AI

2026.09.21 14:29

AIと共に「料理」する次の時代マーケティング論

stock.adobe.com

stock.adobe.com

しばらくの間、多くの人が「AIっぽく聞こえすぎること」を心配していた。しかし、その懸念はすでに薄れつつあるように感じている。

AIが生成した作品が消えたからではない。むしろその逆だ。今や非常に多くの人がAIを使っているため、私の見方では、より意味のある問いは「AIを使いましたか」ではなく「AIをどう使いましたか」になっている。

AIは単一のツールを超えて進化を遂げた。それはまるで、実際に稼働しているキッチンのようだ。そこは、何かを創造できる場所である。価値があるのは、どの食材(AIツール)を使うべきかを知っていることだけではない。それらをいつ、どのように組み合わせるか、いつ引き算をするか、そして提供するに値する成果物に仕上げるためにどのようにすべてをまとめるかを知っていることにある。

おそらくこれが、最近私が料理について頻繁に考える理由だ。私はシェフではないが、料理が大好きだ。料理は遊び、創造、実験の機会を与えてくれる。

アイデアはどこからでも見つかる。SNSで発見したり、見ている料理番組から得たり、忘れられないレストランの一皿から着想したりする。

私は食を非常に重んじる家庭の出身だ。私たちのレシピは、決してマニュアル通りではない。いかなる料理本にも載っていない。誰もが独自のバージョンを持ち、それぞれの好みに合わせて料理をする。

実験こそが鍵

義理の祖母は、私に重要なルールを教えてくれた。それは「直感で料理すること」だ。彼女は手、目、記憶、そして心で分量を測っていた。料理をしながら味見をして調整し、いつ足すべきか、いつ止めるべきかを知っていた。

私が「砂糖はどれくらい?」と聞くと、彼女は「あなたが好きな甘さになるまで」と答えた。続けて「それはどれくらい?」と尋ねると、「これくらい」と曖昧に言いながら、目分量でボウルに注ぎ入れた。

正確な答えが欲しかった私は、以前はこれに不満を感じていた。しかし、レシピを出発点として捉え、さまざまな場所からアイデアや技術を取り入れて、それらが自分のものになるまで実験することを学んだ。そうして生まれたのが、私へのリクエストが最も多い料理の1つである「トリュフ・マカロニ・アンド・チーズ」だ。

レシピを聞かれると、自分が義理の祖母のように答えていることに気づく。具材と大まかな作り方の流れは教える。しかし、「もっとコクを出したければ足せばいい。ここで味見をして、あそこで調整して」とも伝える。

実のところ、良い料理人になるためにレシピに従う必要はない。自由に変え、自分の味覚を信じればいい。これこそ、マーケターとして私たちがAIについて考え始めるべき方法だ。

AIはキッチンである

AIを、単に使うだけの一個のツールとして扱うべきではない。そうではなく、食材を扱い、望む結果が得られるまで実験を繰り返す「キッチン」として扱うべきだ。

白紙の状態を脱しようとしているときもあれば、思考を整理したり、新しいスキルを学んだり、仮説を検証したりしようとしているときもある。作るものによってツールは変わる。

しかし、何を提供する価値があるかを決めるのはキッチンではない。シェフはあくまであなた自身だ。あなたの味覚、あなたの視点こそが、最も重要な隠し味である。それが、あなたの看板料理を生み出す。

利用できる食材(AIツール)は増えつつある。しかし、パントリーが大きくなり選択肢が増えたからといって、自動的に良い料理人になるわけではない。むしろ新たな課題が生まれる。何がその料理に合い、何を使えるかを知ることだ。すべてを使うことはできない。あるAIツールは土台となる。あるものは調味料であり、構造、スピード、あるいは自分ひとりでは到達できなかった可能性を加える。他のものは単なる仕上げにすぎない。

シェフであれ

要点は、毎回すべてのツールを使うことではない。作っている完成品を理解し、それを完成させるために何を加えられるかを理解することだ。技とは、その違いを知ることにある。マーケティングもここに向かっていると私は思う。

私たちは長い間、マーケティングを信頼できるレシピのように扱ってきたのだと思う。ブリーフに従い、戦略を実行し、テンプレートを作り、アセットを納品し、いつものチャネルで展開し、KPIを追跡する。そして同じ手順を繰り返す。

AIは、そうした仕事をより速く、より安くするだろうか。私はそう思う。だが私にとって、より興味深い機会は、マーケターにより大きなキッチン、より幅広いツールの食料庫を与え、ただ創造することを任せる点にある。

これは新しいレベルのエンパワーメントである。マーケティングでは、最終的な一皿が提供される前に、実験し、異なる組み合わせを試し、反復する余地が必要だからだ。

優れたシェフであることは、実行力だけを意味しない。リアルタイムで調整することでもある。マーケティングも同じだ。優れたマーケターは、メッセージやデザインが技術的には問題なくても戦略的に平板であるとき、何かがずれているとき、あるいは単に最初からやり直す必要があるときに気づく。彼らは、タスクを完了する制作支援担当者ではなく、創造的思考者として機能する。

材料を超えて

私が料理の比喩を好む理由の1つは、それが個々の材料ではなく、完成した一皿に焦点を当てているからだ。

おいしい食事を楽しんだ後に、「どんな塩を使ったのか」と尋ねることは、通常あまりない。1つの材料にこだわるよりも、その料理がどんな味だったか、もう一口食べたいと思ったかを覚えているものだ。

AIは、このように仕事の中に溶け込むべきだと私は考えている。AIは物語そのものではなく、物語の一部になるべきだ。プロセスの中では明らかでありながら、結果の中では見えない存在であるべきだ。この感覚は、探索し、AIとともに料理することで育てられる。

未来のシェフの真の強み

私はいま、子どもたちのために自分のレシピを以前より多く書き残している。彼らに出発点を持っていてほしいからだ。材料、流れ、そして私がこれまでに身につけてきた秘訣である。

だが、書かれたレシピが彼らに強みを与えるわけではない。強みを与えるのは自信だ。味見をし、調整する自信。いつ指示に従い、いつ従わないかを見極める自信。料理を自分のものにすることは、私のレシピを壊すことではないと理解してほしい。それは、シェフになるということなのだ。

AIが私たちの仕事の一部になるにつれ、マーケティングの世界でも、私はこうしたエネルギーをもっと見たい。AIを使うことへの恐れが少なく、完璧なプロンプトなどに執着しすぎない人々だ。何が可能なのかに対する好奇心が増え、インプット、参照情報、ツール、そして直感を組み合わせ、完成度のあるものに仕上げる方法を知っている人への敬意がもっと高まってほしい。

未来は、単にレシピに従うのではなく、大きなキッチンに恐れず足を踏み入れ、目の前の材料を理解し、人々がまた戻ってきたくなるようなユニークなものを創造するマーケターのものになる。

誰もがこのキッチンにアクセスできる世界で、重要な問いはこうだ。「あなたは料理の仕方を知っているか」

(forbes.com 原文)

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事