「わたしたちはいま、テクノロジーのトンネルに入ろうとしています」。そう語るのは、ウクライナ・エストニア系の防衛テック企業Ark Robotics(アーク・ロボティクス)のアチ・タカガマ最高経営責任者(CEO)だ。「向こう側には、人間の兵士1人につきロボットや無人システムが何千機も存在する世界が広がっています」
エストニアの首都タリンに本社を置くアークは、ウクライナで使用されている地上ロボット(無人車両=UGV)で最もよく知られる企業だ。UGVは現状では主に兵站に利用されているが、タカガマは、こうしたロボットはロボット戦の新たな包括的モデルの基盤になるものだと説明する。
ほんの数年前なら、これは単なる空想の話のように聞こえたかもしれない。だが、いまでは大規模な「無人戦」に必要な要素が現にすべて揃っているというのが彼の見方だ。ウクライナの戦場では、すでに人員の損耗のおよそ8割がドローン(無人機=UAV)によってもたらされるようになっているが、これはまだ始まりにすぎない。
「移行は避けられません」とタカガマは話す。「たしかに、いまでも全面的なドローン戦という様相を呈しているように見えるかもしれません。しかし、この移行後には桁違いの段階に進んでいるはずです」
相互接続される「ロボット頭脳」
アークの主力製品はロボット自体ではなく、ロボットを運用するための統合プラットフォーム「Frontier System(フロンティア・システム)」だ。このシステムでは、操縦士が複数のロボットをどこからでも制御できる。UGVだけでなく、UAVや無人水上艇(USV、ロボットボート)、あるいはこれらを組み合わせたものにも対応している。アークは今月、ポーランドで開催された国際防衛展示会「MSPO」でフロンティア・システムを実演し、来場者は会場から、ウクライナにあるUGVを実際に走らせる体験もできた。
フロンティアは独自開発のプロセッシングユニット(処理装置)を基盤とするシステムで、この装置は陸海空を問わずどんな移動ロボットにも搭載できる。
「当社は、ハードウェアの形態を問わず搭載できる汎用ロボット頭脳を構築しています」とタカガマは説明する。「これは認識や自己位置推定(ローカライゼーション)にかかわる問題を解決し、ロボットに自律的な行動能力を与えるものです。人間の意図に従って、戦略に基づいて行動したり、ほかのロボットたちと連携したりできます」
The Fourth Law(ザ・フォース・ロー=TFL)のようなウクライナ企業がドローンへのAI(人工知能)搭載に注力してきたのに対して、アークはUGVから開発を始めた。タカガマは、ロボット戦力の基盤になるのはUGVだと考えている。UGVは重装備の搭載・運搬や陣地の確保など、ドローンには無理なさまざまな任務をこなせる。



