今この瞬間にも、どこかの採用担当者が、実際には存在しなかった面接を見直している。候補者の履歴書はAIが書いた。それを選考したのもAIだ。面接の質問はAIが生成した。候補者の回答は、会話の最中にリアルタイムでAIが提供した。そしてまもなく、「適性評価」の採点も、ご想像の通りAIが行うことになる。2人の人間がその場にいたにもかかわらず、どちらも完全にはその場にいなかったのである。
筆者は採用業界に18年間身を置き、さまざまな業界、20カ国以上で人材の斡旋を行ってきたが、これほど急速に、かつ静かに採用のあり方を変革する動きは見たことがない。私たちは、業界の誰もが気づいていながら、ほとんど誰も口にしようとしない「軍拡競争」の渦中にいる。面接はアルゴリズム同士の闘いへと変貌し、人間は単にそれを伝達するだけの存在に成り下がっているのだ。
信頼の崩壊が相互に起きている理由
Resume Geniusの「2026年求職者インサイトレポート」によると、調査対象となった求職者の78%が、応募プロセスで既にAIを使用しているか、使用を検討すると回答した。さらに、約22%の候補者は、面接の最中にリアルタイムでAIを使用し、会話の進行に合わせて回答を教えてもらっているという。
応募者を批判する前に、テーブルの向こう側についても正直になろう。筆者が見てきた限り、採用担当者のほぼ全員が、採用ワークフローのどこかでAIを使っている。求人票を書くのは機械。履歴書を選考するのも機械。一方向動画面接を実施し、回答を採点するのも機械だ。では、AIで構築されたシステムを突破するために応募者がAIを使うのは不正なのか。それとも、私たちが設計したゲームをただプレイしているだけなのか。
すべてのリーダーが懸念すべきなのは、候補者がこのゲームに合意したわけではないという点だ。ピュー・リサーチ・センターの調査では、66%の人が、AIが採用を決定するような職務には応募すらしたくないと回答している。理由は多岐にわたるが、要するに、求職者はAIが自分を公正に評価してくれると信頼していないのだ。それにもかかわらず、多くの場合、告知もなしにAIによる選考に直面し続けている。そのため、彼らは合理的な行動をとるようになる。すなわち、「機械がキーワードで私を評価するなら、機械を使ってキーワードを生成しよう。一方向のビデオ面接で機械が私の表情を採点するなら、機械を使って話し方をコーチングしてもらおう」というわけだ。
人間らしさよりも「最適化」を優遇する評価システムを構築しておきながら、候補者が最適化を図ると私たちは驚いたふりをする。その結果、奇妙な膠着状態が生まれている。採用担当者は、候補者の完璧な受け答えを完全に信じることができない。候補者もまた、採用プロセスを完全に信じることができない。双方がソフトウェアに向けてパフォーマンスを行っており、採用における本質的な問いである「この人物は業務を遂行できるか、この職場で活躍できるか」は、AIモデル間のやり取りの中でかき消されてしまっている。
「真の評価シグナル」が失われたときに失うもの
従来の面接は、決して完璧な仕組みではなかった。しかし、1つのことについてはそれなりに機能していた。それは、人間が別の人間について判断を形成できるようにしていたことだ。現在、そのシグナルは著しく損なわれている。
候補者がサプライチェーンの混乱について、非の打ちどころのない構成の回答をしたとき、私にはそれが本人の経験なのか、本人のプロンプトなのか、もはやわからない。AI選考ツールが8秒で誰かを不採用にしたとき、弱い応募者を落としたのか、それとも単に履歴書の書式を誤っただけの将来最高のマネージャーを失ったのか、もはやわからない。
筆者が熟知している製造業を例に挙げてみよう。この分野では、現場での不具合が命取りになる。面接では素晴らしい受け答えをしたが、実際の生産ラインでのトラブルシューティングができない品質管理エンジニアを採用してしまった場合、それは単なる「不都合」では済まない。安全上の問題、製品保証の問題、ひいては企業の評判に関わる死活問題となる。
なぜ進むべき道は「人間中心」なのか
筆者はAIに反対しているわけではない。自社でもAIを活用している。適切に使えば、退屈な定型業務を削減し、母集団を広げることができる。しかし、AI対AIの面接に対する解決策は、より優れたAI検知ソフトウェアを導入することではない。それでは軍拡競争を激化させるだけだ。真の解決策は、AIが代行して偽装できない要素を中心に評価を再設計することだと確信している。その具体的な方法を以下に挙げる。
評価を「実際の業務」に近づける
単なる一問一答という名の「お芝居」ではなく、実際の現場を想定したシナリオに基づくライブでの問題解決や、ワークセッションを実施することだ。候補者は1週間かけてAIで対策を練ることはできても、その場のリアルな判断力まで外注することはできない。
AIの使用を開示し、ルールを定める
応募プロセスのどの段階で自動化ツールが使われているかを候補者に正確に伝え、候補者側のAI使用について何が許容されるかを明確に規定することだ。曖昧さこそが、これを水面下の戦争に変えてしまった原因なのだから。
決定的な局面では、再び人間が主導権を握る
スケジューリング、要約、候補者の絞り込みはAIに任せればよい。だが、決定を下させてはならない。「自分の努力を人間が誰も見てくれない」と候補者が信じた瞬間、企業は候補者本人の代わりに機械を送り込む許可を与えたことになる。
今後10年間で優秀な人材を獲得できるのは、最もスマートなスクリーニング・アルゴリズムを備えた企業ではない。候補者が「ありのままの自分」を見せられるほど、真に信頼を寄せられる企業だ。なぜなら、あらゆる採用プロセスの末に、月曜日の朝にオフィスのドアを叩くのは、実在する「生身の人間」だからである。それよりも前の段階で、一度でもその人物に直接会っておくのは決して悪いことではないはずだ。



