ビジネス

2015.12.14

社長の生活考察 ―発想力の源を探る

photographs by yOU(YukoKawasaki)

“自分を見る”メガネ、その発想はどこから?
花粉症対策用、PCやスマートフォンのブルーライトをカットするメガネなど、あっと驚く革新的な発想で業界をリードするJINS田中仁社長。彼の次なるアイデアとは?

―さまざまな新製品を、常に他のメーカーに先駆けて発表し続けている田中社長ですが、日々どのようなところから着想を得ているのでしょうか?

そもそも「JINS」を始めたきっかけが、韓国のメガネ業界に触発されたように、海外で受けた刺激が新たなアイデアを生むことも少なくありません。とはいえ、新製品を他社に“先駆けて”出すのは、やはり難しい。売れるかどうかわかりませんから。でも、我が社は常に大学や研究機関とエビデンスを積み重ねているので、その効果や存在意義には自信を持っています。それをもって世に打ち出せば、必ず響く人はいる。また、当社はイノベーターであってフォロワーではない。ですから、最初にやることに意味があるのです。

―「自分を見るアイウエア」というコンセプトのウエアラブル端末、「JINSMEME」も非常に面白い試みですね。

発表は昨年(2014年)でしたが、プロジェクト自体の発足は5年前になります。東北大学加齢医学研究所の川島隆太教授とのブレインストーミングから生まれました。「JINSMEME」は、顔と接触する3点式の眼電位センサーから目の動きや瞬きを読み取り、身体の状態を可視化します。実は精神的・肉体的な病も、じつはかなりの割合で目からその兆候を読み取ることができると考えられており、大きな可能性を秘めた分野であると確信しています。

最大の利点は、普段メガネをかけている人であれば、いつも通りに生活しているだけでよいことでしょうか。わざわざ身に着ける手間がないので、従来のウエアラブル端末より、自然と生活に溶け込むことが期待できます。

―メガネは生活に密着したアイテムなので、日常から多くのアイデアを得ているのかと思っていましたが、それよりは研究機関や企業との研究がベースになっているようですね。

研究機関は、シーズをたくさん持っている。しかし、それを一般消費者のライフスタイルにフィットさせる方法は知らなかったりします。あるいは、それを提示してくれる場所も思いのほか少ない。「JINS」は、いわばニーズとシーズを合わせるパイプのような存在なのだと思います。

―生活様式はどんどん変わっていくわけで、それに合わせてメガネのニーズも当然変わっていくのでしょうか?

現在、世の半分の人たちがメガネをかけていません。しかし、「目を守る」ということを考えれば、全員かけたほうがいいのです。考えてみれば、私たちの身体において、今裸の状態にあるのは目だけです。それに対して、花粉やPM2.5、紫外線やブルーライトなどと外からの刺激は増える一方です。レーシック手術を手がける眼科医ですら、術後も目の状態を良好に保つため「メガネはかけるべき」と推奨するくらいですから。

かつて私たちの先祖は服を着ないことが普通でしたが、今、全裸で街を歩いていたら変人扱いです。メガネをかけていない人を見たら、「あの人、恥ずかしくないのかしら!」と思う時代がいつか来るかもしれません(笑)。

たなか・ひとし◎1963年、群馬県生まれ。88年ジェイアイエヌを設立、2001年「JINS」を開始。06年大証ヘラクレス(現JASDAQ)に上場。『Ernst&Youngワールド・アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー2011』日本代表。13年東証一部上場。

辻本力=文 yOU(河崎夕子)=写真

この記事は 「Forbes JAPAN No.16 2015年11月号(2015/09/25 発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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