経営・戦略

2026.09.21 14:59

AI時代のブランド戦略、鍵は「信頼性のギャップ」を埋めること

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私は常々、音楽がどのようにビジュアルとオーディオの両面でストーリーを伝えられるのか、そしてその2つが融合してより力強いクリエイティブ戦略を構築できるのかに関心を抱いてきた。自らの仕事を通じて、AIがいかに急速にこのプロセスに影響を与え始め、実験や協働、アイデアの具現化に新たな道を開きつつあるかを目の当たりにしてきた。それは、AIがクリエイティブチームと私たちの働き方にとって何を意味するのかを、より深く考えるきっかけとなった。しかし、AIをめぐる議論の多くはこれまで「導入」に焦点が当てられてきた。すなわち、どれだけ迅速に実装できるか、どのチームが使うべきか、どれだけのワークフローを自動化できるか、といった観点である。

こうした要素は依然として重要だ。しかし、すでにコンテンツ制作やマーケティング全般でAIを活用しているブランドにとって、別の課題が浮上している。それは、コンテンツを取り巻くシステムがそのスピードに追いつけるかという問題である。

当社が実施した英米のブランド500社を対象とした最近の調査によれば、過去2年間に著作権関連またはテイクダウン(削除要請)の問題を経験したブランドは56%にのぼり、83%が「過去に使用した音楽や音声が正式な監査や法的異議申し立てに耐えられないのではないかとある程度懸念している」と回答した。

これらの結果は、より広範な問題を示唆している。コンテンツ制作が加速する一方で、ガバナンス、ライセンス管理、説明責任を担うプロセスの多くが、その変化への対応に苦慮している。AIは、コンテンツの作成、配信、スケールアップをこれまで以上に迅速かつ容易にすることで、こうしたプレッシャーを増大させている。

したがって、調査対象となったブランドの90%がAIを使用しなければならないというプレッシャーを感じている一方で、AIが生成したコンテンツが品質基準を満たしていると考えているブランドがわずか56%にとどまるのは、驚くべきことではないかもしれない。その結果、より迅速に行動したいという組織の意欲と、確実性を持ってそうする能力との間に、「信頼性のギャップ」が広がりつつある。

だからこそ、AI成熟の次の段階を決定づけるのは導入ではなく、大規模なAI活用を支えるために必要な信頼、ガバナンス、運用基盤を組織が構築できるか否かにあると、私は考えている。

なぜ導入だけでは成功の指標として不十分なのか

多くの組織は、今でも導入実績に関する指標(利用率、ワークフローの自動化、生産性の向上など)を通じてAIの成功を測定している。これらの指標は重要だが、それだけでは全体像を把握することはできない。マーケティングチームがAIを使用してコンテンツ制作を迅速化したとしても、成果物がブランドの基準を満たしているかどうかに疑問を抱くことがある。私自身、AIを使ってプロセスの一部を高速化したものの、成果物の修正や推敲に時間を取られ、当初の時短効果がすぐに相殺されてしまうチームを目の当たりにしてきた。そのような状況では、効率は向上しても、信頼性が高まることはない。

より本質的な問いは、AIを活用したワークフローが、顧客、規制当局、法務チーム、ステークホルダーからの精査に耐えうるかどうかである。それはすなわち、AIが品質を向上させているか、チームがリスクを理解しているか、説明責任の所在が明確かを問うことを意味する。

これらの問いは、自社のAIプログラムが組織を強化しているのか、それとも単にアウトプットの量を増やしているだけなのかを明らかにしてくれる。

AIリーダーシップの次の段階がガバナンス、説明責任、リスク管理である理由

AIがコンテンツ制作を加速させるにつれ、ブランドは知的財産に関する懸念や著作権リスクから、誤情報、ライセンスの複雑さ、レピュテーションへの損害にいたるまで、より幅広いリスクに対処することを迫られている。AIはスピードと効率を劇的に向上させることができる一方で、多くの組織が今なお模索している説明責任や監視体制に関する疑問も生じさせている。

これこそ、リーダーとして私たちが認識すべき変化である。課題は、これらのツールを大規模に責任を持って使用できるようにするガバナンス構造を構築することだ。ブランドがさらに多くのワークフローにAIを組み込む前に、AIをどこで使用できるか、どこで人間の監視が必要か、そしてコンテンツが顧客や一般の目に触れる前に満たすべき基準は何かを定義する、実践的なフレームワークが必要となる。

こうしたガードレールがなければ、不整合や回避可能なミスが発生する可能性がはるかに高くなる。当社の調査では、「ブランドの95%が、音楽ライセンスの複雑さが制作スケジュールをある程度遅らせていると回答」し、「78%がコスト増加、追加のライセンス費用、キャンペーン立ち上げの遅れ、レピュテーションへの損害、あるいはパートナーシップ機会の喪失を経験している」ことが分かった。このデータから私が得る教訓は、AIの導入が加速するなかで、成功は導入のスピードよりも、それを支えるシステムの強固さに左右されるようになるということだ。

リーダーがAIへの信頼性を高めるための3つの方法

1. 明確なガバナンス・フレームワークを構築する

ブランドに必要なのは、従業員ハンドブックの奥深くに埋もれたAIポリシーではない。AIをどこで使用できるか、どのような審査プロセスが必要か、そして最終的な成果物に対して誰が責任を負うのかを定義する、実践的なフレームワークだ。自身の経験から言えば、重要なガイドラインは、AIを活用したクリエイティブプロセスのあらゆる段階において、人間が明確なオーナーシップを持つことであり、明確なガードレールと説明責任の適切なバランスを取りつつ、チームがAIを試す能力を制限しないことである。

2. クリエイティブなワークフローに説明責任を組み込む

AIはコンテンツ制作を支援できるが、公開される作品に対する責任は人間が負い続けなければならない。AIが支援したコンテンツに対する明確な責任の所在を確立し、品質、コンプライアンス、ブランド基準に関する決定を、決してテクノロジーに完全に委ねないようにする。

3. コンプライアンスを業務能力として扱う

多くの組織は依然として、ライセンス管理、ガバナンス、コンプライアンスを法務部門の機能と捉えているが、これらはますます業務上の必須事項になりつつある。私は、コンプライアンスチェックを最終段階のレビュープロセスとして扱うのではなく、コンテンツのワークフローに直接組み込むことを推奨する。

成功しているブランドが実践していること

私が身を置く業界を見て感じるのは、AIから最大の価値を引き出しているブランドは、責任を持って規模を拡大するために必要な信頼、ガバナンス、そして説明責任を構築しているブランドだということだ。そうしたブランドは、透明性と監視体制によって信頼が築かれることを認識しており、AIがスピードをもたらす領域と、人間の専門知識が依然として不可欠な領域を明確に定義している。

AIがコンテンツ制作やビジネス運営の永続的な一部となるなか、自社がどのように成功を測定しているかを見直すことをお勧めする。導入率は、組織内にAIが存在するかどうかを教えてくれる。信頼性は、ブランドがAIの支援によって制作されたものに対して自信を持って責任を負えるかどうかを教えてくれる。今後数年間において、こちらのほうがより重要な指標となるかもしれない。

forbes.com 原文

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