製品

2026.09.24 11:15

アップルがただひとつ「溶かさなかった」ブランド、Beatsを率いるマシュー・コステロの流儀

Beats 360(Apple)

Beats 360(Apple)

9月17日の原宿で行われたインタビューでのことだ。アップルの一員になって変わったものと、変わらなかったものを、1つずつ挙げるとしたら何かと尋ねてみた。

advertisement

マシュー・コステロは昔を少し振り返るかのように考えを巡らせていた。彼はハードウェアエンジニアリングとオペレーションを担当するアップルのバイスプレジデントであり、Beatsのエンジニアリング組織を率いる人物である。

「変わらなかったのは、ブランドだ」

一方で、彼が挙げた変化は極めて大きく、しかもポジティブなものだった。「エンジニアリングの観点では、すべてが良くなった。ものをつくるための基準も、道具も、いまや世界トップの水準だ」。彼の言う道具には、ラボの設備から試験の体制までが含まれる。

advertisement

9月22日にグローバルで発表されたBeats 360は、9月24日発売。日本価格は税込5万9800円で、アップル自身のオーバーイヤーであるAirPods Max 2に近い機能を備えていることを考えれば、“アフォーダブル”と言っていいだろう。

交換式のイヤークッションを採用し、Beatsのオーバーイヤーとして初めてIPX4の耐水性能を持つ。アスリート向けを強く意識した、ファッショナブルなヘッドホンだ。別売のクッションキット(8900円)を多数用意し、個性的なカラーリングで楽しめるように工夫されている。

実際、試してみるとよくできている。しかし、この話は単に“スポーツ向けヘッドホンの新しい基準”が生まれたという話ではない。この製品はアップルという組織の中から生まれている一方、アップルのブランドを冠していない。

なぜBeatsは特別なのだろうか?

モンスターケーブルとHTCの時代

Beats Electronics(以下、Beats)の創業は2006年。ヒップホップアーティストのDr. Dreと、インタースコープ・レコードを率いていた音楽プロデューサーのジミー・アイオヴィンが始めた会社である。最初のStudioが世に出たのは2008年、実際に設計と製造、それに流通までを担っていたパートナーはハイファイオーディオ向けに高音質ケーブルを販売する「モンスターケーブル」だった。

彼らは当初、ミュージシャンやアスリートとの提携で認知を広げた。オリンピックの舞台で自分のレース前に、Beatsのノイズキャンセリングヘッドホンを装着して集中する姿を覚えている人もいるだろう。

そんなBeatsに台湾HTCが約3億ドルを出資し、株式の過半(50.1%)を取得したのは2011年のことだ。スマートフォンと付属するイヤホンの音響チューニングをBeatsにまかせることで、音楽ファンを取り込みたい。そんなわかりやすい狙いの出資だった。

次ページ > 足かけ16年をBeatsとともに過ごしてきた男

編集=安井克至

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事