慢性的なインフレと供給量から見える金の未来
こうした状況が助長されれば、米国と、おそらく欧州と、さらには世界におけるインフレが待ち受けている。それは長期にわたって高水準で推移するだろう。これは国内回帰(オン・ショアリング)と、AIインフラの構築を誘導する。その事態は危惧するに値しないと考える人もいるかもしれない。しかし、国内回帰のコストは、アジアで製品を製造するよりも高くなり、供給サイドのインフレ増大を招くことになる。
その兆候は関税にも表れている。輸入関税は、地元企業が対抗できるように価格を引き上げる。そのインフレ圧力を推し量るには、欧米の製品と中国製品の価格差を見ればわかる。中国車は西側の同等品の半額である。長期にわたる慢性的なインフレもまた、その影響を助長するだろう。
金価格の上昇を抑制している唯一の要因、かつ想像以上に大きな問題となっているのが、供給量(生産量)である。古い冗談に「高値の解決策は高値だ(High prices are the cure for high prices)」というものがある。これは金の生産量が3200トンから3400トンへと増加し、おそらくさらに増えることを意味する。3400トンという数字は、さほど大きく感じられないかもしれないが、現在の1オンス4390ドル(約69万円)という価格では、5000億ドル(約78兆9000億円)の規模になる。
つまり、世界は毎年5000億ドル(約78兆9000億円)の新規生産を吸収しなければならなくなる。これにはかなりの額の資金が必要となる。しかし周知の通り、資金は容易に創出される。とはいえ、ベッセント財務長官が、「10年物および20年物の国債をコントロールするには、60億ドル(約9470億円)の法定通貨で十分」だと考えている中で、この毎週100億ドル(約1兆5800億円)の供給を過小評価するべきではない。
最後に1つ加えておきたい。銀の生産量は2万5000トンであり、価格は1オンス当たり65ドル(約1万円)。金は3400トンで4300ドル(約67万円)であり、その生産比率は約7対1、価格比率では約66対1となる。これにより、金は銀に対して10倍も過大評価されていることになる。プラチナにいたっては、年間200トンの生産量で、価格は金の半分である。
このことは、金が貴金属として不釣り合いなほどの需要にさらされており、その需要が政府によるものであることを示している。西側諸国と中国が対立を解消し、再び繁栄を築く道に戻るまでは、金への買いが入るだろう。したがって、数日後に習主席がワシントンを訪問する際、その後の数週間の金価格の動きを見れば、その結果がどうであったかがわかるだろう。少なくとも今年中に金価格が6000ドル(約94万円)を超えて急騰しないことを願うばかりだ。


