AIと情報流通の進化によって、情報力と分析力に関する差が縮む
投資家が優位性を得る手段は、歴史的に3つに分けられる。人より良い情報を持つこと、同じ情報からより良い分析を導くこと、そして他者より優れた気質を保つことだ。
情報面の優位性は、一部の投資家だけが他者の知らない情報を持つときに生まれる。機関投資家は長年、元従業員への聞き取りや独自の販売・流通データの収集、企業幹部へのアクセスを通じて、他の投資家より多くの情報を得ようとしてきた。現在は、米証券取引委員会(SEC)の公正開示規則(Reg FD)とインターネットの普及により、投資情報が公平かつ広く伝わる環境が整っている。ウォール街のプロ投資家と個人投資家の情報格差は縮まった。
さらに、衛星画像やクレジットカード利用データなどを提供するデータ事業者や、各分野の専門家から情報を得るためのネットワークを利用すれば、機関投資家は以前なら入手しにくかった情報へ容易にアクセスできる。経営幹部への聞き取りも、こうした情報源の1つだ。ウェブ上の情報の自動収集やAIモデルも、情報を効率よく集める手段になっている。情報の入手手段が広がったため、他者だけが知らない情報を持つことで優位に立つのは難しい。
分析面の優位性とは、他者と同じデータや情報を見ながら、より優れた独自の洞察を導くことだ。分析力だけで競争優位を築くのも難しい。投資市場では、何千人もの優秀な投資家が競っている。高学歴で経験豊富、高給を得る機関投資家が、資金でそろえられる最高水準の投資ツール、企業幹部へのアクセス、アナリストチームを駆使し、同じ銘柄を同時に分析している。こうした専門家を分析力だけで上回るのは簡単ではない。
AIは分析力による差をさらに縮めている。現在は一般の投資家でも高度で詳細な株式分析を行える。大規模言語モデル(LLM)は膨大なデータや文章を処理し、企業のファンダメンタルズを分析し、DCFモデルを構築し、想定される結果を推論できる。以前なら優秀なアナリストが数日から数週間を要した作業だ。


