リーダーシップ

2026.09.19 21:06

リーダーシップの静かな闘い ― 組織を動かす真の力は「思いやり」だ

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かつて私は、権限を持つことこそが重要だと考えていた。

CEOとしてのキャリアの初期、私は決断力さえあれば組織を前進させられると信じていた。ある意味ではうまくいっていた。しかし、それが知らず知らずのうちに、どれほどの代償を伴っていたかに気づくまでは。部下たちは業務をこなしてはいたが、主体的に関わってはいなかった。そこに存在してはいたが、心はそこになかったのだ。

この経験から、つながりのないエンゲージメントは脆弱であると痛感した。それは、破綻するまでは持ちこたえているように見えるだけなのだ。その気づきによって私のリーダーシップのあり方は変わり、長年にわたり過小評価していた「思いやり(kindness)」を重視するようになった。

すべてのリーダーが直面する「静かな闘い」

すべてのリーダーは、「正しいこと」と「効果的であること」、「自分の意見を聞かせること」と「真に耳を傾けること」、そして「成果を出すこと」と「人材を育てること」の間で葛藤している。私たちの多くは、前者の訓練は受けてきているが、後者の訓練を受けた人はほとんどいない。

ギャラップの報告書「State of the Global Workplace 2026(世界職場環境調査2026)」によると、2025年に主体的に仕事に取り組んでいた世界の従業員はわずか20%にとどまり、それによる生産性の損失は世界経済で10兆ドル(約1580兆円)に上った。

エンゲージメントの低下は、必ずしも従業員のスキル不足によって起こるわけではない。私の経験上、それは信頼が底を突いたときに起こる。そして、信頼の欠如は多くの場合、リーダーシップの問題である。

「思いやり」とは何か、何ではないのか

思いやりとは、耳の痛い真実を避けたり、基準を下げたり、人を不快感から守ったりすることではない。

ブレネー・ブラウンが書いているように、「明確であることは思いやりであり、不明確であることは不親切である」。私はこの言葉を役員室でも工場の現場でも、常に心に留めてきた。真摯な敬意を持って明確に伝えることは、リーダーシップを弱めるどころか、むしろ研ぎ澄ますものだ。

思いやりとは、強いプレッシャーがかかる状況下であっても、一人ひとりの人間と真摯に向き合うことを選択することである。それは説明責任、率直な対話、そして努力を認める姿勢に表れる。すべての役職の背後には、私たちが完全には知り得ないストーリーを持った一人の人間が存在することを、思いやりは思い出させてくれる。

フランシス・X・フレイとアン・モリスは、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の論考(有料記事)の中で、リーダーシップにおける信頼構築の3つの核となる要素として、「本物であること(真実性)」「論理」「共感」を挙げている。著者らによると、信頼関係が崩れるときは通常、これらのいずれかが欠けている。共感とは、リーダーシップの周縁に添えられたソフトスキルではない。組織を根底から支える重要な柱なのだ。

「思いやり」がもたらす確かな成果

自社で起きていることを見るだけで十分だったため、あえて調査結果に頼る必要はなかったが、データはその機会の大きさを裏付けてくれた。

1000人以上の従業員を対象とした2023年のEYの調査によると、リーダーと従業員の間の相互の共感は、業務効率の向上(88%)、仕事の満足度の向上(87%)、イノベーションの活性化(85%)、そして企業の収益強化(83%)につながることがわかっている。

さらにギャラップの調査では、従業員のエンゲージメントのばらつきの70%がマネージャーに起因していることが示されている。チーム全体のカルチャーは、1人のリーダーのあり方次第で、大きく向上することもあれば崩壊することもあるのだ。

ギャラップによると、従業員のエンゲージメントが高まると、離職率の低下や生産性の向上に寄与する。組織は、単にそれ以上を求めることによってこうした成果を得るのではない。従業員の仕事や存在が真に価値あるものであると示すことによって、成果を手にするのだ。

