今秋にドイツ・ベルリンで「IFA 2026」が開催された。100年以上の歴史を持つIFAは、テレビやオーディオ、生活家電からスマートホーム、AI、ロボティクスまでが集まる世界最大級のコンシューマーエレクトロニクスとホームアプライアンスのイベントだ。今年は2000を超える出展者が参加し、155カ国から約24万人が来場した。
筆者は今年もIFAを現地で取材した。AIを搭載する家電やロボット、スマートホームの進化はもちろん目を引く。だが、欧州のエレクトロニクス市場を取材していると、日本や米国の展示会とは少し異なる市場の課題と、それを乗り越えようとする各社の動向が見えてくる。
「長く使える家電」の理想と現実
IFAでは直近の数年間に「長く使い続けられる、質の高い製品」への関心が高まっている。省エネ性能だけではない。壊れたら修理できること、部品を交換できること、再生品として次のユーザーに渡せること。そして製品を使い終えた後には、素材をもう一度循環させること。いわゆる「サーキュラーエコノミー」の思想が、製品設計からサービス、ビジネスモデルにまで浸透している。
IFAの期間中には秋冬向けの新製品が数多く発表される。メーカー、トレードビジター、業界団体、政策関係者が一堂に会するイベントだからこそ、IFAは欧州の家電市場が次にどこへ向かおうとしているのかを読み解く格好の機会でもある。
イベントを主催するIFA Management社のCEO、ライフ・リントナー氏に聞くと、サーキュラーエコノミーを巡る現実は決して単純ではない。
リントナー氏は、メーカーや流通にとって修理サービスが利益を生む「プロフィットセンター」ではなく、多くの場合は「コストセンター」になっていると指摘する。交換部品を長期間保管し、サービス網を維持し、人員を確保すれば当然コストがかかる。
「サステナブルな製品を開発することは必要です。しかし、コンシューマーがそのためにどれだけ多く支払う意思があるのかも考えなければなりません。例えば販売価格に対する20%の転嫁までは受け入れることができても、開発を含むコストが40%増えれば、多くの人はその商品を選ばないはずです。適切なスイートスポットを見つける必要があります」
環境への配慮を理念として掲げるだけでは、持続可能なビジネスにはならないということだ。
修理を「コスト」から「価値」に変える
「Right to Repair(修理する権利)」についても同じ問題がある。
欧州では近年、EUが旗を振って「Right to Repair(修理する権利)」の制度整備を進めている。製品が故障した際にすぐ買い替えるのではなく、コンシューマーが修理して長く使うという選択を採りやすくするための考え方だ。EUでは対象製品についてメーカーに修理対応を求めるほか、交換部品の供給や修理しやすい設計を促すエコデザイン政策とも連動させ、製品の長寿命化と廃棄物の削減を目指している。
「壊れた製品の修理を可能にすることには大きなコストが伴います。場合によっては交換部品を用意するより、新しい製品を渡す方が企業には安いことさえあります。でも、それではサステナブルではありません。環境の視点だけでなく、経済性と組み合わせなければ仕組みは機能しません」



