スペースXの次の成長段階を左右するのが、巨大宇宙船スターシップの実用化だ。スターリンクへの依存を強める同社だけでなく、打ち上げ枠の不足に直面する宇宙業界にとっても、その成否は大きな意味を持つ。AI分野では、人類存亡のような将来の脅威ではなく、悪用や制御不足など、すでに現実化しているリスクに焦点を当てる。
スターシップ初の軌道飛行、スペースXの成長と宇宙輸送の試金石
スペースXは2026年9月28日からの週、当初の予定より約5年遅れて、スターシップで初の軌道飛行を実施する計画だ。
イーロン・マスクが創業したスペースXは、初の軌道飛行となるフライト14で多くの目標を掲げている。スターシップは初めて地球周回軌道へ入り、多数のシステム試験を実施するほか、次世代スターリンク衛星26基を搭載する。1基あたりの通信容量は現行世代の約10倍になる。
スターリンクは、時価総額が2兆ドル(約316兆円)に迫るスペースXの収益を支える存在になっている。衛星インターネットサービスのスターリンクは2025年、スペースX全体の売上高155億ドル(約2兆4490億円)のうち114億ドル(約1兆8012億円)を稼いだ。モルガン・スタンレーは、スターリンク単独の売上高が2026年末までに185億ドル(約2兆9230億円)へ伸びると予測する。
打ち上げの構成にも、スペースXがスターリンクを優先する姿勢が表れている。2020年には、スペースXによるロケット打ち上げの約半数がスターリンク衛星の配備を目的としていた。年間の打ち上げ回数そのものが増え続けているにもかかわらず、2026年現在はその割合が8割近くに達している。
スターリンク向け打ち上げの比重が高まった結果、宇宙業界では打ち上げ枠が圧迫されている。衛星運用会社の中には、自社の衛星を軌道へ運ぶまで何年も待たされるところも出てきた。
ブルーオリジンなど、スペースX以外にも衛星打ち上げの需要を引き受けられる事業者は存在する。しかし、こうした企業でも打ち上げ計画の遅延が相次ぎ、収益源となる衛星を早く軌道へ送りたい顧客の選択肢は限られている。
理論上は、スターシップが打ち上げ能力の不足を緩和できる。スペースXの主力ロケット、ファルコン9を大幅に上回る搭載能力を持つためだ。マスクは、スターシップの運用が本格化すれば「年間数百回」を打ち上げると繰り返し約束してきた。