実践における具体的な姿

私自身の組織において、私は立ち止まる回数を増やし、より多くの質問を投げかけ、自分が理解されることを求める前に相手を理解することに、より一層努めるようになった。

その結果、問題が危機に発展する前に表面化するようになった。従業員が率直に意見を言える心理的安全性を感じられたため、コミュニケーションはより直接的になった。また、信頼して仕事を任せることで、主体性(オーナーシップ)も高まった。

サイモン・シネックが述べているように、「リーダーシップとは、指揮を執ることではない。自分が預かる人々を大切にすることである」。

サティア・ナデラは、2014年にマイクロソフトの指揮を執り始めて以来、共感、成長、身をもって示すリーダーシップを中心に同社のカルチャーを再構築した。その後の同社の軌跡が、その成果を雄弁に物語っている。

思いやりは、野心を損なうものではない。私の経験上、それがカルチャーに深く根づいたとき、野心を持続可能なものにしてくれる。

今日から実践できる具体的なステップ

思いやりが重要であると理解することと、プレッシャーの下でそれを実践することは全く別である。リーダーシップに思いやりを組み込むための具体的な方法を以下に紹介する。

・1対1のミーティング(1on1)において: スマートフォンを見るのをやめ、心から耳を傾ける。まずは「今、どんなことを考えている?」と問いかけ、アドバイスをする前に状況の全貌を理解するためのフォローアップの質問をする。相手は、自分が真に理解されていると感じたときに、大切にされていると実感する。仕事以外の悩みについても尋ねてみよう。彼らを単に「枠を埋めるための役割」としてではなく、血の通った一人の人間として見ていることを示すのだ。

・耳の痛いフィードバックを伝えるとき: 批判ではなく、心からの関心を持って接する。その手順は次の通りである。まず、うまくいった点やその背景を認める。次に、改善すべき点を明確にする。それがチームやミッションにとってなぜ重要なのかを説明する。最後に、相手の成長への期待と信頼を伝える。敬意を伴った明確さは思いやりである。その場しのぎの慰めによる曖昧さは、かえって残酷な結果を招きかねない。

・努力を認めるとき: 表面的な称賛にとどまらない。「よくやった」と言う代わりに、自分が何に気づいたか、それがなぜ重要だったか、そしてそれがどのようにより大きな目標に貢献したかを具体的に伝える。自らの仕事が目的に直結していると実感できたとき、従業員は自分の価値を実感する。

・ミスが起きたとき: リーダーの最初の反応が、組織全体のカルチャーを決定づける。「なぜこれが起きたのか?」と問い詰める前に、「そこから何を学んだか?」と尋ねる。これは、失敗が罰ではなく情報であることを示すシグナルとなる。ミスが自身のキャリアの終わりを意味しないとわかっていれば、従業員は問題がまだ修復可能な初期段階のうちに、率直に報告してくれるようになる。

・重大な局面に直面したとき: プレッシャーや不確実性を明確に認め、それを口に出して伝える。そして、困難な課題を個人の失敗ではなく、「共に解決すべき課題」と位置づけることで、心理的安全性を確保する。単に締め切りが守られているかだけでなく、従業員がストレスをどのようにコントロールしているかにも気を配る。

おわりに

思いやりとは、プレッシャーに直面したときに感情的な反応を抑制し、時間が足りないと感じるときに耳を傾け、声を荒らげることなく基準を維持することを求める。

それは、より困難な道である。しかし、潮の満ち引きが力を誇示することなく、長い時間をかけて着実に海岸線を形作るように、思いやりこそがより永続的な力を持つ。だからこそ、リーダーシップとはその場を支配することではなく、信頼関係を築くことなのだ。肩書は扉を開いてくれるが、その扉をあなたと共にくぐり抜けてくれる人を決めるのは、あなた自身の人格にほかならない。

まずはそこから始めよう。

forbes.com 原文

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