高金利が阻むPEの買収・売却・資金調達
対照的に打撃を受けやすいのが、借入金への依存度が高い金融分野、とりわけプライベートエクイティ(PE)だ。PE会社は10年以上にわたり、非常に低い金利で資金を借りられる環境から恩恵を受けてきた。多額の借入金を使って企業を買収し、経営を改善する。その後、債務を有利な条件で借り換え、最後は買収時より高い価格で売却する。借入コストが低く、買い手も多い時期には、この事業モデルが多くのPE会社で非常にうまく機能した。
売却停滞が招く、資金返還と新規ファンド調達の悪循環
金利が上がると、PEの買収から売却まで、ほぼすべての段階が難しくなる。借入コストは上昇し、買い手が買収資金として調達できる額は減る。企業を高い価格で評価する根拠も弱くなる。借入金の多い投資先企業は、事業拡大ではなく利払いに、より多くの現金を回さなければならない。
ウォール・ストリート・ジャーナルは9月17日、投資家が「ゾンビファンド」に取り残された過去最高3490億ドル(約55兆1420億円)の資金回収を待っていると報じた。ゾンビファンドとは、運用会社が売却に苦戦する投資案件を抱えた古いPEファンドを指す。FRBの利上げによって、買い手の資金調達コストは上がる。売り手も値下げを受け入れにくいため、売却できない投資案件の滞留はさらに解消しにくくなる。
売却停滞はPE業界に悪循環を生む可能性がある。運用会社が保有資産を売却できなければ、年金基金、保険会社、大学の基金などの投資家へ資金を返還できない。資金が戻らなければ、投資家が新しいPEファンドへ出せる資金も減る。その結果、PE会社の新規資金調達が細り、最終的には収益を支える柱の1つである手数料収入も減り得る。
アポロ・グローバル・マネジメントは、企業融資やPEなどを手掛ける世界的な資産運用会社だ。同社の資産運用部門で共同社長を務めるスコット・クラインマンは9月14日のアナリスト向け会議で、業界に残る運用会社の数が減る可能性があると述べた。低金利が長く続いた時代に急拡大した会社は、特に縮小を迫られ得るという。
高金利で問われるPE投資の収益源
だからといって、PEそのものが消えるわけではない。有力な運用会社は引き続き投資機会を見つけるだろう。高金利によって経営難に陥った企業を投資機会と捉え、利益を得る運用会社さえあるかもしれない。
高金利が続けば、PE会社が何によって投資収益を生み出してきたかも見えやすくなる。投資先の事業を実際に改善して得た収益なのか。それとも、低金利の借り入れや財務上の手法、市場評価の上昇に大きく頼った収益なのか。高金利環境では、この違いがさらに明確になる可能性がある。


