異議を唱える人、目の上のたんこぶ、宿敵。彼らはみな、私たちに何かを教えるために存在している。
かつてブランド戦略の仕事に携わっていたころ、私はあらゆるビジネス部門のリーダーや担当者を集め、部門横断的なワークショップを開催していた。マーケティング部門だけでなく、CEO、COO、時にはCFOや最高法務責任者、営業、エンジニアリング、プロダクトデザイン、人事など、顧客や製品・サービスに対して異なる視点を持つ人々だ。
マーケティング部門は、ワークショップに「あの人」を参加させることに難色を示すことがあった。いつも否定的な意見を大声で主張し、マーケティングなど中身のないものだと思い込んでいる優秀な人材。あらゆるアイデアを却下し、周囲を不快にさせる人物だ。
そのような人物の存在を知ると、私はいつも「はい、ぜひその人を部屋に入れてください」と勧めた。全員を居心地悪くさせるためにこそ、あえて異議を唱える人が必要だったのだ。彼らは通常、厳しい質問を投げかけ、反論し、一見するとすべてを困難にしているように見える。しかし実際には、極めて重要な役割を果たしていた。
直属の部下であれ同僚であれ、チームにこうした人物がいると、人は本能的にコントロールしようとしたり、衝突を避けたり、議論で打ち負かそうとしたりする。
だが、勝とうとするのをやめ、より深く理解するために共感を働かせ始めたら何が起きるだろうか。私はそのような光景を何度も目にしてきた。その人は、自分にフィルターをかけないからこそ、ひらめきをもたらす人物だったのだ。彼らは現状に異議を唱える。そして、誰かがようやく耳を傾けてくれたことで、プロジェクトの最も強力な伝道者(エバンジェリスト)へと変わっていった。
ミュージカル『ハミルトン』の一節を借りれば、決定が下されるその部屋にいたからだ。彼らには発言権があった。意思決定のプロセスを透明な形で目にし、自分のアイデアが採用されなかったとしても、存在を認められ、意見を聞いてもらえたと感じたのだ。
これは、対立解消に関する単なる美談ではない。れっきとしたビジネス戦略だ。最も激しく反発する人こそ、誰よりも強い関心を持っていることが多い。そして、そのエネルギーを活かす方法を知っているリーダーは、対立を和らげるだけでなく、イノベーションを引き出すことができる。
多くのリーダーが誤解している理由
多くのリーダーは、意見の不一致を「掘り下げるべき情報」ではなく、「解決すべき問題」として扱ってしまう。批判者を押し切るか、多数決で負かすか、相手が諦めるのを待つのが本能的な反応だ。
そのアプローチは、大きなコストを伴う。
Workplace Peace Instituteの2024年版「職場における対立の現状」レポートによると、組織の72%には対立に対処するための正式な方針がなく、未解決の職場の対立による生産性の低下で、企業は年間推定3590億ドル(約56兆7000億円)の損失を被っている。
そして、職場の対立を引き起こす最大の要因として何が挙げられているだろうか。70%以上が「信頼の欠如」と答えている。
あるForbes寄稿者が率直に指摘しているように、「対立は組織生活において時折起こる混乱ではない。常に底流に流れているものだ。リーダーがそれを放置すれば、財務面や組織文化に重大な悪影響を及ぼしかねない」。
「共感」が転換の鍵となる理由
職場での対立は、筆者が提唱する「両立(Both/And)」のリーダーシップという概念に目を向けるよう促している。これは、共感や思いやりと、説明責任や成果を均等に両立させることだ。共感とは、批判者に同意することや、理不尽な要求に屈することを意味しない。相手の背景や視点を理解することだ。なぜそのような考え方や行動をとるのか。それを探るには、自己防衛ではなく好奇心が必要になる。
共感は信頼を築く。リーダーであるあなたが自分をサポートしてくれている、異議を唱えても不利益を被ることはない、厳しい決定を下す際にも思いやりを持って接してくれるという信頼だ。信頼があるからといって、すべての対立がなくなるわけではないし、なくすべきでもない。適度な建設的対立はイノベーションを刺激するからだ。しかし信頼は、敵対的な対峙ではなく、生産的な会話につながるよう、人々の耳と心を開かせる。
