多くの企業が、AIについて同じ過ちを犯している。AIをコスト削減プログラムとして扱っているのだ。
当初の触れ込みは、企業がAIツールを導入し、社内プロセスを自動化して業務機能を排除できるというものだった。エージェントが「デジタルワーカー」と称されるようになると、経営幹部が「これらのワーカーは現実の労働者を実質的に置き換えられるのか」と問うのは自然な流れだった。しかし実際のところ、経済性はそう単純ではない。一部のプロセスでは、業務を自動化するために必要なトークン消費、インフラ、保守のコストが、既存モデル(すなわち人間の従業員)を維持するより高くつくことが多い。定型業務の一部は、AIシステムを軸に再構築して長期的に維持するよりも、外部委託した方が依然として安い場合もある。
より大きな問題は、失敗が無料ではないという点だ。エージェント型のワークフローが破綻したり、誤った答えを出したり、タスクを完遂できなかったりしても、企業はその過程で行われたモデル呼び出しすべてに対して費用を支払わなければならない。エラー率とトークンコストは将来的に低下するだろうが、多くの投資判断は今下す必要がある。経営者の在任期間はそこまで長く待てないからだ。
AI戦略の主目的がコスト削減であるなら、リーダーは高くつく驚きに直面するかもしれない。よりよい問いは、「AIは企業がより多くの収益を上げるのにどう役立つか」である。
新たな能力とキャパシティ拡大に注力する
私が見てきた最良のAI投資は、事業から何かを取り除くことに焦点を当てていない。むしろ、それまで事業になかった能力を加えることに焦点を当てている。エンタープライズ企業のリーダーとの対話で、最も高いROIを実現している組織は、エージェント型ワークフローを活用して収益創出のキャパシティを解放している。例えば、GTMチームの規模を縮小するためにAIを使うのではなく、従来は汎用的な販促資料しか受け取っていなかったミッドマーケットの顧客向けに、高度にパーソナライズされ、コンプライアンスに準拠した提案資料を生成するために使っている。AIにより、既存チームは、以前は不可能だった規模でハイタッチな営業活動を実行できるようになる。このアプローチによってコンバージョン率が20%以上上昇した例を私は見ている。
企業がAIを使って新製品を構築し、顧客体験を向上させ、チームが処理量をより適切に管理できるようにする場合、顧客体験全体や製品品質に結びついた投資は一般に、より大きな成長につながる。サポートデスクを大幅に自動化して人員を削減しようとした結果、解約率の上昇によって削減効果が大幅に目減りした企業を、私は何度も見てきた。
企業が過剰採用をしていないと仮定すれば、より有効なのは、現在のサポートチームが顧客ニーズにより的確に対応できるエージェント型ワークフローを構築すること、そして本来なら対応する十分なキャパシティがない小規模顧客のニーズを満たせるフローを開発することだ。それにより、収益維持率の向上につながる。
AIを資本配分の意思決定として扱う
リーダーがAIを成長という視点から評価し始めると、どこを自動化すべきかについて、より適切な判断を下せるようになる。
CEOやCFOは、AI予算がどう配分されているかを、部門別だけでなく、追加収益の創出やサービスの質・範囲の向上に充てられている割合という観点でも精査すべきだ。私が繰り返し耳にする懸念は「トークノミクス」と利益率の流出をめぐるものだ。CFOは、AIが固定的なソフトウェアライセンスのように振る舞うのではなく、変動的な投入コストとして機能することを認識しつつある。彼らはますます、「トークン消費が大きく変動し得るなかで、どのように利益率を守るのか」と問い始めている。
まさにこの理由から、AIを収益創出に結びつける方がはるかに安全な賭けになる。AI施策が厳密にコスト削減のために構築されている場合、トークン消費が予想外に急増すれば、見込んでいた削減効果はすぐに削り取られ、事業上の根拠は崩れかねない。一方、AIが成長エンジンとして導入され、チームがより多くの商談を獲得したり、より広い市場にサービスを提供したりする助けになる場合、余地は大幅に広がる。トークンコストや計算コストが変動しても、売上高の成長が緩衝材となり、ROIを安定させ、投資を正当化しやすくなる。
例外はあるだろう。コスト削減を目的とするユースケースの一部は初期の成功を示しており、モデルの改善とコスト低下に伴い、経済合理性を持つものはさらに増えるだろう。しかし私は、コスト削減の成功例よりも失敗例の方を多く見ている。環境がこれほど速く変化するなかでは、AIで需要を増やす、あるいは需要に対応する方が理にかなっている。
採算を保って対応できる市場を広げる
AIはまた、これまで大規模に支援することが難しかった顧客、サプライヤー、取引に企業が対応する助けにもなる。例えばSAPを見てみよう。同社の従来のハイタッチでコンサルティング型の営業モデルは、大企業に対しては極めて効果的だったが、数百万に及ぶ中小企業には届いていなかった。あらゆるミッドマーケットの見込み客に個別の商談サイクルを実施するだけの営業担当者を雇うと、それらの小規模案件が生み出す収益をコストが上回ってしまうからだ。
これを変えるため、SAPはデジタルハブ全体に生成AIを導入し、パーソナライズされた見込み客開拓を拡張し、こうした小規模アカウントからの問い合わせに対応した。この技術は人間の労働を置き換えたわけではない。むしろ、人だけでは拡張不可能だったカスタマイズされた営業体験をSAPが導入できるようにし、それによって同社が巨大な新市場セグメントに採算よくアプローチする助けとなった。同じ原則は、サービス提供の最前線に立つ従業員にも当てはまる。彼らがより多くの処理量に対応できるよう支援することは、役割をなくして顧客体験を弱める可能性を生むよりも、大きな価値を生み出し得る。これは特にB2Bで当てはまる。意思決定が汎用品を超える内容を含む場合、買い手はいまも人とやり取りすることを期待しているからだ。
AI投資を承認する前に、リーダーは簡単なテストを適用すべきだ。それは、新しいものを生み出しているか、顧客体験を改善しているか、従業員がより大きな価値を生み出す助けになっているか、である。経済性が変わるまでは、トークン消費がもたらす最も生産的な成果は収益創出であるべきだ。企業は、AIを使ってコストをなくすことよりも、より大きな価値を生み出すことに注力すべきである。



