(3)AIで患者ごとに個別化したがん治療を設計する
米国時間2026年8月19日、メルクとモデルナは、患者ごとに設計するmRNA治療薬intismeran autogeneの第3相試験結果を発表した。手術後に同薬と免疫療法薬キイトルーダを併用すると、キイトルーダだけを使った場合より、悪性黒色腫の患者が再発せずに過ごせる期間が長くなった。mRNAを使うがん治療としても、患者ごとに設計する個別化治療としても、後期臨床試験で初めて得られた成功である。
治療薬を作る際は、まず医師が腫瘍と健康な組織の遺伝情報を解析する。次にソフトウェアが、腫瘍にある遺伝子変異の中から、免疫系が攻撃しやすいタンパク質断片を生み出す変異を選ぶ。1回分の投与には最大34種類が使われる。免疫系の標的となる変異の選定が計算処理の中核であり、アルゴリズムの性能が上がれば、より適切な変異を選べるはずだ。
2026年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で示された中期試験の5年追跡結果では、再発または死亡のリスクが49%低下した。intismeran autogeneは現在、肺がん、膀胱がん、腎臓がんを含む9件の試験で開発が進められている。
(4)AI支援の乳がん検診でがんの検出率を高める
がんを治せる可能性を高めるには、早期発見が現在も最も確実な方法だ。がん診療でAIが有効だとする最も強い証拠は、乳がん検診から得られている。
スウェーデンのMASAI試験は10万5934人の女性を無作為に2群へ分け、AI支援によるマンモグラフィー読影と、画像1件を放射線科医2人が読む欧州標準方式を比較した。全結果は2026年1月に『The Lancet』で発表され、がん検出率はAI支援方式が80.5%、標準方式が73.8%だった。
AI支援方式では、がんではない人を誤って陽性とする判定も増えなかった。検診後から次回検診までに見つかるがんも増えておらず、これはMASAI試験で重要な安全性の確認項目だった。先行分析では、AI支援によってがんの検出数が29%増えていた。
ただ、『The Lancet』の論評によると、検診を受けた女性1000人当たり、AIが追加で見つけたがんは1.4件だった。検診後から次回検診までに見つかるがんの減少は0.2件にとどまり、集団全体で見た効果はそれほど大きくない可能性がある。
(5)AIを使う血液検査でがんを早期に発見する
複数種類のがんを調べる血液検査は、血液中を流れる腫瘍DNAの断片を探す。機械学習でがんの存在を示す化学的な目印を識別し、その断片がどの臓器のがんから来たかを予測する。
この種の血液検査を初めて無作為化試験で検証したNHS-Galleri試験では、結果が分かれた。イングランドの50~77歳約14万2000人を対象に年1回の検査を3回実施したが、進行がんを減らすという主要目標は達成できなかった。ステージ4の診断が減った分を、ステージ3の増加が相殺したためだ。
Galleri検査を開発した米GRAILは2026年5月のASCOで、より有望とみる副次的な結果も発表した。致死率が高い12種類のがんでは、ステージ4での診断が全体で14%減り、早期段階での診断は16%増えた。救急診療を受けた際に初めて見つかるがんも25%減った。
ただし、14%、16%、25%という数値は試験スポンサーが提供したもので、まだ査読を受けていない。ステージ4で初めて見つかるがんの減少は重要な兆候だが、それが死亡者の減少につながるかは、まだ証明されていない。


