アジア

2026.09.23 08:00

円キャリー時代の黄昏 日銀利上げで変わる世界の金融

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日本銀行が政策金利を31年ぶりの高さに引き上げるなか、世界の金融市場の背景で奏でられてきた音楽が消え始めている。

日本の長期にわたる金融実験は「椅子取りゲーム」の新たなラウンドに入ろうとしている。10年近くにおよぶマイナス金利や絶え間ない流動性供給を経て、日銀は政策金利を1.25%まで引き上げた。これにより、投資家たちが際限なく続くと思い込んでいたゲームから、またひとつ椅子が取り除かれた。いよいよ音楽が鳴り止んだとき、誰が立ったまま残るのか。それが目下の問題だ。

このドラマは、この30年近くにわたり世界で最も好まれてきた低コストの資金調達エンジン、いわゆる円キャリートレードをめぐって繰り広げられている。円はこれまで、世界のリスクテイクを陰で支えてきた。トレーダーたちは円を借り入れて、ブラジル国債からシリコンバレーのテクノロジー株まで、あらゆる資産への投資に回してきた。だが、18日の利上げによって日本の政策金利が中立金利に近づくなか、超低金利の円を借りて外国で高い利回りを追い求める取引は計算が狂い始めている。

この変化を受けて、市場は真の意味で分岐点に立たされている。日銀が初めて政策金利をゼロに引き下げた1999年以降、日本は世界最大の債権国としての地位を高めた。キャリートレードが全開になったのは、日銀が量的緩和を大幅に加速させた2013年のことである。日銀は国債や株式を大量に買い入れ、2018年にはバランスシートが日本の550兆円規模(当時)の国内総生産(GDP)を上回る規模に膨れ上がった。主要7カ国(G7)で初めてのことだ。

この間に日本で導入されたのはマイナス金利や量的・質的金融緩和のほか、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)などだ。これらは日本国債の利回りを抑え込み、債券市場の「反乱」を防ぐための政策ツールであり、しばらくは機能した。いま、そのツケが回ってきている。今月、日本の10年物国債の利回りは3%に達し、30年ぶりの高さを記録した。

GDP比で200%を超える政府債務を抱える国にとって、この圧力はけっして軽視できるものではない。日本は先進国で債務負担が最も重いばかりか、人口減少のペースもとりわけ速い。さらに、米国とイスラエルが始めたイランとの武力紛争を背景とする油価高騰の影響も、とくに受けやすい立場にある。エネルギーのほとんどを輸入に頼り、そのエネルギーが値上がりし、円安のため輸入コストがさらにかさむというのは、痛みをともなう組み合わせだ。

そこに地政学的な別の文脈も加わる。スコット・ベッセント米財務長官は今年、日銀の植田和男総裁に対して金融引き締めのペースを加速するよう促してきた。ボスのドナルド・トランプ米大統領は、米連邦準備制度理事会(FRB)に利下げさせてドル安につなげることができていない。そうしたなかで、米政権にとって日銀の利上げ促進は一種の「プランB」となっている。米国の政策に直接触れることなく、為替の力学を変えるための迂回策だ。

日銀が金利水準をゼロからさらに遠ざけるにつれて、円の流動性は着実に縮小していく。その波紋は、ニューヨークからサンパウロ、ロンドン、ムンバイ、シンガポール、ソウルにいたる各地の株式、債券、商品、不動産などの市場に及ぶことになる。AI(人工知能)ラリーにけん引され、資産価格はすでにとんでもない高水準に押し上げられているため、リスクは一段と大きくなっている。

音楽が止まりかけたとき、耳を澄ましているのは日本だけではないだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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