従来型の株式投資家は、米国経済で最も成長性の高い投資機会から取り残されつつあると感じ始めている。
かつては、最先端の企業が成長軌道のかなり早い段階で公開市場にアクセスすることが多かった。しかし現在は、企業が非公開のままでいる期間が長期化しているため、投資家がこうした成長機会に触れるまで待たされることが増えていると、セリティ・パートナーズ(Cerity Partners)のパートナー、クリストファー・バローズは指摘する。
公開市場での選択肢が縮小するなか、投資家は非公開市場に殺到している。米証券取引委員会(SEC)によると、米国のプライベート・ファンドの保有残高は、わずか10年前の10兆ドル(約1560兆円)から増加し、昨年は27兆ドル(約4200兆円)近くに達した。
非公開市場からの資金調達に依存するアーリーステージ企業は、AI(人工知能)、機械学習、バイオテクノロジー、医薬品といった高成長分野の最前線にいるとバローズは述べる。「イノベーションのスーパーサイクルに乗りたいのであれば、非公開市場こそがその舞台だ」
経済が向かう先
世界銀行によると、米国の上場企業数は2000年以降、約44%減少している。また、企業が非公開のまま留まる期間も長期化しており、モーニングスターによれば、非公開企業がIPO(新規公開株式)を行う際の年齢の中央値は、2014年の約7年から2025年には11年に上昇した。その結果、かつてはIPO後に生じていた価値創造の多くが、いまや非公開市場で起きているとバローズは説明する。こうした機会は現在、プライベートエクイティ、プライベートクレジット、ベンチャーキャピタル、不動産、インフラ投資など多岐にわたる。
だが、非公開市場が提供するのはハイリスクなアーリーステージ投資だけではない。事業への資金供給における民間資本の役割が拡大するにつれ、非公開市場の投資機会は大きく広がったとバローズは説明する。成長機会に加え、非公開市場は幅広いオルタナティブ(代替)投資へのアクセスも提供する。伝統的なポートフォリオを保有する富裕層投資家にとって、コモディティ、コレクターズアイテム、不動産といったオルタナティブ資産は、潜在的な成長とともに分散投資効果をもたらし得るとバローズは指摘する。
金融イノベーションと規制緩和を追い風に、新たなオルタナティブ資産が次々と誕生している。たとえば、主要なプロスポーツリーグは、投資家が所有権の一部を取得することを可能にしつつあると、セリティ・パートナーズのパートナーであるサルバトーレ・ルッソは言う。かつては大富豪の領域だったが、「スポーツ・フランチャイズは、コンテンツ需要やリーグ拡大、新たな収益モデルからの成長機会を取り込むことで、市場との相関性が低いリターンと分散投資のメリットを投資家にもたらす可能性がある」と彼は指摘する。
買い手側の注意
非公開市場は投資機会の新たな世界を切り開く一方で、新たなリスクももたらす。公開株式や大半の社債の発行体は、独立監査を経た定期的な財務報告書の提出を義務付けられている。しかし、非公開市場の投資のほとんどは、こうした投資家保護策を実施する義務がない。
「非公開市場への投資は千差万別であり、投資家に複雑で難解な投資戦略へのアクセスを提供するが、多くの場合、規制上の監視や報告義務はほとんど、あるいは全くない」とルッソは言う。それとは対照的に、公開市場への投資は「はるかに高い透明性と、より頻繁な投資家への報告を提供する」。
非公開市場への投資にアクセスする方法が増えていることも、投資家が評価すべき新たな要素となっている。上場株式や社債は主に規制された取引所や実績のある証券会社を通じて売買されるが、現在では、IPO前のセカンダリー株式、クラウドファンディングによる不動産、プライベートクレジットなどの投資へのアクセスを提供するプラットフォームが増えている。
デューデリジェンスが重要な理由
非公開市場への投資には、公開市場のような報告義務がないため、より綿密な精査が必要になるとバローズは言う。彼のチームは、経営陣の投資戦略や経歴の評価、法的文書の確認、取引・会計・評価に対する監視体制の査定など、厳格なデューデリジェンス(投資適格性評価)を実施している。
非公開市場の投資機会によって、投資条件も大きく異なる場合がある。セリティ・パートナーズは抱える顧客基盤が大きいため、投資マネージャーとの間で、手数料の引き下げ、最低投資額の引き下げ、有利な価格設定など、良好な条件を交渉できることが多いとバローズは話す。
今後の展望
過去1年間で、プライベートクレジット市場の一部は圧力を受けている。一部の借り手が破産に追い込まれたり、不正行為を認めたりしたほか、大手の貸し手が融資評価額を引き下げ、株価下落に見舞われた。多くの投資家は影響を受けなかったものの、バローズとルッソは、このことが、規制が比較的緩いこの市場セグメントにおける機会を慎重に評価することの重要性を強調していると考えている。
非公開市場への投資は、万人向けではないとルッソは言う。多くの場合、上場株式や社債よりも複雑で流動性が低い。しかし、適切な投資期間、リスク許容度、そして財務目標を持つ投資家にとって、非公開市場は十分に分散されたポートフォリオにおいて重要な役割を果たすことができる。



