アルコール離れやワイン消費の落ち込みが叫ばれる昨今。そんな逆風のなか、2019年に誕生したデイリーワイン「Because, ワインシリーズ」が2025年1月に累計100万本を突破した。高級ワインの輸入を主戦場としてきた株式会社フィラディスが仕掛けた本シリーズは、いかにして若年層をはじめ幅広い層の心と市場を掴む「エコシステム」を構築したのか。そのマーケティング戦略の裏側に迫った。
「ワインだけ、知識がないと『好き』と言ってはいけない空気がある」
開発の原点は、代表の石田大八朗氏が20代のイギリス滞在時に見た光景にある。現地の一般家庭の食卓では、ワインの仕事をしていない人々でも、「私はドイツのリースリングが好き」などと、自分の好きな品種や味わいについてごく自然に語り合っていた。さらに地元のスーパーへ行けば、1000円ほどの手頃な価格で驚くほど美味しいワインが日常的に買える。
翻って日本では、「ワインは詳しくないんですけど……」と謙遜する人が非常に多い。「コーヒーやビールが好きな人は『詳しくないんですけど』とはあまり言わないのに、なぜかワインだけ、知識がないと『好き』と言ってはいけないような空気があるんです」。同社で本プロジェクトを牽引するブランド戦略室の吉田淳(よしだ・あつし)氏はそう語る。
特にワインの入口となる1000〜2000円帯の価格帯で「美味しくない」と挫折してしまうと、次にはつながりにくい。この「知識」と「味」のハードルを壊し、誰もが直感的に楽しめるワインを作ることが、同社にとっての長年の悲願だったのだ。