デロイトの2024年の調査では、信頼度の高い企業で働く従業員は、離職する可能性が50%低く、意欲を持つ可能性が180%高く、追加の責任を引き受ける可能性が140%高いことが分かっている。
信頼は、すべてが円満で穏やかな時ではなく、意見が対立している時にこそ築かれる。批判者が「本当に話を聞いてもらえている」と感じ、意思決定のプロセスを目にすれば、反発するのをやめてプロセスに貢献し始める。
最も効果的なリーダーは、「自分が正しいこと」よりも「正しい結果を導き出すこと」の方が重要であることを受け入れている。これは微妙だが重要な違いだ。
批判者を味方に変えるために、共感型リーダーが実践する3つのこと
1. 防衛的になる前に好奇心を持つ
たとえ天敵のような相手であっても、意見を聞いてもらう権利はある。それどころか、素晴らしいアイデアを持っているかもしれない。誰かが反論してきたら、自分の立場を擁護したい衝動を抑えよう。代わりに「私が見落としているかもしれないことで、あなたが見えているものは何ですか?」「どうすればこれがうまくいくと思いますか?」と問いかけるのだ。対立に直面したとき、いつでも使える魔法の言葉は「もっと教えて」であり、これによって相手に話を促すことができる。そして、相手が間違っている理由を説明する自分の番を待つのではなく、相手の言葉に耳を傾ける。純粋に相手の意見を最後まで聞こうとする姿勢が、状況を一変させる。あるForbes寄稿者が指摘するように、「対立が関係を壊すのではない。不信感とエゴが壊すのだ。好奇心と勇気を持って意見の不一致に向き合うとき、私たちはそれまで見えなかった共通の土台を見出すことができる」。
補足として、もしあなたがすべての挑戦に対して防衛的になったり、恐怖を感じたりしているなら、自分自身のエネルギーが満たされているか確認してほしい。セルフケアの不足は神経をすり減らし、心の土台を揺るがせ、他者の視点を受け入れたり、批判に対して冷静かつ好奇心を持って対応したりすることを難しくしがちだ。
2. 意思決定のプロセスを可視化する
懐疑的な人に対してできる最も効果的なことの一つは、意思決定がどのようになされるかを示すことだ。先ほどのブランド戦略ワークショップの例に戻ると、これこそが反対派を伝道者に変える方法である。何が決定されたかだけでなく、なぜそれが必要なのか、何が検討されたのか、そして彼らの意見がどのように反映されたのかを説明する。プロセスに関与していると感じられれば、たとえ結果が望み通りでなかったとしても、当事者意識を持ってその決定を実行に移そうとし、「意見は異なるが、決定には従う(disagree but commit)」ことができるようになる。
巻き込むという単純な行為だけで、そもそも彼らの「闘争か逃走か」の態度を引き起こしていたかもしれない、疎外感(FOMO)や不安、無視されているという感覚が和らぐこともある。
3. 反論の中にある妥当な部分を認める
相手の結論には同意できなくても、その懸念にはほぼ確実に妥当な部分がある。それを言葉にして示そう。「ここで重要な点を指摘してくれましたね」という一言は、どんな反論よりも効果的だ。それは、エゴではなく信念に基づいてリードしていること、そして自分の立場を維持しながら相手の立場を尊重できることを示す。もしかすると、彼らの反論こそが、チームが同調圧力(グループシンク)に陥るのを防ぐために必要なものかもしれない。これこそが、「両立(Both/And)」のリーダーシップを実践するということだ。
批判者は贈り物
最も革新的で強靭な組織には、意見の不一致がないわけではない。異論が歓迎され、耳を傾けられ、より良い意思決定へと昇華される組織なのだ。その場にいる最大の批判者は、正しい結果を導き出すことに誰よりも関心を持っている人物であることが多い。あなたが同じように望んでおり、耳を傾ける意志があると感じたとき、彼らはあなたに反発するのをやめ、あなたのために闘い始める。
次に会議で誰かが強く反発してきたら、こうしてみてほしい。まず感謝を伝える。そして、好奇心を持つ。あなたの最も重要な取り組みに必要な味方は、テーブルのすぐ向かい側に座っているかもしれない。



