解決策」から「継続的な学習能力」へと姿を変える。

次の組織再編、ワークフロー変更、あるいはAI投資を承認する前に、こう自問してみてほしい。

「私たちの目の前にある問題が、本当に解決すべき問題であると確信できる証拠はどこにあるだろうか」

forbes.com 原文

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